飼い主が断捨離をしているということを耳にした人から、ときに聞かれることがある。
「何か、お宝はあった?」
飼い主の答えは、いつも同じだ。
「あるわけないでしょ。
みんなガラクタよ❕」
確かに。
ボクんちが古いからといって、価値ある骨董品が出てくることはない。
前に書いたが、ボクんちは
名家でも旧家でもない。
窮家ではあるが。
【ただ古いだけ】の、田舎の農家。
こんなところに、お宝なんぞが埋もれているはずもない。
飼い主は、【ただ昔の】古道具や、【ただ片付けられなかった】迷惑な遺物の処分に追われているんだ。
「万一お宝があったとしたら、婆様が挙動不審になったり、私以外の人に内密で預けたりしただろうから、すぐわかる。
そういう行為は、バレバレなんだ。」
そうですね。
その線は、ないと見ていいでしょう。
それに、もし飼い主がお宝らしきものを発見となれば、飼い主は誰にも告げずに鑑定してもらい、お金になれば黙って懐に入れるはず。
飼い主がちっとも潤っていないところを見ると、やはりボクんちに残っているものは、ガラクタというジャンルの物ばかりです。
さて今日の飼い主は、手をつけたくなかった場所を片付ける決心がついた。
仏壇の引き出しなのだが、そこは飼い主に言わせると開かずの間みたいなもので、できれば見たくないところなのだ。
おそらく何十年間も触らずにきた、というか【ただ放置された】引き出し。
「古くてカビだらけでホコリまみれでダニがいそうだと、容易に想像がつく。」
飼い主は、息を止めて引き出しを開けた。
手前には、本当にどうでもいい物ばかり。
カーテンを吊る金具。
紐と、錆びた鋏。
日章旗のポールのてっぺんに付いてるような、金色の丸い金具。
つまり、とりあえずここに入れとけ、みたいな【ただ掃き溜め】なんだ。
仏壇の一部なのに、なんと罰当たりな。
いよいよ引き出しの奥に手を伸ばして、飼い主は叫ぶ。
「まるで古文書だ❗」
その他、何かの保証書やトリセツも。
まさに、【それきり忘れる】都合のいい引き出しだったわけだ。
飼い主のため息で、ホコリが舞い立つ。
飼い主は、次に引き出しの上の部分、引き違い戸になっているところを開ける。
ここは、たまに飼い主が【前例に習って】利用していた。
「ここの仏壇の戸棚は、私が嫁にきたときから、古新聞置き場だった。
新聞をどこへ片付けるのか聞いたら、仏さんの下だよ、って婆様に言われて。
戸棚に新聞がたまったら、束ねて処分していたんだ。
私は、このシステムには、しばらく違和感があったが、慣れというのは恐ろしいものだ。
読んだ新聞が、部屋に散らからず人目に触れずためておかれる。
しかしねえ。
実家の仏壇にも引き出しや戸棚はあるが、もうちょっとマシな物、大事な物が入っていたわ。」
飼い主は、エプロンのホコリを払い、掃除機をかけ、手を洗いに行った。
引き出しの【古文書】だけ、元に戻してある。
「汚すぎて、もう触って縛る気にならない。
夫が片付けるがよい。」
そんなこんな。
以上の有り様を見れば、ボクんちにお宝がないのは一目瞭然であります。