「一戸建ての維持管理は、本当に大変。」
飼い主は、今日は夫を伴って実家に行った。
飼い主は自分の車で、夫は軽トラで。
軽トラには、セメントなどの材料と工具が積まれていた。
昨年秋、浄化槽の法定検査を受けた際、たまたま近くにある排水溝の中が破損しているのが見つかった。
生活雑排水が流れてくるところで、検査員さんによると、経年劣化による自然破損だと思われるとのこと。
このままでは、排水が家の下に染みたりするから、直した方がいい、セメントをちょっと流して簡単な修繕で大丈夫と言われた。
それ以降冬の間は、飼い主は実家でトイレ以外の水はほとんど流さなかった。
仏壇の水を替えるくらいで、それはコップ1杯だ。
拭き掃除はウエットワイパーにし、生活排水が出ないように気を付けていた。
最近は、水を使って雑巾をゆすいだりしたくなり、梅雨入り直前になりいよいよ排水溝を直すことに。
壊れた状態の排水溝。
夫は、うちから持ってきた石を下に敷き詰め、その上にセメントを入れて補修するらしい。
紫陽花は、母が亡くなった4年前の6月、葬儀の花を片付けてから、飼い主が仏壇によく供えていた。
庭の紫陽花をハサミで切るたび、飼い主は
「また紫陽花だよ。」
と言ったものだ。
花を買わなくても、実家の庭には手入れもしない薔薇が1輪咲いたり、名も知らぬ(覚えぬ)花があったり、何かしら母の霊前に飾るものがあった。
「父と母がここで生活し、その排水を流していたんだなあ。」
飼い主は、当たり前のことを思い出しながら、夫の作業を見守る。
夫には、こうした建物と周辺の維持管理に必要な知識と技術があるから、飼い主は本当に助かっている。
電気工事(有資格)や植栽、大工仕事山仕事など。
「職人さんを頼んでお金を払わなくてもよい。」
1時間ほどして、セメントを塗るまでが終わった。
几帳面な夫は、柔らかいセメントが上から流れたりすると、溝のコンクリートとの間に僅かな隙間ができるかもしれない、そうすると勢いよく排水が流れた場合どうのこうの‥‥と言い、何度も慎重にパテ塗りを繰り返す。
「まあ、気に入るまでしっかり塗ってくれればいいわ。」
そして5時間後。
先ほど飼い主は、今度は一人で実家に。
セメントを流してから、乾燥させるために排水溝の蓋を外したまま帰ったのだが、飼い主が、乾燥具合を確かめながら、蓋をしに来たのだ。
まだしっとり見えるところもあるが、まあまあだろう。
「破損したのが塞がっていれば上出来。これでひとつ、懸念事項が片付いた。
次は、自分のメンテナンスだわ。
がん検診を受けないと。
人間の体は、みんな一戸建てだ。
それぞれ修繕が必要なんだよね
~。」
飼い主。
お疲れ様ですが。
ボクは、修繕は要らないですが、あのう‥‥
わかってますよね?
遅れてます。
3時の‥‥。
いやもう、夕御飯でも。