飼い主が、手首が痛いと言っている。
またか。
今回は、何をしてるんです?
「ゴミの分別。
スプレー式のヘアミストがあって、古くてもう使わないから捨てるかと。
スプレー缶は、以前は穴をあけてからゴミに出す決まりだったが、ゴミ処理場での事故が多く、最近は使いきった状態で出せばよくなった。
処理場で最終的に安全に処分するんだわ。
スプレー缶を空にしてからから出すというのも、実は大変なんだ。
使いきったものばかりじゃない。
中身がけっこう残っているけどいらないスプレー缶もある。
断捨離してると、いろんなスプレー缶が出てくるし。
仕方なく、使いきるために、庭とかテラスとか、外でそのスプレー缶のボタンを押す。
ひたすら押す。
何分も押す。
休み休み押す。
空になったかなと思える頃が、力がいるんだ。
かなり疲れる。
で、ただ押し続けるだけでも手が痛くなるのに。
今日のヘアミストは、ミストだから1回ずつプッシュ式。
シュー--------------
じゃなくて、シュッ シュッってね。
シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ
シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ
シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ
シュッ シュッ シュッ シュッ シュッ
‥‥て、何となく10回ずつ数えながら押してた。
小さめの缶の半分くらいの残量だったから、すぐになくなるだろうと思ったんだ。
しかし❕
いくら押しても終わらない。
指が疲れて次に手首が痛くなって。
ため息ついて小休止。
また気を取り直して、シュッ シュッ。
休む。
気合いを入れて、シュッ シュッ。
だがもはやシュッ シュッ シュッとはいかない。
左手で右手首を支えながら押す。
また片手で押す、右手で。
左手に持ち変えて押す。
噴霧口の向きを確かめないから、自分の方に向けてシュッとなる。
わあっ、て服の肩で顔を拭くと、肩に貼ってある湿布のにおい。
そうだ、肩が痛かったのに❗
変にねじってもっと痛くなる。
よくミニサイズの殺虫剤のスプレー缶には、60プッシュ分とか書いてあるが、なぜかヘアケア製品にはほとんど見ない。
こんな小さなミスト缶で、何百プッシュ分もあるんだな。」
飼い主、ヘアスプレーなんかは、連続噴射です。または1プッシュではなく、何回もプッシュするでしょう。
「そうだな。
もし、400プッシュ分などと書いてあっても、
今日で50プッシュしたから残り350だとか数えないな。
だいたい、手に持った重さで、まだこのくらいあるなってわかるんだ、経験上ね。
もし、この作業を始める前に、あと300プッシュだとわかっていたなら、こんなのいちいちプッシュしてないで、叩き壊した方がいいわ。」
飼い主は、かれこれ10分近く、缶を押し続けている。
シュッ
シュッ
シュッ
シュッ
シュッ
シュッ
シュッ💢
シュシュ シュ
だんだんリズムが崩れ、飼い主の顔も崩れる。
「やっと、少なくなった感じがする。」
と、缶をテラスの床に置いて、両手の平で上から押す。
極小動物に心臓マッサージをしてるようだ。
シュ‥ シュ‥ シュ‥
シ
シ
スゥ~‥
‥
おお、ついに終わりましたか❕
「ハー、どのくらい押したか。
200回で数えなくなったから、わからない。
しかし私の手首には、いきなり過酷な運動を課したんだ。
痛くなるわけだ。
というか、年を取ってから、とにかく色々なことが回数をこなせなくなった。
そしてすぐに痛みが出るようになった。
さらに、痛めると半年は治らないようになった。」
飼い主は、愚痴や文句だけは小休止も入れず言い続けることができる。
「手首にはなかなか湿布が貼れない。
顔や手を洗うと濡れてしまうではないか。
特に困るのは、台所仕事。
洗い物は、ゴム手袋をすればいいが、包丁を使う調理のときは、使い捨て手袋は適さない。
だから切ったものに湿布がさわらないか、湿布が湿らないかと気を使う。
気を使うと、肝心の手元が狂い、新たな怪我をする可能性が高い。
いや、必ず何かしくじる。
つまり、最初から湿布をしないのが一番だ。
それに臭いも不愉快だ。
貼れるのは、夜寝ている間だけだが、毎日体のどこかしらに貼っていると、布団の中に湿布の臭いがこもる。
まさにお年寄りの布団て感じだ。」
そうですね。
ボクの嗅覚は、かなり誇れるものですが、ボクが飼い主を識別するのは、やはり湿布のにおいが決め手です。
それよりも飼い主。
飼い主は、手首を痛めるのは珍しくないですね。
缶の蓋があかない、台布巾が絞れない、ペンで字が書けない、あ~手首が痛いって、よく言ってます。
原因も、ただ手をついて起き上がろうとしただけとか、大した理由はありません。
ボクなんか、手首で体を支えて立ってますよ。
すごいでしょう。
しかも、それで怪我をすることはないです。
ボクは、湿布を貼れませんもん。