今日は、百人一首の日だ。






小学生の頃、お正月というと百人一首の【かるた取り】で遊んだ記憶がある飼い主。



「歌の意味は全くわからなくても、ひらがなだけで読める札は、けっこう暗記していた。

私は、読み手をやるのが好きだった。

下の句は2回読むから、2回目は読み札を見ないで言えて、私は読み手取り手が同時にできる。

覚えるわけだ。



そのお陰で、後に役立つことはあった。

高校の古典の授業で出てきたときには、今度は文法や解釈も増えたが、楽々学ぶことができた。



一番役立ったのは、40歳を過ぎて中学校に勤めてから。

どこの中学校でも、毎年3学期のはじめに、新年の行事として百人一首大会があった。

会場は寒い体育館であったが、生徒が学年を超えてグループで札を取り合う【ゲーム】に、私も一緒になって熱く楽しんだ。

30年たっても、覚えているものだなあと思ったよ。

どうしても私の手がのびることが多く、先生たくさんとってずるい、などと言われるから、遠慮しいしい。



高校に勤務していたとき、どこかの教室で百人一首のCDが流れているのを聞いたな。

お正月に関係なく。

CDのスピードは一定で繰り返されるから、今の上の句につながるのはなんだっけなんて、間合いに考えたりしたが。

もうその頃には、すぐに出てこない。



学校を辞めてから、地域の中学校にお手伝いで2年ばかり通い、そこでもお正月に百人一首大会があって、久しぶりに参加したら。

もう、まるっきりダメ。

生徒に負けるわ。

気がつけば60代だもの。



上の句を読み出した瞬間に、パッと反応するスピードは、もはや若い記憶力には勝てない。

おまけに、色々な向きに散らばる札の文字が、老眼では読みにくい。ぼけー






今や、すっかり百人一首とは縁のない飼い主。

終活で断捨離する中、百人一首セットを処分しようかと考えていた。



今日が、百人一首の日だということで、飼い主は最後に一番好きだった札を出してみる。




西行法師。



なげけとて つきやはものを おもはする

かこちがほなる わがなみだかな



【意味】

嘆け、と言って、月が私を物思いにふけらせようとするのだろうか。いや、そうではない。(恋の悩みだというのに)月のせいだとばかりに流れる私の涙なのだ。



「子どもの頃、この歌が好きだったのは、【かこちがお】という、なんか面白く思えた言葉が気に入ったから。

単純だね。



年をとって考え直してみると、



人生には、【かこつ】ことがどこかで必ずあるのだなあ


ということが、身に染みる。」





飼い主、今せっかく大河ドラマで紫式部や和歌がとり上げられているのですから、もうしばらく手元に置いて、読み直したらどうです?

百人一首も、年をとってからの方が、味わい深いのでは?




「それも、悪くないが。





私には、やりたいことができた。





一人百首。





私もたまに拙い短歌を詠むが、自分の歌を、気に入ったものを百首、残せたらいいなあ。」





飼い主は、そう言って、去年の今ごろ作った歌を一つ出す。



「現代語の、5.7.5.7.7になっただけの歌だ。

短歌というよりは、五行歌みたいだな。

でも、まだ今の私には、これよりも納得できる歌がないから。」





たった今

です触ってと

医師が言う

ああ温かい

ですと答えた



飼い主の父の最期に駆けつけた時のものだ。