飼い主は、夢の国へ出掛けた。



いや、ディズニーランドやUSJではない。



飼い主にとって、テーマパークに相当する、ワクワクする場所。



しかも入場無料。



もったい付けないで、教えよう。







家具店だ。ぶー





最近飼い主は、ベッドを新しくしようと考えている。

フレームは、婚礼家具として買ったフランスベッドで、もう40年使っている。

色褪せて傷が目立つ。

マットレスは普通に一度取り替えた。

二度目にマットレスを新調しようとしたとき、重くてたいそうなマットレスはやめ、腰のサポートが考えられたものをニトリで見つけた。

厚みは10cmあまりしかないが、値段が手頃で、後悔することなく替えられたのがよかった。

そのマットレスも、だいぶへたってきた。



先週末、実は飼い主は、小山町‥‥静岡県の東の端だ

‥‥にある、シモンズベッドの工場を訪れていた。

とある寝装用品店が主催する、工場バーゲン。

ベッドのアウトレット市というところだ。



広い構内には、何十台かベッドが並べられ、あれこれ見ているうちにどんどん売約済みになっていく。

値段的に飼い主が気に入ったものもあったが、なにせアウトレット品だから、大満足というものでも理想の商品というものでもない。

何周も回り、悩んで、結局買わなかった。



息子に言われた。

「電動ベッドは、なかった?

見ればいいのに。

この先のこと考えたら、それもアリじゃん。」



そのときは、飼い主はこう思った。

「普通のベッドがいい。

電動ベッドが必要になるなんて頃は、あと10年20年?

それなら、介護状態だ。

家でなくて病院か施設にいるわ。」



しかし1週間ほどたってみると。

「そういえば、あの会場に電動ベッドも2.3台あったかも。

そんなの考えもしなかった。

まあ、言われてみれば一理ある。

先々でなくても、今から役立つ。

たまに枕元の小さいテレビをつけるとき、クッションを重ねてマットを高くするもんね。

電動で上半身が起き上がるなら、楽な姿勢で観られるわ。

ぎっくり腰になった場合にも、起き上がるのにちょっといいかも。」ぼけー



そう考え直した飼い主は、あらためて探してみる気になったわけだ。

他にも、夫がリビングルームに置いてかっこ良くまとめたいなあという、テレビ台PC台つきの壁面収納なども、実際の使い勝手や値段を探りたい。







というわけで。

飼い主は、まず手軽なところから。
三島のニトリへ。
ニトリは、店内に入るとやたらまばゆい。
白を基調とする商品が多いから、売場は明るく清潔感がある。
基本的に店員さんは声をかけない限り来ないから、飼い主は自由に見回り、勝手に資料をもらう。


お目当てのベッドやリビング収納は、まあまあ理想に近いものがあった。
値段は、住宅機器メーカーのカタログで見たものより安い。
「悪くない。
が、まだ飛びつかないようにしよう。
家具屋さんて、めったに行かない店だし、行けば素敵な家具にあふれていて、こんな家具で暮らせたらなあって、夢が膨らんで。
しばしそれに浸ろう。


で、テーマパークのように楽しいところなんだが。
なんか決め手、というか心踊るアトラクションみたいな感じがね‥‥ないとね~。」


飼い主。
心踊るって、単に値引きの赤い札のことでは?
ニトリは、個人商店ではありませんから、そこはあまり。
運が良ければ、出会うでしょうけど。


「そうね~。
ニトリは、CM通りお値段以上だと思うけど、夢の国かどうかといえば、次点てところ。
庶民的で便利なんだけどね。」






飼い主はニトリを出て、今日はもう一軒。 
幹線道路反対側にある家具店に。
歩けば1分なのに、車では反対車線に出直すには無駄な移動が必要で、10分近くかかる。


ここは、昔ながらだが中は時代に合わせて少しお洒落になり、なかなか大きな家具屋さんだ。
3階のベッド売場に行くと、かなりの台数が揃っている。
シモンズをはじめ、名前を聞いたことがある各社のベッドが色々にレイアウトされ、目移りしてしまう。
一般人にも手が届く価格帯からちょっと高級なもの。
電動ベッドもよりどりみどり。
マットレスもさまざま。
「こんなベッドに横たわれるなら。
まさに夢の国になりそうだ。」


一人でベッドに腰かけていた飼い主に、店員さんが近づいてきた。
昔ながらに案内されて、電動ベッドに続きリビング収納の説明を聞く。
ここにある商品は、組み合わせ次第でかなりいい感じ。
ぜーんぶ組み合わせても、そんなに驚くような金額にはならないようだが、でも、そこそこだ。
「だいたい、ホームセンターにあるカラーボックスや簡易家具でさえ、けっこう高いんだから。
このシステム収納なら夫が納得するかも。」


店員さんに、いくつかパンフレットやコピーをもらい、飼い主は近々新調予定の家具に夢を膨らませる。
どれにしようかと悩む楽しみは、本当に久しぶりだ。
昔ながらのやり取りや挨拶をして、飼い主は浮き立つ気持ちで店を出た。





「新しい製品を買おうとするのに、昔ながらの対応が心地よいのも、面白いものだ。
今の時代の昔ながらの家具屋さんは、知識はニトリ以上。
高い買い物だから、お客として大事に接してもらえ、説明してもらうと、まあ、人間単純だから気分いいわけよ。
ニトリだってそこが全くないわけじゃない。
でも、【お値段以上】というのは、商品だけじゃなくて、人もそうであると嬉しいよね、どんなお店でも。」




飼い主。
楽しくて何よりでした。
何年ぶりかで訪れた家具店は、大人の夢がつまっていましたね。




「うむ。
我が家の財布に、お金がつまっていたらなあ。」ぼけーぼけーぼけー




ま、そうスね。
夢の国とは、夢と同時に現実も思い知らされるところです。