飼い主は、これは儲けものだ、と言って外に出てきた。

手には車のキーがある。

やった❗出かけるぞ。

ボクにも儲けものだ。

「待て待て。

先に洗濯物を。」



今朝、ボクが朝イチのトイレをしたときは大粒の雨が降り始め、ボクは急いでチッコしかできなかった。

その後ずっと空模様は同じで灰色一色、時おりバラバラと音をたてて雨が降ることが続いていた。

ボクの向かいの車庫の屋根は金属製なので、雨粒のあとが大きく水玉模様になっては消え、を繰り返すのを眺めていた。



しかし10時過ぎには。

天気予報はさっぱりしなかったのに、急に晴れてきた。

しばらく雨は降りそうもない、とボクは期待した。



飼い主が、部屋干ししてあった洗濯物をテラスに移動する間もボクは待ち遠しい。

早く車に乗りたい。







公園に着くと、開ききってボリュームを増した桜が、重たそうに風を受けている。




ボクはまずプーを済ませてから、クン活にいそしみ。







飼い主が、辛抱強くボクの道草に付き合いながら、「儲けものは、英語で‥‥」などとスマホで調べたりしている。


「えーと、思わぬちょっとした幸運とでもいうべきかな。
a piece of luck か、そんな感じだな。
lucky break でもいいんだ。」





ざわざわするくらいの威勢で、枝が揺れている。
花びらのシャワーの中を歩けること自体、本当に儲けものだなあ。



「儲けものというと、お買い得という場合にも使う。
それは、a good bargain. 
あと、労せずに得たものなら、a godsend ‥‥これは大げさだわ。
もう一つ、windfall ね。
ああ、だけど‥‥。」


ア、飼い主。
分かります分かります。
windfall は、たなぼたという意味と、もう一つ文字通り風で落ちた果物という意味がありますよね。
この、道いっぱいの花びらは、何か、この季節を過ごした人の果実と思える、と言いたいわけでしょう?




「そう。
何かは、人それぞれよ。
ただの自然の落とし物じゃなくてさ。」



舞い散った
花びらただの
落とし物
とは思えずに
振り向く四月






今日は顔を出さないだろうと思っていた富士山にも、会えた。
ほぼ毎日会えるのに、こういう日会うとやっぱり、よかった-儲けものです、としか言えないなあ。