飼い主は、目黒雅叙園に行った。



雅叙園は何度も訪れている。

雅な雰囲気が大好きだ。







今回は、とある中高年向け雑誌の企画で、今年の大河ドラマ【光る君へ】を意識した催しに申し込んだ。

【源氏物語の装束で体感する平安の雅】。



平安装束にスポットを当てた講演【装束でひもとく源氏物語】、和食のランチ、百段階段の雛飾り見学という内容だ。



講演は1時間ほどで、資料を見ながらなので聞きやすい。




紫式部については、どうしてもドラマで演じる吉高由里子さんの【まひろ】のイメージがあったが、「そうなのか」と思うようなことも聞けて、お話はなかなかよかった。



講演の最後には、実際にウチキというものを着るデモンストレーションがあり、モデルさんは、この為にこのヘアスタイル?と思うような長い髪。

着用後、しずしずと裸足で(宮中では足袋は履かないそうだ)会場内を歩いてみせ、平安の昔に想いを馳せることができた。


※左側は、着付ける人。




この催しには、ちょっとしたお楽しみがあった。飼い主は、講演終了後の【装束着装体験】に申し込んであったのだ。

「私のような60代のグレイヘアで、平安装束を着るなんて、いかがなものかと思ったが、なに、読者はみんな私と同じオバサンだろうから。ぼけー



飼い主の予測は当たり、衣装を着る体験をしているのは、綾小路きみまろのトークショーにお集まり?みたいな中高年の皆様。失礼。



他の人は、静かに着せてもらっているのに、飼い主は、着付けをしてくれた人に何やら質問していたようだ。

わかったことは‥‥十二単(正しくは、この呼び名はない)を着て良いのは、はっきり年齢制限というものはないが、飼い主が羽織っていた着物のうち、内側に使われた濃い紫のものは、若い人しか着られないそうだ。ゲラゲラ






装束を身につけるといっても、すでに何枚か重ねてあるので、ちょっと重いコートを羽織る感じだった。

「こんなに引きずる衣装で、よく生活できたものだ。

さぞかし裾が汚れることだろう。

しかし、まとえば自然と、がさつに動いてはいけない気持ちになる。

あと、膝が悪い歩き方が目立たないかもしれない。ぼけー



出来上がった飼い主は、堂々たる?【○○の局】か、【若君の教育係】といった風情だ。





↑この写真を家族に送ったところ。

「インバウンドの外国人が、ジャパン体験に来ているのかと思った」という息子のコメントが、最も正しい評価かも。

飼い主は洋顔で、バリバリ和装は最も似合わないからなあ。

 



さて、最後は百段階段見学。

数日前にテレビ取材があってから、急激に見学者が増えて、今日は激混みだそうだ。

しかし飼い主らは、旅行社のツアーさながら、旗の後についてスムーズに入場できた。





部屋に溢れんばかりの人形は、圧巻。











外国人観光客に混じり、様々なお雛様を見て歩く。

艶やか。

雅やか。

可愛らしい。

綺麗なものは、いくらでも目から吸収される。


























現実に戻り、飼い主は雅叙園をあとにする。
ホテルバスに5分ほど揺られて目黒駅に向かう間。
「ここからは、現代の楽しみだ。
せっかく都会に来たからデパートに寄ろう。
高島屋がいい。
一番近いのは、新宿。
ここでは、いけばな展をやっているが‥‥巨大ターミナル駅は、やたら歩くし。
あとは日本橋か‥‥地下鉄は嫌だな。
帰りに東京駅まで歩くし、駅構内も好きじゃない。
東京は、人が多くて雑多すぎる。
やっぱり慣れている横浜まで行こう。
東京から離れよう、地震が心配だわ。ぼけー
品川から東海道線。
東海道は、駅が少ないから、特急と同じだ。」
などとあれこれ計算した飼い主。


「私には、都は合わない。」


そうでしょうね、大都会の駅をゆく飼い主は、人の波に乗ってるつもりで、実は平安装束でよたよた歩くジャマな人、みたいですからね。






帰宅して。
夫が聞いた。
「どうだった、東京。」


飼い主は、答えた。
「重荷一重(じゅうにひとえ)に戻った。