何年ぶりかな。

少なくとも、コロナ禍には来なかった。

ボクが1歳の頃以来なら、4年ぶりというところだ。



秋晴れの今日、ボクは懐かしい【犬の学校】に連れて行かれた。

かつてボクは、ここに1か月くらい、預けられたことがある。

犬の学校といっても、ボクは何か勉強したり資格をとったり芸を身に付けに行ったわけではない。

いわゆる【しつけ教室】、トレーニングの場だ。

早い話、【問題行動】のある犬が預けられる‥‥

ペットホテル利用以外なら、残念な犬のたまり場でもある。えーん

ボクにとっては、務所だった。

だからボクは、その過去を、できれば忘れていたい。



いや、トレーナーさんが悪いわけではない。

色々な訓練を受けながら、ボクはおおむね平穏に暮らした。

犬社会に馴染むため、そして人間と問題なく生活していけるよう、犬の社会化を目指した生活をさせてもらった。

ただ、飼い主と離れて見知らぬ犬たちと生活し、散歩や放牧?以外娑婆に出られなかったことが、やはり子犬心に辛かったんだ。



その頃のボクは、飼い主に言わせると、

「やんちゃで、社会化がなっておらず、ちょっと手を焼いた。」



とは言うものの、トレーナーさんにとっては、ボクは柴犬の中では、【楽勝】の部類だそうだ。

柴は、特に雄は扱いにくい犬種第1位。

柴に関して百戦錬磨のトレーナーさんからすると、ボクはただの

ビビり。笑い泣き

ビビりが故の問題行動で、どうしようもなく凶暴だということはなかった。


ボクは、その学校を出るとき、

80点

だと評価されたんだ。



しかしそれからの間、ボクは、これも飼い主に言わせると、

「すこぶる良い子でもないな。

まあまあというところだ。」



(昨日の公園)


さて、今日はなぜ犬の学校に。



来月、入院の予定がある飼い主は、その間ボクをここのペットホテルに預けることにしたんだ。

行きつけの動物病院にもホテルはあるが、飼い主は、嫌な思い出の多い病院の雰囲気のないところにしようと考えてくれた。

今日は、前にお世話になったスクールに、最近のボクの様子を見てもらいがてら、ワンレッスン申し込んだというわけだ。



ボクは、犬の学校を覚えていた。

トレーナーさんに会ったら、条件反射でいうことを聞いてしまったから。



飼い主は、久しぶりの挨拶のあと、トレーナーさんにボクについて報告している。



2回の入院がトラウマになり、病院に行くと敏感に人の手の動きを追って、ときにガウガウ❕と威嚇すること。

飼い主は、二度と噛まれないために、ハウスに入れるときはおやつを1粒投げ入れてからにしていること。

散歩のとき、トラックなどの大きな車を警戒したり、前方に人がいると歩かなくなること。

あちこちのドッグランに行っても、走るどころか他の犬との関わりを避けること。



等々、ボクを誉めているとは思えないことを伝えている。

トレーナーさんは、一つ一つに短い解説をいれ、

最終的に、

「そうか~。

ワガママなんだな。

ビビりは生まれつきだしね~。」

と、カチンとくることを言われたが、飼い主には、飼い主自身が気を遣いすぎないよう、アドバイスしていた。

「ドッグランでは走るものと思っちゃダメ。

他の犬と遊ぶとか、それは飼い主さんの希望にすぎない。

柴は、洋犬とは全く違うから。

柴は、ドッグランに入って一緒に歩くだけで目標達成。

むやみに変なスイッチが入って、危ないことになるより、ああしたいこうしたいと欲張らずに。」

と、ボクを擁護してくれる。

さすが、犬のプロだ。



「柴には期待しない、ってことですね。」

やっと飼い主がそう理解してくれて、ボクはスクールに来た甲斐があったと思った。



その後飼い主とトレーナーさんに伴われ、ボクは散歩に出た。

このあたりは、ボクんちのまわりと違い、交通量が多い。

ボクは、車が通るたび、首を引っ込めて歩かなくなってしまう。

だって、嫌だもん。

ボクは必死だ。

「首輪がすっぽぬける。」

とトレーナーさんが、進路変更。

やがて小さな公園に入り、安全だとわかれば、元気が出る。



ボクのリードは、トレーナーさんが持ったり、飼い主に替わったり。

歩いていると時々強く引かれる。

その度にリードを通して、ボクに少し注意や指令が出たのがわかる。



ボクは、早く帰りたい一心で、Uターンしてからはトレーナーさんの横について上手に歩く。

トレーナーさんは、ボクのビビり癖に合わせて、車道側でない方を歩かせてくれた。

しかし体は、覚えているものだなあ。

トレーナーさんとなら、リードはたるんでいるんだ。

飼い主だと、引っ張る歩き方になるのだけれど。



スクールに戻り。

トレーナーさんは、まとめのお話をする。

それによると、ボクは何の心配もなく、預かれるそうだ。

ハー、最初からわかってましたよ、ボクは昔より優等生では?

なにしろここは、強者ぞろいだ。

「一生預かりか?というくらい凄まじいの」

「点数だと、20点30点くらいの」

「もう、噛むわ噛むわ大変なの」

ばかりが預けられているそうだから、そのような仲間と比べれば、ねえ。

しかも今度は、訓練ではなく、単なるお泊まり。

オーッホッホ。



トレーナーさんは、飼い主の体調を考えて、入院の前後も日数を足してボクを預けることを勧めた。

うーん、そしたら1週間くらいにならないか?



反対の意思表示で吠えたら、トレーナーさんに言われた。



「今日の伊太郎は、65点だよ。

わかるかな?」



「悪くないけど、うんと良くもない、ってことですね。」

飼い主が、ボクの代りに答えてしまった。