飼い主は、先日送付された新しい保険のパンフレットを開いて、今後のことを検討中だ。



これまでは、生協の共済で、女性コースというものに加入していた。

特約含み月々4100円という手頃な掛け金で、医療関係には手厚い保障が、さらに広範囲にわたって保障が付き、飼い主は「理想的な保険」とありがたく思っていた。




年に49200円の掛け金支払いになるが、毎年冬になる頃に、「クリモドシキン」としてお金が戻る。
去年は約1万円あった。
だから実質、毎月3200円あまりだったということだ。
本当に良い保険だった。


‥‥だった、という過去形は。
飼い主はここで、この共済から追い出されることになったのだ。
何も悪いことはしていない。
65歳になっただけだ。


そう、この共済に加入できるのは、65歳まで。
まもなく満期日を迎える。


「5年くらい前にこの共済に入った時から、覚悟していたんだ。
65過ぎたら、同じくらいの保険はどこにもないことがわかっていたから。」


新しく満期後のコースとして提案されているものは。


こちらに移行すれば、85歳まで継続できる。
それが一番妥当なようだ。
保障の内容と掛け金を見比べて、飼い主は表の真ん中あたりのコースでいいか、と考えた。
これまでの保障内容からは格段に下がるが、致し方ない。


飼い主は、今後の展望を整理した。
・手術サポート特約は、いらない。支給が一律2万円では、付けてもしょうがない。
・もし病気で100万円の医療費がかかっても、3割負担だから払うのは30万円。そのくらいは何とかなる。
・終身医療保障だけにしてもよいが、掛け金は割高。
・死亡保障30万上乗せするために、月600円は、無駄。私の葬式代くらい、夫や息子が何とかするだろう。なんなら葬式なしでも良い。ぼけー
・死亡保障をもっと付けた、いわゆる生命保険型になると、掛け金がものすごくハネ上がる。無駄。
「明日の保障のために今日の楽しみが保証されない」ことになる。それはバカバカしい。
・先進医療は、色々細かい基準があるし白内障は除外されたが、月100円だから付けておこう。
月100円ということは、そこまでの医療費を必要とする人ばかりではない、ということか。
先進医療保険金請求が多ければ、いずれ保険料も高くなるだろうが、その前に高額医療費の申請制度もあるから、あまり心配しないでおこう。


とまあ、ここまでは真面目に考えていた飼い主だが。


「つまるところ。
悲しいかな、65歳になったら、もう保険をかける必要も、その価値もなくなってきたということだ。
ヒトとして減価償却をしてきて、その体、いや命の財産価値が減ってしまった。えーん

仕方ないことだ。
超高齢化社会だし、今まで入れたような色々カバーしてくれる保険に終身入れたら、共済制度が破綻するもの。
私は、保険の引き際に来たんだ。」



飼い主。
そんなことはない❗とは申せませんが、もっと良い側面を見たらどうです。
子どもたちが学校を終えるまでは、飼い主らは、働いて高額な保険料を払ってきました。
生命保険、学資保険、子どもの終身医療保険。
万一のことがあっても、子どもたちが困らないように。


「そう。
高い御守りだったなあ。
学資保険以外は、みんな掛け捨てだよ。」


だから、もう今は。
元気でやってこられたご褒美なんですよ、これからの保障にお金をかける必要のない年齢に、無事に到達できたということ。
生命保険金や医療保険金の請求を、ほとんどしなかったのは、大きな幸運です。


「そう考えるしかないなあ。」


婆様をごらんなさい。
あそこまで元気なら、保険もへったくれもないでしょう。
しかも、病院にかかっても1割負担です。 
婆様は、飼い主の姿を見ると脚の痛みが増強し歩行困難になる旋転性の奇病。
あの方は、年金額が恵まれている世代ですから、病院の支払いなど、文字通り痛くも痒くもありません。


「全くだ。
婆様は、元気な故の数々の言動が不問に付され。
現果焼却の保険にでも入っていたのだろうか。

 

まあ、よい。
今後のことは、85歳までぼそぼそとした保障が付く共済で、十分だわ。
85の時、自分が共済終了のお知らせを受けとるのか、あるいはそれが叶わない事態にあれば、誰か他に生きていて、何か考えてくれるのか。
そこまで心配しなくてもね。


しかし、この8月の年金から、介護保険料が天引きされるようになって、甚だ不愉快だ。
年金の手取りは、震えるほど少ない。
だから自分の共済保険料は、やっぱり月々3000円台におさえたい。
伊太郎の動物保険、やめたくないしなあ。」


うう、飼い主。
申し訳なく存じます。




‥‥言下消却じゃないですよね。