先日、飼い主はスマホの機種変更をした。



これまでのスマホは、今年の5月でようやく2年になるというところだった。

先月、安いものだがスマホカバーを変えたばかりでもある。

飼い主がスマホなるものにしてから、最長で5年【持った】し、平均3年以上は使っていたから、こんなに早く取り替えるのは、甚だ不本意であった。



しかし飼い主は、実はもう1年くらい前から、スマホに不満を感じていた。



「とにかく、バッテリーの減りが速い!!

若い人のように(ここで基準になるのは息子)、会社から帰れば、トイレや風呂場にまでスマホを携帯し、音楽三昧YouTube、ゲームに長電話‥‥なんてこともない。

なのに、寝る前に充電しても朝になれば、70%ひどいと50%にまで減っている。



あまりにももちが悪い。

出かける予定があればまた充電するし、帰ればまた充電。

だって気がつくと30%なんてことに。

結局しょっちゅう充電してしまうことになり、それはリチウム電池の劣化を早めるとわかっていても、充電しないことには使えないから、充電を繰り返す悪循環。



ネットで調べて、バッテリーの寿命を短くしないために、常に起動しているアプリに気を付けたり、バックグラウンドで動いてるものをチェックしたり、不要なら削除したり、オバサンユーザーに出来ることはしてきたつもりなんだが。



さらに、カメラのシャッターが切れない!

撮りたい時に撮れないのは、カメラではなく、

ただのカラだ。



そういう【ヘロヘロ状態】のスマホでは、いつ果てるともわからず、肝心の時に役に立たなくては困るから。」



分割払いの分が、まだ3か月残っているのは承知で、飼い主は【不愉快の解決】のために、ケータイショップに出向いたのだ。





(今朝のボク。
昨日具合が悪く、飼い主に伊太れり尽くせり世話をしてもらって、今日はバッテリー回復だ。
雪が残る道を散歩できた。)





予約日時にショップを訪れると、なんだかひと頃よりも展示機種が少ないように感じた。
昔のように、機種代金や各種サービスなどの、色とりどりのポップを並べておらず、すっきりしているがちょっとさみしい印象だ。


担当してくれるスタッフに、飼い主は椅子に案内される前に、簡潔に現に抱えている不満や、変える機種のランクなどを伝える。
そのへんが長くなると、後の手続きまでの時間がもったいない。


患者の病名診断をする医者のように、スタッフが処方、いや提案してくれた機種は、好みの色がなかったが結局すぐに決め、支払いプランの作成も早かった。


もう何度も機種変更をしていて、飼い主は思うのだ。
「どんな機種どんな色どんなスペックでも、使い始めれば同じ。
通常は、何も思わない。
それどころか、どこのメーカーだっけ、なんてこともある。
私は細かく使いこなすことはないし。
不具合になれば、また変えるのみ。
車じゃないから、普通に使えて手元にあれば良い。」


飼い主は、
「今度はもっと性能がいいのにしろよ。そんなショボいスマホにするなよ。」
と息子に言われたことを無視して、どんどん手続きを進める。


飼い主が買ったのは、ミドルランクのものだ。
中の上というところ。
【この上のは、いきなり10万円】なんて言われ、そこまでスマホ命でない飼い主は、
「不思議な価格帯だ。」
と思いながら、料金の確認をする。


「まあ、お金がかかる時はかかる。」
と、ある程度諦めていた飼い主だが、思いの外安く済むことを喜んだ。


古い方はどうなさいますか、と聞かれて、即座に要らないから捨てて帰る、と答えた飼い主に、では下取りとして○○ポイントが付きます、というオマケつき。
飼い主は、「後で自分で処分に困るものは、どんどん断捨離」が、染み付いているのだ。


説明を聞いている中で、飼い主の買った機種は、
車の残クレと同じ
扱いができることを知った。
残クレ、つまり残価クレジット。
例えば、5万円のスマホを、最初の2年間は、月々1500円の分割払いで機種代として払うとする。
支払額36000円、残り14000円。
2年たったら、そのスマホを下取りに出して機種変更すれば、残額は【なし】になる。


「それって、形を変えた、2年縛りですよね。」
斬り込み隊長の飼い主は聞いた。


まあ、それはそれで。
消費者として、損はしないと思います。
とりあえず、2年間大事にスマホを使って返せば、また負担が少なく楽に新しいスマホを持てるわけですから。
世の中、頻繁に高い新車に乗れる人ばかりいないし、高いスマホに変え続けられる人ばかりじゃないでしょう。
そんな中で生まれたシステムなんですかね。
騙されているとは思いません。


飼い主は納得して、説明用タブレットの画面に、
太い指で、細い線のヘロヘロのサインをした。


さあ、いよいよ、飼い主にとっては、こちらの方がメインの、データ移行だ。
面倒なので、最初から、ラインは手数料を払って移行してもらうことにしていた。
スタッフは、まず手際良く電話帳や写真などを移し、続いてラインも楽々。
旧スマホのホーム画面を見ながら、常に使っていたアプリの再インストールもやってくれる。
アイコンの並べ替え、まとめ、整理。
スタッフの指が、軽やかに画面をすべる。
飼い主は、ひたすら感心していた。
これなら、家に帰ってからやることは少ない。
アプリに、パスワードなどを入れれば良い。
息子にエラそうに手伝ってもらう必要もない。
飼い主は息子に、ひとっ飛びにドヤ顔ができるのだ。


飼い主は、感激して言った。
「ちょっと前は、こんなにお手伝いしてもらえませんでしたよね。
データ移行は、お客様ご自身でとか言われて、店の片隅に移動して、言われたままに四苦八苦して自分で操作して。
本当に辛かった。
ここでこれだけやってもらえれば、すぐに今まで通りに使えてストレスフリーで、本当にありがたいですよ。」


スタッフが言うには、ソフトバンクさんでそういうサービスをしているのだから、こちらでも、ということになったらしい。
ケータイショップも、2年来なければ、展示も料金プランもサービスも変わるものだ、飼い主はあらためてそう思った。



そうですよ。
自分で、サクサクデータ移行できる人ばかりじゃないでしょうし。
飼い主の太い指では、吹けば飛ぶようなSIMカードも引き抜けません。
新品のスマホを使う前に、壊してしまいます。


「車のディーラーで、すぐ乗れる状態にして車を引き渡すのと同じ。
車は、ハンドルだけお客様ご自身でつけてくださいなんて言わん。ぼけー


個人情報保護の観点で、客に自分でやれというのは理解できるけど、客は、そちらがプロなんだから任せたいと思うんだ。
色々やってくれるから、また買ってお願いしようと思うんだ。」


まあ、【至れり尽くせり】やってもらった、というラインは、人それぞれかもしれない。
だが飼い主のようなおばさんユーザーにとっては、【自分がやって欲しいサービス】を受けられることが、スマホのスペックよりも満足度を上げることなのかもしれない。





大いに満足してショップを出た飼い主は、思った。
「さっきのスタッフは、とても良かった。
だが、2年後にまた、あの人はいるだろうか。
スマホのバッテリーも、ショップの人も、長持ちするといいのだけれど。」