これは、数日前飼い主が富士市内の某スーパーで手に入れたものだ。



買った、ではなく手に入れたと言いたくなるほど、今や貴重品らしい。



「2.3ヶ月前には、あちこちのスーパーで、これが売られていた。
1本150円、6本パックで900円なんて飲み物、高ッ!
私はバラ売りのを何回か買っただけだ。
高いからには、きっと何か際立った効能があるからね、ものは試し。


ストレス緩和、睡眠の質向上、腸内環境改善とうたわれている。
こういうものは、しばらく続けてみないと効果のほどは分からない。
だが続ける前に、どのスーパーでも【欠品のおわび】の貼り紙が出るようになったわ。」



飼い主は、普通のヤクルトを毎日1本飲んでいる。
「ヤクルトセンだがマンだが知らないが、これを1本飲んだところで、劇的にストレスが減るとか、熟睡できるわけでもなかろう。
もし一発解決なら、これは劇薬だし、日本中ストレスフリーの健康人だらけだ。
まあ、小さいヤクルトだってお腹にいいわけだ、とりあえずなくても困らない。」
と、あっさり諦めて、スーパーの乳酸菌飲料コーナーの一部が、常にカラなのを横目で見て通り過ぎる。






最近は、新聞や雑誌、テレビ、ネットなどで、【腸内環境】が話題になっている。
なんでも、頭とお腹はつながっていて…当たり前じゃないか、離れていたらバラバラ殺人だ…お腹の環境、いわゆる腸内フローラが自律神経と密接に関わっているということだ。
そして、お腹の健康といっても、かつてのように下痢や便秘をや改善するだけでなく、お腹を調えることで眠りの質を高めるような、嬉しい働きがあることが分かってきて、ますます腸内環境が注目されているらしい。



腸は第2の脳ともいわれる。
腸は心の鏡、心は腸の鏡という言葉をどこかで目にしたし、脳腸相関なんて言葉もできている。






飼い主は言う。
「世の中の人が、【脳腸相関】に関心を持つのはわかる。
だが、市場には色々な腸内環境改善商品が溢れているのに、なぜヤクルト1000だけが欠品するのか。
生産が追いつかないのは、この商品にみんなが殺到するからだ。


日本人て、面白いなあ。
今まで、ありとあらゆるものが一時的ブームを巻き起こしたが、何十年も続いているものは一つもないではないか。
ワーッと群がって、自分たちのせいで品切れを起こして、そして波のように引いていく。
コロナなんか、しぶとく第7波とかいってるのに。」



飼い主、それは比較対照するものではありません。
それと、飼い主だって、現にそのヤクルト1000が店頭にあったのに飛びついて、買ったじゃありませんか。


「これは、自分のために買ったのではない。
何でも群がる派の息子が探し探して熱望していたからだ。
息子は、今の状況下で手に入れた1本を、大事に冷蔵庫にしまったが、その様子は冷蔵庫の棚が神棚に見えたくらいだ。


買った理由はともかく、私はその時驚いたことがあった。
そのスーパーには、ヤクルト1000が4本もあった。
私は喜んで4本ともカゴに入れようとしたのだが。
【一家族1本でお願いします】という貼り紙を見て、急いで棚に戻して、1本だけ買ったんだ。
こういう律儀さもまた、日本人らしくないか?」







そうですねえ。
あ、そういえば、飼い主はこの間、ネッククーラーなるものを買いましたよね。
あれも今、ほとんど売っていないようです。
飼い主がしているのを見たご近所さんが、家電量販店に行ったら、3週間待ちと言われたそうですよ。



「そうか、なら私は、運良く買えたクチなんだ。
あの商品は、私はミーハー買いしたわけじゃない。
欲しいな、あったら買おう、くらいの気持ちだった。
そんなに人気の商品とも思わなかったし。
まさか、あの商品はいくらなんでも、一家族1個、なんて制限は出ないだろう。」



どうでしょうか。
今の世の中、いつ何に人々が殺到するかわかりません。
情報社会ですから。
群集心理で、一時的欠品を生み出してしまいます。



いずれそのうち、ヤクルト1000も再びたくさん出回るようになるでしょう。
そしたら、買いますか?飼い主。



「今のマスクみたいに、値崩れしたらね。」ぼけー



大変だなあ、人間は。
ヤクルト1000を求めて走り回ることも、ストレスだろうね。
色々なものに頼らないと、ストレスが減らず眠れずお腹が不調。
そして健康にいいものがあると知れば、我先に買い求める。
まあ、それで健康になったという話はそうたくさん聞きませんが、ある程度健康だから、買いに走れるわけですよね。
ご苦労さまです。



ボクは、ドッグフードと水だけで、夏を乗り切るんだよ。
あ、ドッグフードが欠品しませんように。