祝・756!
756、とは何か。
たいていの人は、かの野球界の名選手、王貞治さんが打ち立てた大記録(これは引退までの途中で)、ホームランの数を思い浮かべるだろう。
それは、約45年前、当時のメジャー最多本塁打通算755本の、ハンク・アーロンの記録に挑んだ王選手が、ついに世界新記録を樹立した時、日本中が湧いた数字だ。
王選手は、その後もホームランを打ち続け、世界最多868本であることは間違いないが、その756という数は、一つの重大な意味を持つ数字として、多くの人が記憶するところだろう。
実はボクは、この数を目標にしてきた。
このブログ記事は、これで756本になったんだ。
飼い主が、余計なことを言う。
「王貞治さんは、あれだけのホームランを生み出すのに、何十万、いや何百万回もバットを振り、その中にはヒットとよばれるものもあまた含まれているんだ。
756は、打撃の最高ランクのホームランだけに絞った、その時点での数字。
とてつもない努力が実になったもの。
巨大な植物からほんの僅かしか取れない、世にも希少な価値のある実そのものだ。
それだけ、生み出すには大変だということ。
伊太郎は、全部で756本にすぎない。」
分かっていますとも。
でも、ボクだって、けっこう大変なんです。
皆さんのおかげで、ブログ開設2年を過ぎましたが、まだまだ初心者、何千本も書いている人たちの足元にも及びません。
色々思いながら、やってはきました。
別に、毎日書かなくたって有罪になるわけじゃないし、お金になるわけじゃないし、でも、始めてしまったらなかなかやめられなくなり、かと言ってこの生活圏ではそうそうネタがあるわけでなし。
それでも、自分を鼓舞する数字目標を。
とりあえず、何かいい数字を目標にして、そこまでは到達するように頑張ってみようと思ったんです。
それは、悪いことじゃないでしょう。
「いや、悪い。
王選手のことじゃない。
私は、その756という数字に、嫌な思い出があるんだ。」
また始まったよ、思い出シリーズ…。
「つい最近、【家庭科の成績】というブログを書いただろう。
それで思い出したんだ。」
ハー。
飼い主が思い出すことは、ロクなことじゃありません。
「高校生活最悪の数字だったのよ。
当時、英語の教師に最悪な課題を出すヤツがいてさ。
生徒は毎日、授業では英語の辞書を手元に置かなければならなかった。
持ち運ぶのは大変なんだ。
あんな分厚くて重たいものを。
あの頃は、電子辞書もなかったから、家に持ち帰った時は大変。
うっかり忘れようものなら、あり得ない課題が待っていたんだ。
全く!
今思い出しても忌々しい。」
忘れたなら、他のクラスの人に借りるとかすればいいだけでは?
「間に合わなかったのよ。
家にもう一冊置いておく、なんて知恵もなかった。
馬鹿だったなあ。
それで、その課題なんだが。
なんと、1から1000まで、英語で書いてくる、っていうもの。
考えられない!
バカバカしい限りだわ。
one
two
three
から始まって、
one hundred and fifty-seven
・
・
・
six hundred and eigty-four
・
・
・
ひたすら、ひたすら書くわけ。
レポート用紙に何枚になったかもわからない。
あんな無意味なこと、パワハラモラハラ虐待だわ。
写経の方がまだマシだ。
で、途中で本当にバカバカしくなって、やめてしまった。
次の日、1000まで終わっていない未完成のまま、課題を出した。」
それが、756でストップしたということなんですね。
「そう。
seven hundred and fifty-six。
それが、最後の一行。
あれは、ある意味、高校時代の金字塔だわ。
それで、その教師は。
未完成のままなのは何も咎めなかった。
ただ、レポートの第1枚目に、赤ペンで
Do your best.
って書いてあるだけ。
はああ!?
腹が立ったし、力が抜けた。
レポート用紙の束は、パラパラ〜と見ただけで終わり。
だいたい、忘れ物に対してDo your best.とは何よ?
言葉が違うだろう。
先生が、課題をしっかり確認点検しろよ、アンタがDo your best!じゃないか、って思った。」
はあ、それはご苦労なことでした。
それにしても、756とは。
「あのときは、先生への恨みが、一行ごとに増して、それが756段になったんだわ。
ハハハ。」
その、恐ろしい課題は、辞書を忘れたみんながみんな、やってきたのですか?
「さあね。
真面目にやった子もいるだろうし、数字を間引いてやった子もいたんじゃないかな。
そんなに頻繁に見なかった。
課題をやりたくないから、辞書を絶対忘れないようにしてたと思うよ。
今なら、私は辞書をセメダインで机に貼り付けておくわ。」
「その後私は縁あって英語科教員になり、あの756という数字を肝に命じ、生徒イジメの課題は出すまい、生徒が提出したものにいい加減なめくら判は押すまい、良くても悪くても必ずコメントなりマンガなりシールなりを付けて、最初から最後まで誠意を持って見ようと気をつけてきたんだ。」
そうですか。
今さらですけど、飼い主の高校時代は、あまり恵まれていなかったんですね。
でも、辞書を忘れただけで成績が下がらなくてよかったじゃありませんか。
「浴衣は、アクシデントで完璧になり成績が2。
英語は課題未完成で2?なんてなったら、いくらあの頃の私でも、暴動を起こしたる。」
飼い主は続ける。
「英語教員になってからは、辞書が増えること増えること。
学校に常備する用。
家では各部屋に英和、和英が1つずつ。
参考書も同じ。
スマホで調べられるようになるまでは、ふと思いだした時に調べられるよう、車の中にもハンディタイプの【コンサイス英和・和英辞典】をおいてあった。
学校をやめ、コロナの世の中になり、断捨離に励んで、大量に処分したね。
うず高く積んで縛って。
なんか、スカッとしたな。
あの756の課題から半世紀近く経つのに、いまだに思うんだ。
【ああいうのがまかり通る時代だった】と。
今の学生は、辞書なんか引くのは少数派だろう。
辞書には何の思い入れもないし、なくても困らないしなあ。」