雨の日、飼い主は一人で過ごすのが好きだ。
昨日の雨は、日中は予報で脅かされたほどでなく、むしろ穏やかで静かな雨だった。
飼い主は、色々と作業をしながら、しょっちゅう外を見て、小降りの時にボクのトイレを強引に済ませた。
部屋にこもり、小さな音量でピアノ曲のCDを聞いていた飼い主は、途中でそれを止めた。
「こういう雨なら、音楽よりも雨音の方が神経が休まる。」
そして飼い主は、音があるかないかのしとしと雨に耳を傾けながら、書類の整理に時間をかけていた。
ふだん、届いた郵便物には目を通すが、保険関係は、とりあえず保険専用の【大事ファイル】にはさんでそのままになっているから、たまには点検しなければならない。
まず、自動車の任意保険。
飼い主のは先日掛け変えたばかりだが、たまたま保険会社のミスで、車の車番が間違った証券が届き、直ちに申し出て、新しい証券になった。
最近は、自動車保険も「紙の削減」とやらで、ウェブ証券にするのが多くなっている。
しかし飼い主は、「こういうものは、あくまでも紙の証券」とこだわり、送付してもらっている。
飼い主は、その封筒を見て言う。
「変更手続き完了のお知らせ、って、こっちが勝手に変更したんじゃないんだ。
そっちのミスなのに、不愉快だ。」
イチイチ文句を言うのも、
任意補拳だ。
次は、生命保険関係。
1件ずつファイルのポケットから全て出して、古い案内や重複するしおり、契約内容確認などは、まとめて処分する。
現在生きている保険について、証券を読み直しておく。
ときに忘れたり、誤解している点があるからだ。
そうしているうち、飼い主は「ハハハ」と笑いだした。
「夫に掛けていた保険は、総合生命保険だけだと思っていたが。
そうだった、そうだった!
こんなところにはさんだままで。
満期がきて見直したとき、生命保険の内容を下げて、その分、介護保険に入ったんだ。
もし介護状態になったら、年に○万円出る、っていうの。
あの人は、既に記憶力に難ありだから、認知症になる確率が高そうだし。」
そう言う飼い主こそ、この保険自体を忘れていたのですから、かなり危うくないですか?
「私も、夫の保険会社とは別のところで、介護保険に入ったんだ。
夫は、介護になったら毎年お金が出るタイプだけど、私は認定一発受け取り型、とでも言おうか。
1回だけまとめて支払われるんだ。」
飼い主は、保険まで一刀両断型!
まあ、飼い主が万一病気や介護状態になっても、保険がどうなっているとか、わかる人がいないのが、ボクんちの問題です。
飼い主だけがまとめたり把握しているだけでは、片手落ち…どころか、当の本人が年々アテにならなくなっていますからねえ。
あとは、子どもたちが小中学生の頃にかけた、一生掛け金が変わらない、安い医療保険。
もう40年も前に発売された、飼い主のがん保険。
建物共済。
ファイルのポケットに、保険名と概要を書いた付箋を貼り替える。
「保険料の負担がなあ。
かなり見直して削ったつもりでいたが。
月々は少額のものでも、チリも積もれば。
思えば、今までどのくらい保険料を払い込んできたことか。
子どもたちが大きくなるまでは、夫の保障を手厚くしていたから、保険料も高かった。
定期特約、なんてのがあって、年々死亡保障額は減っていくんだ。
なんか腑に落ちなかったが。
それにしても、
高いお守り代だった。
明日の保障のために、今日の糧がなくなる、と思ったくらいだ。
それでも、大した保険金をもらわずにここまで大過なく生きてこられたことには、感謝しないとな。」