とし物語 vol56 ~美容師編5~
入社して半年も経たないうちに、2店舗目をオープンすることになった。
このことは僕が入社する前から決まってたらしく、僕と海くんはよくオーナーに
連れられて、一緒に物件を見に行ったりしてた。
中にはいい物件もあったのだが、直前に違う会社に決まってしまったりして
なかなか決まらなかった。
そんな中、ついに!
山科のとある物件に決まった。
山科駅からもわりと近く、横にコンビニがあり、駐車場もあり
大通りに面してる。
オーナーの条件にぴったりだった。
建物も大きかった。
以前はケーキ屋さんだったらしく、作るところと販売するところとに
フロアが分かれてたのだが、ぶち壊して1つのフロアにして
大きく使おう。ということになった。
坪数でいうと、たしか60坪
ぐらいだったと思う。
物件も決まり、新店オープンに向けて
スタッフ一丸となって準備した。
毎日誰かが新しいお店に掃除し行った。
お店の周りの掃除や、店内の壁や床を全部拭いたり
とにかく掃除しまくった。
チラシも配りまくった。
お店のオープンが8月だったので、ちょうど暑い時期だった。
美容師なのに、体が真っ黒に日焼けしてた。
シャンプー台もサイドシャンプーからバックシャンプーに変わる。
僕がメインのシャンプーマンなので、よく練習しに行った。
とにかく、ホントにオープン前からすごい準備した。
みんなすごいやる気に満ちてたと思う。
僕は新店舗のメンバーだった。
その他には、オーナーとあと3人の先輩。
以上だ。
僕の仲良しの人や、年が近い人は本店に残ることになった。
不安でいっぱいだった。
明らか僕だけ下っ端。
仲のいい人もいない。
やってけるのか?
でも新店舗オープンはうれしかった。
不安と期待と、いろんな気持ちがごちゃごちゃだったが
とにかく新店舗がオープンした。
とし物語 vol55 ~美容師編4~
その日はとても忙しい日だった。
店内はお客様とスタッフとで、ごっちゃごちゃになっていた。
スタッフは皆必死で働いていた。
一方僕はまだやれることが少ないので、手が空いてた。
海くんがシャンプーに呼ばれた。
僕はそれを近くで見てた。
海くんは僕が見てるからか、海くんもまだ慣れてないからなのか?
かなり緊張してる様子だった。
首にタオルをして、シャンプークロスを付けて。
昔のサイドシャンプーのやつは、椅子を上にあげてから倒す。
じゃないと、お客様の首が届かない。
つまりシャンプーボール(洗う所)が上についてるから、椅子をあげないと
届かないのだ。
なのに海くんは、椅子をあげてない状態でいきなり、
「じゃ、椅子倒しますねー。」
って。
あれ?
椅子あげてないのにな??
と思ったが、そのまま海くんは椅子を倒しだした。
お客さんも明らかに、あれ?って思ってる様子で
きょろきょろと首を振って後ろを確認してた。
まだ海くんは間違いに気付いてない。
そのまま椅子を倒しちゃったので、お客さんもどうしていいのか
わからなかったんだろうが、なんと
椅子の上にブリッジをしだした。

だいたいこんな感じ。
僕は笑いを必死にこらえた。
伝わらないと思うが、ホントにおもしろかった。
なんと海くんもそれを見て笑ってた。
それを見て僕はさらに笑けた。
しかし、お店はてんやわんやしておりピリピリとした雰囲気だったので
下っ端の僕らが笑うことはできない。
そんな雰囲気ではなかったので。
僕は思わず、スタッフルームへと行って笑った。
その他にも笑ける事件はたくさんあったが、ホントにシャンプーマン時代は
2人で競うようにシャンプーをしまくった。
かわいい子が来たら、シャンプーどちらが入るかでもめて怒られ
怖そうな方が来られたら、どちらもゆずりあい怒られた。
(すいません)
徐々に男性の方の仕上げなどもやらせてもらえるようになった。
もちろん掃除やその他の仕事もあるので、それをきっちりとやってからじゃないと
させてもらえない。
ある時、掃除をしていると先輩に
「掃除してるけど汚いねん。隅っことかちゃんと掃除できてないし。」
と注意を受けた。
僕はその時は一生懸命掃除もしてたと思ってたので、ちょっとムッとしたが
確かによく見てみると少し汚れてたり、髪の毛があったりした。
でもホントに髪の毛一本とか、めっちゃよくみるとほこりが・・・
みたいなレベルだ。
ほとんどわからない。
意識してみてもわからないぐらいだった。
しかし掃除に関してはホントに厳しかった。
ある時その先輩にちょっと聞いてみた。
「なんで、こんなに掃除を丁寧にするんですか?」
って。
すると
「私たち美容師はお客様の髪の毛をきれいにする仕事やんか。
掃除はお店をきれいにする。だからお店をきれいにできない人は絶対に
お客様の髪の毛も綺麗にできひんで。お店に髪の毛が一本落ちてる。
それを見逃してたらきっとお客さんの襟足についてる髪の毛一本も見逃すで。
だから掃除はちゃんとせなあかんねん!」
って。
目からうろこだった。
確かに!
言われるとおりだった。
僕はホントに衝撃をうけ、それからは”掃除王”と呼んでもらえるように
掃除をがんばった。
その時聞いた話だったか忘れたが、人間は4パターンあって
目の前にゴミが落ちてると
1、すぐに拾う人
2、あとで拾う人
3、誰かが拾うだろう
4、気付かない人
がいるらしい。
4の人は問題外で、どうしようもない。
3の人はあとで拾うと言っても、忘れることもある。
2の人は他人任せでそのまま誰も拾わなかったらどうする?
1になれ!
と。
すぐに気付いて行動する人。
できる人になれと。
問題はスグに解決しないと。
って言われた。
ほんとにその通りだ。
とし物語 vol54 ~美容師編3~
その同じ年の男性の方とは、わずか3分ぐらいの時間だったが
すごく気が合い、会話も自然とはずんだ。
ガチガチに緊張していたのだが、お流しが終わることには
楽しくてしかたなかった。
その時、男性の方が
「いつかカットできるようになったら、ぜひ僕の髪の毛をカットしてくださいよ!」
って言ってくれた。
めちゃめちゃうれしかった。
ホントに人生で初めてお流しした方なのに、そんなことまで言ってもらえるなんて。
いつになるかわからないが僕は
「ぜひ!がんばりますね!!」
ホントはもっといろんなことをしゃべってみたかったが、僕のできる仕事は以上で終わりだ。
その時、
(シャンプーもできたらもっとお客様と関われる時間が増えて、もっとたくさん会話もできるぞ!)
と思った。
その日から、シャンプーのレッスンに励んだ。
自分の膝を使って(膝をお客様の頭に見立てて)家でも、手の動き方の練習をした。
シャンプーができると、ちょっとは戦力になる。
美容師さんは手が荒れる人が多いが、僕は全くと言っていいほど手荒れはなかった。
同期の海くんと頭を洗いっこした。
海くんの方がお流しも先にテストに合格してた。
シャンプーはなんとしても僕の方が先に合格したかった。
各技術に対して、最終的にオーナーのテストがあり
それに合格しなければお客様に入ることはできない。
これがまた尋常じゃないくらい緊張する。
技術はもちろんだが、こまかい所までチェックされる。
最初は
”おひざかけ”をするのを忘れて不合格。
次は
”ピアスをはずしてもらうのを忘れ、おまけにシャツの襟を折るのを忘れ(襟がぬれるので)”不合格
今思うと当たり前なのだが、どうしても技術に集中してしまって(テンパっちゃって)
そういう細かな気配りが欠けていた。
その後、何回かテストを受けてようやく合格した。
それから少しずつだが、お客様の頭をシャンプーさせてもらえるようになった。
シャンプーすると、1人のお客様と関われる時間が増えるので
自然と会話することも多くなった。
中には
「気持ちよかった。また次回もお願いね。」
って、めっちゃうれしいことも言ってもらえることもあった。
美容師してて、一番うれしい瞬間だ。
だんだんと美容師という仕事に慣れて行き、楽しくなっていった。
僕は、同期の海くんと共にシャンプーマンになった。
海くんの方が若干先を行っていたので、海くんがお流ししてる姿や
シャンプーをしてる姿を見てることも多かった。
そんな時、事件は起きた。