時に人生という転機は、突然やって来るものである。
ピンチはチャンスとよく言うけれど。
しかし、事件の容疑者に間違われるという災難は、なかなか大変なお話である。
男は、自分の子どもを使い、ゆすりや嘘を言って、お金を相手から引き出す手口を繰り返していた。
真面目に働いていないわけだ。
その際、声をかけた男が偶然悪い男で、目の前でどこからか飛んできた刃物で首を刺されて絶命したのである。
もちろん目撃者は、そばにいた男を疑うだろう。
いろいろ後ろめたいことがあれば、その場を立ち去る事もあり得るだろう。
残された幼子は、佐武とみどりのうちに預けられた。
様子をうかがうのは、その子の姉であった。
赤ん坊のすそから落ちてきたのは、印のついた地図…。
そこに埋めたものと殺人に因果関係があったのだが。
今度は、現場から逃げた男が命を狙われるはめになる。
こんな男にも、割れなべにとじぶたというわけで、押しかける女もいるのだ。
母を失ったままの幼い子どもたちを心配し、実は男のこれから先も心配して言葉で叱咤激励(しったげきれい)し食事まで用意する。
彼女がいなかったら、佐武と市たちが駆け付ける前に男は殺されていた事だろう。
強い女性…男性とはこういう女性によってより強くなれるものかもしれない(笑)。
小学館「ビッグコミック」1972年頃・初出。
(講談社「石ノ森章太郎デジタル大全」より「佐武と市 捕物控(15)」から)