とある屋敷に、大きな榎があって夜になると泣き声が聞こえるそうな。
住んでるものも、逃げ出したくなるようなその声とは?
市が、仕事のついでに聞いてきた怪奇話。
なんだか事件のにおいを感じて、佐武に話を持ちかける。
その木をのけてしまえばいいではないかと、誰かが主人に提案したら、死んだ妹が嫌がるなどと、おかしな話をする。
実際、夜中に出掛けてみて確かめてみようということになるのだが。
知ってしまえば、なんだ?なお話であるが、当事者としては大変なことである。
主人の自己中心的な動機の殺人がかつてそこにあったのであり、犠牲者は二人もいたのである。
家庭の事情は、外にはわからないものである。
露見しても、他人には理解しがたい事件が今でも多いではないか。
小学館「ビッグコミック」1972年頃・初出。
(講談社「石ノ森章太郎デジタル大全」より「佐武と市 捕物控(15)」から)