「おじさん、僕を助けてください!」
私の前にいたのは、行方不明の少年である。
私は、とっさにみんなへ見つかった事を報告しようと声をあげようとした。
すると、少年はあわてて腕を引っ張るのである。
「僕は、あの家に戻りたくない!」
私も、家出を経験した身、早いうちに親元を離れた。
「わかった、協力するよ。
こんな場所をウロウロしていたら、すぐ見つかるよ。
私がいい場所に案内しよう」
私は、捜索範囲の外にある職場の建物に連れて行った。
「ここなら、人もあまり来ない。
でも、食べ物は持ってこれないから、水でも飲んで我慢しろよ。
君が気が済むまでここにいればいい」
私は、時々彼の顔を見に行った。
そのたびに少年は、私に両親の様子をたずねてきた。
捜索の打ち切りを聞くと、少年はようやく帰ると口にした。
少年の闇は、私の闇でもある。
手探りしても、光源は見つからない。(終わり)