浜辺にうちあがったニそうの船。
乗組員はいない。
二組は争っていたのだろうか?
まだほかに船がいたのだろうか?
そんなに命がけで争わなくてもよかっただろうに。
そもそも、この島に到着するつもりだったのだろうか。
天候不順で流されて来たのかもしれない。
上陸してもなお、乗組員は争いを続けたのかもしれない。
もしかしたら、それはただのヨットレースだったのかもしれない。
なぜ二人は、争わなければならなかったのだろう。
もともとは仲がよかったのかもしれない。
この島に上陸してから一変したのかもしれない。
二組は、恋人同士だったのかもしれない。
なぜ別の船に?
引き裂かれた恋人同士が、この島で落ち合う約束をしていたのかもしれない。
やっとたどり着いて、砂浜を裸足で手をつなぎ、二人を誰も知らない島民たちにまぎれていったのかもしれない。
答えは、誰も知らない。
ああ、あの船たちに言葉が話せたら、どんな話が聞き出せるだろう。
もしも、話ができたとしても、きっと自分たちの話しかしないだろう。
だって彼らにも、守秘義務があるだろうから…。(終わり)