「蒼き神の再誕」 その五
「おい、聞こえるか」
初めてのスキューバダイビングに少々ね面食らっていたところに耳に装着し
ているインカムから神馬さんの声が聞こえる。装備的にこちらから返事出来な
いのだがっていうかその事は神馬さんも知っているだろうに。
「ああっそっちから返事出来ないんだったな。じゃあいいか。お前らそのままと
りあえず前、方角で言うと南西方向へ進んで。すぐにでかい岩みたいなのが見
えてくると思うから」
指示内容を聞くと俺と桜沢は視線を合わせお互いにうなずく。『ついてきて』の
ジェスチャーをした後、桜沢は体の向く方向を変え、指示の方角へ進み始める。
俺も少し慌てつつそれについていく。
しかし、学校のプールで何度か練習したとはいえ、やはり本物の海だと妙に感
覚が違うような気がする。さすがに南の海のような様々な海洋生物が見られる
事などははなから期待していなかったがしかし、本来の海とはここまで生物が
いないものなのだろうか、魚の姿などが全く見えず、それなのに海水そのもの
は妙に澄んでいて視界はすこぶる良好。なのに、そうまるで生物感がなくまる
ででかい水槽で泳がされているそんな気さえする。
そうこう考えているうちに目的の場所に到着する。それは本当にまるで岩がそ
こに生えているようにそれは存在した。高さは五メートル山なりの形状をした、そ
の岩は外観上は自然物のようにも見えるのだが何も存在しなかった海底にそれ
だけがポツンとたたずむ様は何かの意図がとも考えられた。
「よし、到着したな。その岩のどっかに祠みたいになっている所があると思うから
それを捜して。くれぐれも見つけても指示があるまで触るなよ」
いや、言われなくてもそんな得体の知れないモノに誰が触るか。
「特に桜沢。絶対触るなよ」
ああっこいつは触るわ。
「ああっ後、少しでも違和感を感じたら、知らせて。カメラからこちらもチェックし
ているとは言ってもカメラ越しではどうしても感知し辛いからな」
まぁそうならないように祈るわ、マジで。
ほどなくして祠を発見、同時に社らしきものも見つけるに至った。話だけ聞い
ているどれだけ大層な神社かと思っていたが失礼な話、それはかなり粗末な
ものだった。一応、社の体は成しているがボロボロの上にとても小さく、その辺
の道端にある名もなき社にすら劣る代物であった。長く海中にあったことや場
所的な事も考慮にいれれは、仕方がない事かも知れない。ただ、この辺り一
帯の自然を司っていた神と聞かされていたので少々、拍子抜けだ。
確認のため、桜沢のカメラに向かって、『これ?』のジェスチャーを行う。
「うん、それそれ。やっぱり痛んでるわね。何か違和感とかは?」
俺と桜沢返事の代わりに首を振って返事をする。確かに妙だとも思える。い
つもならばこういう場所に来た場合、周辺の霊子が濃いせいもあり呼吸の際
違和感を感じたりするのだが水中にいるせいか今回はそういう感じが全くしな
い。海の状況に違和感は感じるが感覚としての違和感は感じられないそれが
現状だ。もしかして俺達が気付いていないだけなのか。そんな嫌な思考が頭
を過ぎった。
(続く)