無事、ドンキで最低限の道具一式を揃えた我々一行は新たな壁にぶち当たっていた。
そう、花火する場所を決めていない問題である。
横浜の海の方で花火をしたいという何ともアバウトな希望だけを胸にやってきたため肝心の場所を決めていなかったのだ。
とりあえず東口からベイクォーター、日産本社ビルを通り抜け海側へと向かった。
この時の私たちは目的地も決めてないくせに、なぜかテンションだけは高く、早く花火しようぜ!!!と浮かれに浮かれていた。
今思うと2,30分ほどの道中、ひたすら「花火楽しみだね」という薄い内容の会話を繰り返していた気がする。にわかには信じがたいほどの単細胞たちである。
ただ夏の夜というのは外気が心地よい。昼間の暑さが徐々に冷めてきて適度に涼しいのだ。しかも歩いている場所が横浜ベイサイドエリアである。興奮しない方が間違っている。
横浜東口を出発しなんとなく歩いていた私たちは気づくとボルテージ最高潮のままコスモワールドの方まで来ていた。
ここで少し小腹もすいたためワールドポーターズ内のフードコートで夕飯をとりつつ私たちはついに目的地を定めた。
ずばり"赤レンガ倉庫"である。
もうこの時点で私たちは自分らの計画に酔っていた。夜の赤レンガ倉庫をバックに横浜港を眺めながら花火なんて、もうなんというか、いいではないか。それこそ乙ではないか。
近くに停泊している豪華客船の眩いばかりの光に照らされ、赤レンガ越しに横浜の夜景を堪能し、ラストにはメインイベントの花火だ。
大学一年の夏の思い出作りとしてはこれ以上ないほどの完璧な計画だった。
「最初は焦ったけどやっぱ無計画で来ても何とかなるもんだね、さすが横浜だわ」
などという呑気な会話を交わしつつ、私たちはすっかり勝利した気でいた。
あとはもう存分に花火を楽しみ夏の思い出を作るだけだ。
しかしそうは問屋が卸さない。
赤レンガ倉庫の脇を通って海の方へ行くと、なんかやたらとカップルが多いのである。
いくら私たちアホ三人衆でも、いい雰囲気のカップルの目の前で花火をするほどのメンタルは持ち合わせていない。
私たちは確かにアホではあるが、人並みに良識はあると信じている。自分たちがカップル側だったらこんな男3人組一刻も早く消えてほしいと願うだろう。
空気の読めるかっこいい大人である私たちは海辺を横浜側へ戻りつつ適当に花火できそうな場所を探すことにした。
ただ3分も歩かないうちに気づいてしまった。
花火ができそうな公園や広場は至る所にあるがどこも花火禁止の看板が出ているのだ。
よく考えれば当たり前のことだ。
今どき花火を許容してくれる公園や広場の方が珍しいだろう。
しかし、さらに横浜側へ歩を進めるとある公園にぶち当たった。
臨港パークである。
横浜市民以外の方向けに小学生の語彙力で説明しとくと、まあ海に面したいい感じの公園である。
「これだ!!!!」
理想と完全に一致するロケーションに私たちは狂喜乱舞した。
今思うとあの時点で花火やっちゃいけない雰囲気はあったような気がする。
しかし、ようやく花火ができそうな公園という安住の地を見つけた私たちはこの地を逃すまいと躍起になっていた。
「草が生えてる広場とかは火事になったらやばいから避けよう」
などと小さな脳みそで必死に考えた結果、噴水近くの広場で花火をすることに決まった。
花火自体は始めてみると普通に楽しかった。
友人と写真を撮ったり、空中に文字を描いたりしてそれなりに楽しんだような記憶はある。
しかし、ほどなくして私たちはまたしても地獄を見ることになる。