花火を始めて10分ほど経った頃だったと思う。

噴水を挟んで反対側から人影がこちらに向かって近づいてきたのだ。


最初は「警備員きたんじゃね」とか「いや近所のおっさんやろ」みたいな会話を交わしていた。


しかし、その人影は私たちの目の前まで来ると、こう言った。


「ごめんなさい、警察です。」


その瞬間、私たちは悟った。あ、やっぱこの公園も花火しちゃダメなんだ、、

なんか知らなかったが、その警察官の話によると臨港パークは私有地らしい。想像を遥かに超える理由で花火が禁止されていたことに驚きつつ、私たちは警察の方に謝罪をして地面に跡が残っていないか一緒に点検してもらった。



その後、再度お詫びをして片付けをしていると警察の方から


「お兄さんたち大学生ですか?」


と声をかけていただき、そこから少しだけお話をした。その警察の方はどうやら歳が近いようで


「自分は短大出てすぐ警察なっちゃったんでもっと遊べばよかったな〜って思いますよ。お兄さんたち大学生活楽しんでください!」


などと爽やかな笑顔で言うもんだから私たちはいたく感動し、彼の優しさに心の中で敬礼を送った。

今、あの方はどうしているのだろうか。

ふとこれを書いていて懐かしい気分になった。





さて話を元に戻す。


またしても花火難民と化した私たちは次なる目的地を定めた。

ここまで来てまだ諦めない私たちの姿を誰か褒めて欲しい。

なんなら受験生とかは見習ってほしい。



さてその目的地とは名前は忘れたが地図アプリ上で近くにあった公園である。

ちょうど横浜駅へ帰る途中にあったのでここが無理なら諦めようということで意見は一致した。



誰かがもう横浜諦めて多摩川の河川敷とかでやらね?という恐ろしい提案をしていたような気もしたが聞かなかったことにした。

ここまで来て横浜から逃げるのは負けな気がしたのだ。

謎の意地だけが折れそうな私たちの心を支えていた。




まあなんやかんやあってその公園についた。

全くもって海の近くでもなく、なんならベンチで熱い接吻を交わしているカップルもいたが、もう横浜でありさえすれば何でもいいと思っている私たちにはノーダメージだった。



私たちは粛々とあくまで業務的に花火の準備を始めた。

もうこの頃には出発した時の100分の1程のテンションも残っていなかった。

ただただ何かに取り憑かれたかのように花火をしないと帰れないと思っていた。


一応少しだけ花火をしていい感じの写真も撮った。


しかし、どこか盛り上がりにかけたまま、大量の花火を残して私たちは帰宅という道を選んだ。

①の冒頭で紹介したSが花火の煙がマンションの方に流れていくのを懸念して強硬に中止を主張したのだ。


普段一番ぶっ飛んでるSが至極真っ当な提案をしたことに私とAは心底驚いた。

ここでSのぶっ飛んでるエピソードをひとつ紹介しようと思ったが、特に思い出せるものがないのでまたの機会にする。



花火に関しては正直、私とAはまだまだ出来たのだが、Sがあまりにも帰りたがるので渋々中止して帰ることにした。




結局、私が残った大量の花火、Aが絶妙に邪魔なサイズのキャンドル、Sが金輪際使わないであろう例の手桶をそれぞれ持ち帰ることが決まった。



帰りの電車では壁にカマキリが張り付いていて興奮したりというプチハプニングはあったものの消化不良の疲れを引きずりながら帰路についた。



こうして私たちの夏の一番長い日が終わったのである。