セカンドアルバム「Heart Beat」(1981)リリース以後、1981年から翌82年にかけて佐野元春は精力的にシングルレコードをリリースしてきている。それは「彼女はデリケート」(1982)収録のコラボレーションのアルバム「NIAGARA TRIANGLE Vol.2」(1982)との兼ね合いもあったのかもしれないが、いまの視点でみると名を挙げたいと必死になっている佐野とレコード会社の逸る思いの反映であったのかとみえてしまう。いまとなっては佐野の初期代表作として名高い「SOMEDAY」(1981)が4thシングルとしてリリースされた当初はチャートのトップ100にすら入らなかったというのは信じられないようなエピソードだが、ラジオやコンサートでの地道な活動を通じて徐々に知名度を高めていったそうだ。サードアルバム「SOMEDAY」(1982)がリリースされたのはその上昇気流に乗り始めた頃で、オリコンチャートでは4位にランクインするようになる。個人的には前作「Heart Beat」の方が長い付き合いだし自分好みなセンチメンタルな曲が多いので、佐野の初期三部作といわれているアルバムのなかでは物足りなく感じてしまう方なのだが^^;、「このアルバムが売れなければ活動を止めようと思っていた」とまで思っていたという佐野の気合いというか勢いといったものは確かに感じられる。

 

前作「Heart Beat」ではアレンジに伊藤銀次及び大村雅朗の助力を仰いでいた佐野だが、この「SOMEDAY」においては半数ほどの曲のストリングスアレンジを大村が担当しているほかは佐野自身が手がけるようになっている。自分の手元にあるのは後年の再発CDとおぼしきものだが、初出のものにも同様に掲載されていたと思われる詳細なバイオグラフィと短い小説のようなイントロダクションが歌詞カードに掲載されていて、いかにも強烈に自己アピールしようとしているのが微笑ましく感じられる。ジャケットをみると右手にフラミンゴのシルエットが写っているが、歌詞からすると「Heart Beat」収録の「ガラスのジェネレーション」向きじゃないのかと訝しくなる^^;

 

冒頭は軽やかなタッチの「Sugartime」。当初はもっと重い歌詞のプロテストソングだったそうだが、レコード会社の意向を承けて書き直されたという。続く「Happy Man」も同じようなタイプの軽快さを保持している。2曲ともシングルとしてリリースされているので、このような曲なら受け入れられやすいという意識が念頭にあったのか。3曲目の「DOWN TOWN BOY」も同じくシングル曲だったが、アルバムバージョンとなっている。明るい感じの曲だが、前2曲に比べると真摯さが加わってきているようだ。

 

4曲目「二人のバースデイ」ではややくつろいだ雰囲気に変わるが、「麗しのドンナ・アンナ」では重々しく推移していくようになり、ほどよい緊張感を醸し出す。そして、前半のクライマックスである「SOMEDAY」へと繋げられる。LPではここまででA面となる。シングル曲が並び掉尾を飾るのが初期の代表作「SOMEDAY」という豪華さが目を惹くが、ひねくれ根性ゆえか個人的にはB面の曲の方が好きだ^^;

 

その第1曲目「I'm in blue」は、沢田研二のアルバム「G.S. I Love You」(1980)のために書かれた曲のセルフカバーであり、沢田との聴き比べができるのが嬉しい。沢田のキザなプレイボーイっぽい雰囲気に比して、傷つきやすい青年のような感傷を感じさせる佐野。共に味わい深いと思う。さらに吉川晃司も後年(1984)カバーしたというが、これは未聴。しかし、吉川だと後述の「Vanity Factory」の方が向いていたのではないかという気がしないでもない。続く「真夜中に清めて」も、真摯な雰囲気を持つ重々しさが好ましい。3曲目はセンチメンタルなピアノの序奏から一転してアグレッシブなスタートを切る「Vanity Factory」。これもまた「G.S. I Love You」収録曲のセルフカバー。これは「I'm in blue」ほど聴き比べの楽しみはないが、オリジナルにおける後奏の雰囲気を引き継いで、なんと沢田本人がコーラスに参加しているというのが驚きだ。これだけでも充分聴きがいがある。

 

B面4曲目「Rock & Roll Night」はライブのような雰囲気を感じさせる大曲。スケール感については「SOMEDAY」をも上回る盛り上がりだろう。締めくくりは「サンチャイルドは僕の友達」。エピローグのように置かれた短い曲だが、個人的にはなくてもよかったように感じる^^;