五十嵐浩晃の最大ヒット曲として知られる「ペガサスの朝」(1980)はチョコレートのCMソングとして使われたが、ヒットのきっかけは翌年初頭にTBS「ザ・ベストテン」の「今週のスポットライト」コーナーで紹介されたためだったらしい。むろんCMソングとしてテレビで流れていたのを聴いて「いいかも」と思った人は多いのだろうが、同年デビューしたばかりの新人でアーティスト名や曲名などは分からなかったから、「ザ・ベストテン」を観て初めてそれらの情報を得たということだったのかもしれない。こんにちなら気になる曲とかがあれば即ググってバズるとかネット経由で急速に浸透するのだろうから、スピード感は隔世の感があるような気がしないでもない^^;

 

むろん自分もCMなどで「ペガサスの朝」は聴いていたと思うが、まだ「ザ・ベストテン」などの歌謡ランキング番組を観る習慣のない小学生だったためリアルタイムで五十嵐に関心を持つということもなく、レコードを入手して再聴するに至ったのはごく最近のことである^^; そんな経緯もあって自分は「ペガサスの朝」よりもデビュー曲「愛は風まかせ」(1980)の方が贔屓なのだが、やはり捨てがたい曲だと思う。厳密に聴くと理屈に合わない歌詞のように感じて訝しくなってしまうが^^;、自分の若い頃と照らし合わせてみると、本当に自分の望んでいることが自分で分からないような恋に恋していた頃の心理が巧まずして表出しているという趣きで、甘酸っぱいものを感じるものだ。

 

この「ペガサスの朝」を収録した五十嵐のセカンドアルバム「ナチュラル・ロード」(1980)は、シングル盤リリースと同じ1980年11月のうちに少し遅れて発表されている。曲はいずれも五十嵐・アレンジは鈴木茂で、詞はちあき哲也・大杉実に五十嵐本人という組み合わせなので、ファーストアルバム「愛は風まかせ/NOTHERN SCENE」(1980)と同じ顔ぶれということになる。よって作風としては大きく変わったところは感じないし、シングル曲となっている「愛は風まかせ」と「ペガサスの朝」の関係に似てファーストアルバムの方がやや贔屓となってしまうようだが^^;、ひととおり通して聴いてみると意外にサウンド面で捨てがたい魅力を感じる。

 

「ペガサスの朝」は冒頭に置かれており、インパクトのあるイントロから驚かされる。曲については先に書いたとおりだが、ストリングスを配してダイナミックさを印象づけるスタートだ。つづく「フォギー・ナイト」は一転して慎ましやかな曲だが、ブラス・セクションの合いの手は小味が効いている。3曲目「小さな明日」もセンチメンタルな印象だが、前曲では使われていないストリングスが加わっているためスケール感は高まっている。次の「雪が降る前に」は、哀感を高めるハーモニカの使い方に唸らされる。ここでメランコリックな情感が深まりつつ、LPでいうA面最後の表題曲「ナチュラル・ロード」へと繋げられていく。ここは重々しい前半のクライマックスとなっている。後奏の長いフルートのソロからギターに引き継がれるメロディが余韻に溢れている。

 

LPでいうA面ではかなりしんみりとしてしまうが、B面冒頭は明るい印象の「ブリージー・ナイト」。A面の「フォギー・ナイト」と対になっている曲なのか(ただし、詞は「フォギー・ナイト」の方がちあきで「ブリージー・ナイト」の方が大杉)。イントロなどで聴かれるコーラスが美しい。後奏のブラス・セクションがちょっとジャジーな印象。続く「流星群」では、イントロなどで聴かれるシンセサイザーがいかにもタイトルを連想されるような響きで微笑ましくなる^^; 3曲目「イノセント」でもシンセサイザーは効果的に使われているが、前曲に比べるとずっと慎ましやかな印象。しかし次の「いつまでも」ではやや明るく転じてフィナーレを迎えた感があり、最後の「幸せいろのなみだ」は小さなエピローグであるかのように美しくつましいものとなっている。これは作詞も五十嵐本人の手になる曲。