「I LOVE YOU SO」(1982)にて始まった山本達彦の東芝EMI時代のアルバムは、「HEART NOTES」(1988)にて終わりを告げることとなった。少なくともセールス面に関してはこの東芝EMI時代が山本のピークだったといえる。あたかも昭和から平成への移り変わりが断絶を生じさせたかのように感じさせる1989年のブランクを経て、1990年からアルファレコードにおける活動が始まっている。自分はこの山本のアルファレコード時代のアルバムもデジタル音源にて所有しており、たまたまランダム再生でこの時期のアルバムの曲がかかったりすると結構いいなと思ったりすることもあったが、整っているけれどこれはという個性を感じさせないような気がして、申し訳ないがなかなか通して再聴したいとまでは思わない^^; 

 

東芝EMI時代最後のアルバム「HEART NOTES」についても、ある程度その兆候は感じてしまう。東芝EMI時代初期のアルバムに比して歌声がジェンダー的なニュアンスで「男らしい」ものになってきていてカッコイイといえなくもないが、山本ならではと思わせる特徴に欠けるような気がする。サウンド面の没個性化がそれを助長しているようだ。このアルバムについてもすでにデジタル音源で聴いてきているが、公式ディスコグラフィでは分からない編曲者の情報を確かめるためだけに現物のCDをヤフオクで落とすこととなった^^;  見ると佐藤準と武部聡志という、自分とは合わないタイプの顔ぶれだった。前作「Boom DAYS」(1987)においては佐藤アレンジとは思えないほどの頑張りぶりをみせていたように思うが、この「HEART NOTES」については編曲者にかなり妥協してしまったのか、この時期によくある無機的な電子音の氾濫したアレンジに近づいてしまっている感がある。一部気を吐いている曲もあるにはあるので、これは残念な結果だ。なお、曲はすべて山本本人、詞は売野雅勇と吉元由美となっていて、前作からの継続性を思わせる。

 

冒頭の「Dancin' on the Beam」は先行シングルだった曲で、FMフェスティバルのテーマ曲として使われたとのこと。アグレッシブさが耳をそばだてる。同じようなサウンドで続くと飽きてしまうように思うが^^;、最初に1曲だけというくらいならこれもありだと思う。続く「STAY MY LOVE IN YOUR HEART」は静かでロマンティックな曲。アレンジが物足りないといえなくもないが、これはまずまず聴かせる。さらに「霧雨の街角」でメランコリックな方向に展開していくが、単調なアレンジのせいで色彩感が乏しく感じてしまう。間奏と後奏のサックスがかろうじて救いとなっている。4曲目「微睡の長椅子」まで佐藤と武部が交代でアレンジを担当していて変化をつけようとしているかのようにみえるが、あいにく自分には同じようにしか聴こえない^^; 

 

5曲目「追憶」には編曲者名が書かれていないが、鍵盤楽器単独の伴奏にイントロと後奏でコーラスが入る程度のようなので、作曲の山本本人が手がけているということなのだろう。しかし、このシンプルさが素晴らしい。このアルバム中随一の出来である。この余韻溢れる曲の雰囲気を引き継ぐかのように神秘的に始まり、一転してメカニカルに展開していく6曲目「SWEET LIE」への続き具合はインパクト大である。この曲も間奏のグルーヴ感がなかなか魅力的だ。

 

7曲目「MISSING」は軽快なタッチで間奏曲を思わせる。続く「INSTEAD OF YOU」は一転して重々しく、ロマンティックに展開していく。メカニカルなサウンドに抵抗はないでもないが、この程度なら許容範囲か^^; しかし、最後の「果てしなき海」のイントロまで続くと「またか」と思わされてしまうので、後味の悪い締めくくりか。中盤がなかなかいい感じだっただけに、いささか物足りない。