尾崎亜美というと南沙織「春の予感―I've been mellow―」や杏里「オリビアを聴きながら」(ともに1978)といった提供曲でおなじみで、自分は特に「春の予感―I've been mellow―」が好きなのだが、メランコリックな歌声が気になりつつもなかなかきっかけに恵まれずあまり聴いてこなかった^^; とはいえ、ヤフオクなどをチェックして安いLPを少しずつ買い溜めてきたので、ちょこちょこと聴いていこうかと思っているところである。

 

尾崎は高校時代より作詞作曲を手がけるようになり、地元のラジオ局の公開オーディション番組に出演した際所属レコード会社となる東芝EMIの関係者が審査員となっていて絶賛されたのがデビューに繋がったらしい。ファーストアルバム「SHADY」(1976)が松任谷正隆プロデュースだった関係か、荒井由実の同年のアルバム「14番目の月」にコーラスとして参加している。荒井=松任谷由実には実の妹のように可愛がられたとのことで、この「SHADY」というアルバムタイトルのネーミングも荒井によるものという。「SHADY」とはshadeの形容詞化で、「心の中の陰りをポップに描ける」という荒井による尾崎の印象を表したものだそうだ。確かにそのような暗めの曲が多いので、尾崎はデビュー当初ポスト・ユーミンの最右翼などと評されたというのが信じられないくらいのスタイルの違いを感じる^^; 

 

「SHADY」は歌となっている曲はすべて作詞作曲が尾崎本人・アレンジがプロデューサーの松任谷担当となっているが、一部の曲でホーン・セクションのアレンジを村岡健が手がけている。セールス的にはさほどではなかったようだが^^;、コーラスとしてハイ・ファイ・セットが参加しているほか、AMII'S Armyというクレジットになっているグループが実は山下達郎と吉田美奈子であるなど、演奏者はかなり豪華である。個人的には年代なりの古さを感じてしまうが^^;、冒頭の長いインストゥルメンタルのインパクトなどもあり捨てがたいものがある。

 

手持ちのLPは歌詞カードが欠品で情報不足気味だが^^;、この冒頭の長い「プロローグ」は尾崎でも松任谷でもない、阿部雅士という人の作曲かつアレンジであるとレコードラベルにはクレジットされている。この阿部という人は東京芸大チェロ専攻だったらしいが、確かにそのようなクラシカルな雰囲気を持つ曲調で、落雷と降雨の効果音も採り入れられており、タイトルを連想させる要素がある。

 

歌としては最初の曲にあたる「影絵の街」は、さながら小雨の中を傘を差して歩くかのような雰囲気を感じさせる軽やかさで始まる。続く「冬のポスター」はデビューシングルのB面とされた曲で、アルバムのタイトルに似つかわしい切なさが漂う。尾崎の歌唱もこういう曲がハマっていると思うので、自分にとってはこのアルバム指折りのものである。3曲目「私は何色」はいま聴くとレトロな味わいを感じる短い曲。4曲目「届かない春」も古めかしさが先に立つ曲だが、陰りの漂う曲調はアルバムのコンセプトに沿っているものだし捨てがたいところはある。LPでいうA面最後の曲「とまり木」についても同じことがいえるが、この曲はやや長い曲になっているぶんスケール感があり聴きばえのするものとなっている。

 

LPでいうB面冒頭はデビューシングル曲「冥想」で、このアルバム中では明るいタッチである方なのでシングル曲に選ばれたのか。ここから後半は冒頭の「影絵の街」でも感じられたような軽やかな雰囲気に場面が転換していて、続く「風の中」もそのような味わいの短い曲である。B面3曲目「私を呼んで」はイントロと間奏の管楽が目を惹く、リズミカルな雰囲気。続く「追いかけてきたけれど」で締めくくりに向けてほのかに離愁を漂わせている印象だが、結びの「遠くの光が…」があまりにも地味な曲で寂しい終わり方なので、いくらタイトルがそうだからといって尻すぼみに過ぎる感は否めない^^;