昭和の人気ドラマシリーズ「金曜日の妻たちへ」(1983〜85)第1シリーズ・第2シリーズのオープニングテーマは洋楽が使われていたが、第3シリーズにおいて初めて邦楽が使われた。小林明子が過去に書いたがお蔵入りしていたメロディに湯川れい子が詞をつけたものという。そのため偶発的なところもあるとはいえ、先行シリーズにみられた洋楽的な雰囲気を継承しようという意識はあったのだろう。小林自体、後年イギリスに拠点を移してしまっているくらい、もともとそのような素養を持っていたのではないかと思われる人だし、その出来た楽曲「恋におちて-Fall in love-」(1985)の中盤以降英語詞が多く採り入れられているのも、その反映ではないのか。
また、歌手について、当初は決まっていなかったもののデモテープの出来がよかったために、作曲者の小林がそのまま歌うことになったというエピソードも知られている。つまり、小林の歌手デビューというのも偶発的なところが大きかったといえる。シングル「恋におちて-Fall in love-」リリースを待たず制作に着手されているようなので因果関係として読み解くには弱い面もあるが、小林のファーストアルバム「FALL IN LOVE」(1985)はこのシングル曲「恋におちて-Fall in love-」を軸として構成されている感があり、「優しくだまして」「もう二度と秘密の恋なんかしたくない」といったこの曲の世界を意識したように感じられるタイトルの曲も含まれている。作曲はすべて小林自身だが、詞については小林自身が2曲、残りを他者が担当している。顔ぶれを見ると湯川れい子・秋元康・さがらよしあきなど、稲垣潤一初期のアルバムに似た印象があるが、これはレコード会社がファンハウスだからなのか。ほかに松本隆となかにし礼の名もみえるので考えすぎかもしれないが^^;、豪華なメンバーで力が入っているというのは確かだろう。アレンジは多くの曲が萩田光雄で自分にとっては可もなし不可もなしみたいな印象^^;だが、2曲小林自身が手がけている。小林はサードアルバム「Naturally」(1987)において過半数の曲のアレンジをしておりひととおりでない関心を寄せていたと感じられるのだが、この2作のアルバムだけで終わってしまったようなのが残念である。
冒頭が表題曲に近い扱いのヒット曲「恋におちて-Fall in love」。この曲については冒頭に書いた以上特に付け加えたいこともないが^^;、小林のイメージを決定づけた名曲といえよう。続く「Stardust Memories」はガラッと雰囲気の変わるリズミカルな曲。小泉今日子のヒット曲とタイトルがよく似ているがまったく別の曲^^; なお、小泉の曲の方が少し先である。中盤、間奏に気持ちいいサックスのソロが流れるが、アーティストを見たらもちろんジェイクだった^^; 3曲目「Misunderstandings」は詞も小林自身が手がけた全編英語詞の曲。あたかもカーペンターズの曲を思わせるしみじみとした曲で、後年リチャード・カーペンターがプロデュースを引き受けてアルバム制作に到ったという萌芽を感じさせるものである。自分の好みとしてはこの曲をこのアルバムのベストに挙げたい。
4曲目「優しくだまして」も前曲の雰囲気を引き継いだ感のしっとりとした味わいを感じさせる曲だが、次の「冬の園」まで続くといささか地味に傾きすぎているきらいがある。この「冬の園」が小林自身のアレンジになる1曲で、使われている楽器の数が少ないという面もあるからかもしれないが、曲の配置がいささか平坦に過ぎたのか?という疑問を感じた。
LPでいうB面最初の「もう二度と秘密の恋なんかしたくない」はガラッと曲調が変わって、比較的アグレッシブになる。詞の内容という点ではA面最初の「恋におちて-Fall in love-」との対比を意識しているのか^^; 続く「ダイアリー」も割と力強い曲調で、後半の盛り上がりを意識しているのか。B面3曲目「夏の終わりに」のオープニングがさらにダイナミックでアルバムの頂点を築いている印象だが、前半の曲に感じた小林のイメージと比べると意外な気がして違和感がないでもない^^; しかし、最後の「あなたに素敵なクリスマスプレゼントあげたいな」はしっとりとした情感を感じさせる曲調に戻り、安心させてくれる。この曲がもう1曲の小林自身のアレンジになる曲で、演奏アーティスト欄をみるとどう考えても間違いとしか思えない小林自身によるキーボードとコーラスの多重録音とされているが^^;、「冬の園」に比べるとかなり大がかりな造りの音楽をうまくまとめているなと感じさせてくれる。