4巻目は、安土築城、天王寺砦の戦い、第一次木津川口の戦いです。

与一郎は秀吉の弟の長秀(のちの秀長)に仕えることになり、また青年時代の藤堂高虎も登場します。

 

石山本願寺を包囲し、敵の補給路の木津砦を奪うことを、信長は塙直政・明智光秀らへ命じます。ところが塙直政が雑賀の鉄砲隊により討死し、光秀がこもる天王寺砦から救援依頼が。すると信長は「続け」と叫び京都から一騎駆け。まるで桶狭間の戦い前夜のように。

 

すると秀吉は「上様を一人にするな」と与一郎に命じます。ただ秀吉は、秀吉家中の誰かが信長への忠義を印象付けるのが目的なんです。与一郎は「とにかく淀川沿いに下れ」と言われたまま行動し、信長に追いつきます。

 

歴史書にはなかなかこんなことまで書いてないですよね。不慣れな道をどのように進んでいくか、馬を潰さない配慮、家臣にしてくれと追いかけてきた於弦とのやり取り、信長に追いつき名乗るときの「羽柴筑前守様麾下、羽柴小一郎が家臣、大石与一郎と申す」と何とも長い口上。この本は、道中での苦労や心の声が描かれており、本当に庶民感覚なんです。

 

天王寺砦の戦いで信長の左後方に配置された与一郎は、トリカブトの毒矢や配下による百匁筒・三十匁筒の抱え撃ちなどで大活躍。織田家中でもちょっと有名になります。

 

そして木津川口の戦いでも、毛利水軍にコテンパンにされながらも、与一郎は活躍します。鉄砲玉がチュイーーーンと飛んでくる様や焙烙玉の威力、それが臨場感たっぷりに描かれています。

 

朝井家再興の望みより織田家で今を生きる与一郎の活躍や、庶民感覚の考え方に、一気に読んでしましました。こちらも三河雑兵心得と同じように長く続くんでしょうね。とてもワクワクします。