人生どん底にいた山岸日葵が、「弁当屋 旬菜厨川」の菜月や常連さんたちに支えられながら、自分を取り戻し、前向きになっていく成長物語です。

 

皆に助けられ感謝する日葵ですが、菜月から「山岸さんがいる。助かってる」と言われる場面があります。いつの間にか、日葵自身も周囲に良い影響を与える存在になっていたのです。さらに豆腐のパッケージデザインを任され、「こんな未来があるなんて考えもしませんでした。夢のようです」とこぼす日葵に、菜月が「自分の手でつかんだものだ。これが現実だ」と返す言葉が胸に響きました。

 

日葵の家族とのギクシャクした関係も少しずつほぐれ、また、別れた夫の元で暮らす菜月の子どもの成長した姿を、日葵のおかげで垣間見ることができるなど、登場人物それぞれが前へ進んでいく姿に、読んでいて温かい気持ちになりました。

 

人はひとりでは立ち直れないけれど、誰かの言葉や存在が背中を押してくれる。そんな当たり前のようで大切なことを、日葵の姿を通して改めて感じました。読んでよかったと思える作品です。