伊達政宗の近習・軍師・執政の片倉小十郎(景綱)。

伊達家の過去の因習やしきたりに左右されずに、自分で考える男に育てよ、と当主・輝宗に6歳の梵天丸(政宗)の近習に抜擢されます。小十郎は、梵天丸との接見の際、梵天丸の不満に対し「若君の意に添わぬならば…、ひとこと『控えよ』とお申し付けなされよ」と、梵天丸に勇気を与えます。

 

接見の後、小十郎の抜擢を面白く思わない門閥の家から選ばれている小姓と、小次郎が互いに刀を抜いた際に、梵天丸から「控えよ」と発せられ小十郎は驚きと歓喜にあふれます。

 

小十郎は、伊達vs佐竹・芦名の人取橋の戦い、大内定綱の帰参と猪苗代盛国への調略による摺上原の戦いで武略・智略を発揮します。

 

「控えよ」の梵天丸の言葉は、小十郎の心に残り、のちに

・秀吉から直臣にと誘われ、体中が心地良い歓喜に満ちた際に、

・百万石のお墨付きが反故にされ、伊達家の天下を夢想した際に、

「控えよ小十郎」と諫められます、ただし小十郎の心の声としてですが。

 

小十郎目線での伊達政宗は、あまりやんちゃに描かれておらず、却って小十郎のほうが諫められているような…。ただ作品の主人公である小十郎は、やはり政宗を支えるというか、政宗の方が器が大きいというか、控えているというか、黒子に徹しているような雰囲気があります。さすが小十郎、といった感じです。

 

この作品では、小田原参陣直前の母・義姫による政宗毒殺未遂と弟・小次郎の自刃については偽りで、3人の方便であったことなども描かれており、読んでいて新鮮に感じられました。