老舗パン屋の三代目・音羽和久の、頼りなさげなの見習い時代から自覚をもって老舗パン屋を継いでいく決意に至るまでを描いたお仕事小説。

 

老舗パン屋「コテン」の和久は、「じいちゃんもよく言っていた。ひとの手だからこそ、そこにこめられるものがあると。作業効率や、次巻、生産量も、もちろん大切なことに違いはないが、そこだけを見ていると見落としてしまうなにかも、あるのではないだろうか。目には見えないような些細なこだわりだが。それを信じたい気持ちは俺の中にもある」と悩み、周りの人に助けられ自分のパンを見つけます。「形じゃなく、じいちゃんの心意気を、受け継ぎたいんだ」

 

「すきだらけのビストロ」を読んで著者のほかの本もと思い、読んでみました。するとお料理小説というよりむしろお仕事小説で、たくさんの人に支えられて成長する過程が描かれている作品でした。また第二章をよみ始めた時、あれっ短編集かなと思うほどの技巧が施されていました。面白かったです。