分不相応にもファミレスの店長に抜擢された南雲みもざ。

 

ホールを走り回り、キッチンのヘルプに入り、お客様の苦情にお詫びし、バイトの休憩を優先し、動きの良くない年上の社員に不満を募らせ、本社からの容赦のない指示にも応え、賄いなど食べる暇もない。生活リズムも崩れ、焦りや責任感から不眠気味に。そのうえ賃貸マンションの上の階で火事があり、階下のみもざの部屋は黒ずんだ水で水浸し。しかも臭いもきつい。

 

満身創痍のなか、夜遅くでもやっている「キッチン常夜灯」を教えられます。

そこには有名なフランス料理店を辞めた、シェフの城崎恵(けい)と接客の堤千花がお客様の美味しい顔を見ながら楽しそうに仕事をしています。もちろんシェフと千花にも苦しかった出来事があり、悩みを抱えている常連さんもいます。この店は居場所が欲しい人のための場所なんですね。しかも美味しい料理とさりげない優しさでおもてなしをしてくれる。

 

「私が固定観念に縛られているから自分の立場が苦しかったのだ。どうして私がこんなことをしなければならないのか。店長を押しつけられたことで、被害者になった気分になっていた。」と、みもざはファミレスで社員やバイトに頼られるだけでなく、頼っていくことで少しずつ状況がよくなっていきます。

 

美味しそうなスープやメインだけでなく、味噌汁やおにぎりも出てきます。それ以上にキッチン常夜灯は人と人とのつながり、人に頼ることも必要だということを教えてくれるあたたかいお店でした。