戦の心掛けを2つ、「その一、笑え。その二、わしを見習うな」と家康が井伊直政への言葉。家康には雪斎以降、師と呼ぶべき人がおらず、なにもかも「どうする家康」状態だったのでしょう。若い直政に戦場で教えます。
「笑え。肩の力が抜ける。余裕を見せろ。形だけでいい。見栄を張れ。中身はあとからついてくる」
「わしを見習うな。43のわしと24のそこもととでは、合戦での戦い方が違う。いい年をして先頭に立って馬を駆れば軽率のものとそしられる。だが24のそこもこが最後尾で、でんと構えて動かなければ、臆病者と嗤われて誰も動かない」
「強いものが勝つのではない。生き残って「自分は勝った」と主張することで勝者になるのだ」 まさに生き残る天才の家康ならではです。武士として美しく勝とうとする鬼武蔵(森長可)に、生き残るために尋常な勝負をしない家康。
小牧・長久手の戦いの前後の秀吉との駆け引きも、「あれっ」と思うところはありますが、興味深い内容です。著者の作品はなるほどなぁと思わせてくれる箇所がいくつか散りばめられているので、読んでいて飽きません。家康の偉大さの一方で気の弱さが露呈されていて、親しみやすい一冊でした。