神谷隼人は元超エリート警察官、元刑事で社長の岡村茂雄のアドバイスを受けながら独り立ちしています。鍵のプロの貝田、天才的スリの名人の外山、詐欺を研究するうちにいつの間にか詐欺事件に関与してしまった尾形。個性的なスペシャリストによって911代理店はあらゆるトラブルを解決します。

 

もう一人、凄腕のハッカーながら二重人格の篠崎沙羅・玲奈は、昼間は沙羅、夜は玲奈となり、気立てが優しい女性から粗暴な人格に変わります。解離性同一性障害という症状だそうですが、彼女(ら)の過去の体験が原因のようです。ある朝、沙羅であるはずの人格が玲奈の人格で目覚め、沙羅が現れなくなります。神谷隼人は、アメリカの医師の協力を得て、その医師は玲奈に催眠療法によって深い意識下の彼女(ら)と対話します。すると沙羅でも玲奈でもない第三の人格が覚醒し玲奈はパニックに。

「第三の人格サナエは、養護施設に終了される前の一時期に出現した人格なのでしょう。彼女が母親の名前を名乗っているのも、極端な虐待に対抗するために生まれたものだと思われます。沙羅は意識下で身を守り、サナエが生まれたのでしょう。養護施設に入ってからは、母親がいなくなったため、玲奈が出現した可能性があります」

解離性同一性障害に対し、サナエは投影性同一視と言われるそうです。

 

10年以上前に知人に薦められた“傭兵代理店”から、著者の渡辺裕之さんの作品を読むようになりました。どの作品も、主人公が心も身体も強く、かつ高潔なんです。また解離性同一性障害などの最先端でかつ私にとって馴染みのない(薄い)テーマをさらっと入れてくるので、ますます読みたくなります。