ゆれる | 800文字

ゆれる

僕は子どもの時から母に近所の同級生とやたらと比べられてきた。やれ、「○○君は学級委員になった」だとか、「テストで100点を取った」だとか。ひどいときには「△△君はバレンタインデーにチョコレートを10個もらった」なんてこともあった。最後は決まって「それに比べてお前は・・・もっとがんばろうね」で終わる。こんな励ましでがんばろうと思う子どもがいるわけもなく、おかげで僕は学級委員になったこともバレンタインデーにチョコレートをもらったこともない(もっともがんばる以前に容姿と性格に問題があったのが大きな理由だが)。たまたま、兄弟が妹と10歳下の弟なので、兄弟間で比較されることはあまりなかったが、歳の近い兄か弟がいたらと思うとぞっとすることがある。

遅ればせながら西川美和監督の「ゆれる」のDVDを借りてきて観た。昨年いろんなところですでに絶賛されているので、今さらだが、すさまじくよい映画だ。観終わった後に鳥肌がたった。今後生き抜いてゆく上で必要な「人生の秘密」と、誰もが考えていても言葉には出せない身を削られるような「痛い言葉」が満載な映画。

兄弟の生き方は、身近な存在だけに、自分が取りえなかった生き方を見せ付けられるので複雑な感情を持ってしまうのだと思う。自分が取り得たかもしれない可能性を取らなかった後悔とやっぱり取れなかっただろうというあきらめ。そして、ちょっぴり相手の生き方に対する優越感と嫉妬。このようなさまざまな複雑な感情を練りに練られた脚本とキャスティングで丁寧に描かれている。これまた、さまざまなところで絶賛されているとおり、香川照之さんの鬼気迫る演技がしみる。エンディングに一瞬見せる笑顔は、1万語のセリフよりも、いろんな感情を表現していると思う。観てから1週間以上経っているが今でもこの映画の余韻に浸っている。


ゆれる
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