図書館でのバイト | 800文字

図書館でのバイト

 4年生の時に大学の図書館でバイトしていた。夜4時から閉館の8時までの4時間勤務で相棒は60過ぎのおじいさん。本を書庫に戻す作業は基本的に相棒がやってくれるので、僕の仕事のメインは本の貸し出しと返却処理。本を読みながらできる楽な仕事だった。特権として閉架式の書庫に入れるのもうれしかった。卒論の資料を自分で探すことができるし、迷路のような書庫の間を歩き古い本を手に取ってみると少しどきどきとした。

 多くの人から同じような話を聞いたことがあるが、僕も図書館や本屋で妙に便意をもよおすことが多い。それも大きい方。僕の仮説は本の紙の匂いが、トイレットぺーパーの匂いとよく似ているので便意を刺激する、というものだが真偽のほどはよくわからない。

閉館時に戸締りチェックをするのだが、夜の図書館は少し怖い。室内の電気を消すと本が音を吸収するのかシーンとして、暗闇がより一層深く感じる。また、書庫というものは暗闇で見ると妙な威圧感がる。おまけに相棒は戦前生まれの無口な威圧感のあるタイプだったので、これらの緊張感とあいまって便意がより一層刺激された。

 村上春樹さんの作品にも、図書館がよく舞台として出てくる。「海辺のカフカ」では、カフカ少年は図書館で暮らしているし、「ふしぎな図書館」は図書館の中を冒険する話だ。書庫内の迷路のような構造や過去の知識の集積と言ったイメージが、作家には便意ではなく創作意欲を刺激するのかもしれない。

 バイトしているときには就職活動も行っていた。バブル崩壊後の結構厳しい時期だったし、何も考えずに競争率の高い企業ばかり受けていたので落ちまくっていた。月並みだが自分が世の中で必要とされていないような気がして、すごくみじめだった。たまに図書館にいくとそのときの記憶が刺激されて少し切なくなる。


村上 春樹
海辺のカフカ (上)
村上 春樹
海辺のカフカ (下)
村上 春樹, 佐々木 マキ
ふしぎな図書館