3歳の時の私。

母親の手を握り締めていた。


12歳、未来しかなくて、何にでも成れると頑なに信じられた。


14歳。

人に馬鹿にされたくなくて、強がり、突っ張って、周りが皆敵に見えた。


18歳、青春真っ盛り。

果てしない地平の向こう。

何もかもキラキラと輝いていた。


25歳。

結ばれるはずもない恋が辛かった。


30歳。

伴侶を得、新たな生活のために走り、授かったばかりの我が子をしっかりと抱きしめていた。


46歳。

闇の深淵に叩き落とされ、もがき苦しんだ人生の最大のピンチ即転換期。

山奥で一条の光に照らされた草花の美しさに気づいた。


52歳。

苦労と心配ばかりかけて来た母親を亡くし、人はこんなに悲しめるものかと、ずぶ濡れ重過ぎる心を弄んでいた。


還暦を越え、初孫と出会い、巡り巡る命の流れを感じ、止まることのない川の流れに身を任せてみることにした。


そして今。

過去も未来もない。

あるのは目の前の事、人、風景。

この一瞬しかないなら、じっくりと味わうしかない。


人生を、人の心を、己の心底に落とし込み、熟成させては、今この時に、あの人に、この人に、ただ届けたい。