滋賀県甲賀市は大原ダム湖のさらに奥、神大滝林道を遡り、冬季に登った那須ヶ原山の登山口近く、唐戸川の辺りにその野営地はある。



誰かが利用した形跡が残り、鈴鹿国定公園だから禁止されているはずの直火跡もあちこちに見受けられた。

永遠に自然に消えない炭火が昨日の雨に濡れて重々しかった。



河原が広がり、浅瀬の小川が流れ、なんとも言えないせせらぎの音といく種類もの野鳥の鳴き声。


風は暑くも冷たくもない、よく風の通る渓谷を爽やかに通り抜ける。


今日も一緒に来た高橋さんが気持ち良さげに背筋を伸ばした。



土山のフレンドマートで仕入れた食材と、新しく買ったホットサンドトースターで、おっさんの無骨な手料理を作る。





10枚切りの薄めの食パンにベーコンとトマト、とろけるチーズを乗せ、チリトマトソースをかけ、もう一枚のショパンで挟む。

仕上げに風味付と焦付きを防ぐためにオリーブオイルを垂らした。











よくキャンプや山登り動画などで散見したこのホットサンドイッチを一度自分で作ってみたかった。

まずまずの出来に高橋さんも舌鼓を打ってくれた。



食後辺りを散策すると、すぐ近くの川辺の樹木に包まれたところに入る手前、まるでクーラーの効いたような急にひんやりとした自然な風には驚いた。

川上から暗い森林と川面に冷却された涼風が吹き下ろされているのだろう。

これから暑い夏に最適な場所を見つけた。



「なんやあの変わった虫⁉️」

高橋さんが突然指差したアウトドアベッドの脚にクリスタルな緑色輝く個体。


メタモルフォーゼしたばかりのクマゼミではないか❓



4年間ほど架暗い土の中で過ごし、1週間ほど真夏の炎天下を飛び回り鳴き叫ぶ蝉。


生の象徴のような虫。

その短期間に水分しか取らずに己の生命を振り絞るように一気に燃え尽くす。


あらためてすごい虫だと思い、そのはじめに出会えたことに何か意味を感じた。


そのあと少し経つとどこにもその姿はなく、おそらく羽根が乾いて生の衝動に突き動かされように飛び立ったのだろう。


次の生命にバトンを渡す7日間への旅立ち。


同じように、今自分ができることをと、直火跡をできる限り自然に戻しておいた。