登山口駐車場で準備していると、郵便屋のおじさんの乗った赤バイクが急ハンドルでこちらにやって来て、「この車、昨日も白谷登山口に止まってたやろ」と言うので、「そうですよ。今日は墓谷山の方に登ろうと思って」と返すと、「好きやなぁ」と笑った。
そして「わし、◯◯会の者やけどな、横山岳は花が素晴らしい。ブナ林も見たか?墓谷山ルートもしっかり刈り込んであるさかい」と自慢げにおっしゃるので「ありがとうございます!楽しんで来ます」とお礼を言った。
地元の人の誇りであり、大切にされている山域であることが、おじさんの言動や仕草、表情が如実に物語っていた。






前日、横山岳下山時刻が自分にしては早かったので、墓谷山の登山口と、下山に使うエコチ谷登山口上部を下見しておいたので、いつもより安心感があったのは登山口を過ぎ、ごく普通のありふれた山道だった観音堂辺りまでのことだった。







ところがそこを過ぎてしばらく行くといきなり急登が始まったのだった。

聞いてないよ。

思わず呟きたくなった。
いやいや、自分の下調べが足りなかっただけのこと。
こ、これは鈴鹿の岳に次ぐほど。
しかも、それよりもずっと距離が長い。

しかし、幸いだったのは、郵便屋のおじさんが言ってた通り、下草の刈り込みだけではなく、全ルートにしっかりと虎ロープなどが設置されていたことだった。
岳の時、短いロープが所々に数えるほどしかなく、あとは木の根や草を持って登っていっても尚、ズルズル滑り落ちていく斜面だったことを思えば、岳より急斜面で長い道だったけれど、断然安全に登れた。

私を含む初級者でも充分登れると判断した。






上りだけではなく、比較的緩やかな稜線を過ぎてエコチ谷に降りていくと、ここからもゲキ下り。
上りよりは危険性が増すが、ここにもロープが備えられていて、慎重に降りていけば問題ないだろう。








いやはや、それにしても名もない百名山、中でも低山にこんな修行のような道が多い。
ま、自分の心持ち次第で天国にも地獄にもなるのだろうが。
どちらにしても、登頂とゴール時の達成感は半端ないけれどね。