町山智浩さんが2025年8月5日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『キムズビデオ』について話していました。
町山智浩 映画『キムズビデオ』2025.08.05
『キムズビデオ』(原題:Kim's Video)
劇場公開日:2025年8月8日
◆映画ファンの聖地となっていたニューヨークのレンタルビデオ店「キムズビデオ」の膨大なビデオコレクションの数奇な運命を追ったドキュメンタリー。
伝説のレア映画コレクションがシチリア島のサレーミという村に譲渡され、ずさんな管理体制の中、ホコリだらけの湿った所蔵庫でひっそりと息を潜めていたことを知った「キムズビデオ」元会員のデイヴィッド・レッドモンは、映画たちを救う荒唐無稽な奪還作戦を始動する。
【監督】アシュレイ・セイビン、デイヴィッド・レッドモン
0:20 「KNEECAP/ニーキャップ」の感想
6:11 「キムズビデオ」の解説 (8/8 公開)

(町山智浩)今日は今週8月8日金曜日に公開されるドキュメンタリー映画で『キムズビデオ』という映画を紹介します。これは前にね、『ロボット・ドリームズ』で主人公のワンちゃんがレンタルビデオを借りているシーンがあったんですけど、あのレンタルビデオ屋さんがキムズビデオっていうビデオ屋さんなんですよ。このキムズビデオって、その『ロボット・ドリームズ』っていう映画は1980年代終わりの頃の話だったんですけど。87年にニューヨークでオープンして2000年代……2008年まで続いた実在のレンタルビデオ屋さんです。それのドキュメンタリーなんですが、どうしてこのレンタルビデオ屋が有名かというとアメリカで一番有名なレンタルビデオだったんですよ。


僕、90年代にアメリカに初めて来て。ニューヨーク州のシラキュースっていうところに2年ぐらい住んでいて。しょっちゅうニューヨークに行ってたんですけど。その時、ニューヨークに行くとなんというかサブレットって言って下宿みたいにして1週間とか2週間とか住むんですけど。その時に通っていた店がこのキムズビデオなんですよ。で、なんでそんなに世界的に有名かっていうと、世界で一番のコレクション量だったんですよ。5万5000本って言われてました。狭いお店にビデオがびっしりでしたよ。で、置いてあるのは普通のビデオじゃないんです。どういうのがあるかっていうと、ちょっと音楽をお願いします。はい。
クレクレタコラOP [公式配信]

(町山智浩)これ、1973年だからもう50年前のテレビでやってた着ぐるみコメディなんですよ。これがもう本当にくだらない着ぐるみコメディなんですけど。タコがね、なんでも「くれ、くれ」って言うだけなんですけど。なんでもほしがるんですよ。で、このビデオが僕が行った時にVHSでこのキムズビデオに置いてあったんですよ。僕、「えっ、これアメリカで発売されたの?」と思って。で、パッケージをよく見たらちゃんと英語で全部、びっしり書いてあって。「ああ、発売されたんだな」と思ったんですけど。後から調べたら、そんなものはアメリカで発売されてないんですよ。『クレクレタコラ』って。
アメリカで発売されていない『クレクレタコラ』のビデオが置いてあった
(町山智浩)で、宇川直宏君という人がいまして。ネットメディアのDOMMUNEの主催者です。宇川くん、僕は結構古い友達で。彼もアメリカに行ってたんです。彼、僕より先にアメリカに住んでいたんですよ。しばらく。で、その話をしたら「あっ、そのビデオ、もしかして俺、作った」って言ってんですよ。彼ね、まずアメリカに引っ越す時、僕が手伝ったんですけど。1万ぐらいのレーザーディスクを船便でアメリカに運んだんですよ。で、それは全部日本の怪獣とか特撮なんですよ。で、それを持っていって友達にVHSのテープを作って配っていたんですよ。タダでで。で、パッケージも自分で作って。宇川くん、デザイナーだから。それがなぜかそのキムズビデオに置いてあったんです。
そういうビデオ屋さんなんですよ、キムズビデオは。だから、あるはずのないもの、存在しないはずの映画のビデオをレンタルしていたところなんです。キムズビデオって。でももともと、実はレンタルビデオっていうのが始まった時ってそういう感じで始まってるんですよ。もともとレンタルビデオっていうのは正式に存在しないものだったんですよ。最初、80年代の初めぐらいにVHSビデオテープっていうのにその映画が入ってるやつが発売されたんですね。それは1万円を超えてたんですよ。だからなかなか買うことがみんなできなかったんですが。それを買った人たちが好きなものを買った後、たとえばその人はパン屋さんだったらパン屋の横で。その人がランドリーを経営してたらコインランドリーで何本かそのビデオを置いて、お金を300円とか400円とかもらったらそれを貸し出すっていうことをやってたんですよ。レンタルビデオ屋ってそこから始まっているんですよ。世界中、どこでも。
みんな、個人で好きなビデオを買ってそれを貸してたんです。で、ものによっては自分でそのビデオを作ったりしてたんです。テレビから録ったものを。当時は全く無法地帯だったんですよ。で、それはそれが儲かるんだってことがわかって、いろんな業者がレンタル用のビデオってものを作って、それを売ってレンタルビデオ屋っていうものをビジネスとして始めた人がいたからで。このキムズビデオも最初はクリーニング屋さんの隅っこに何本かビデオテープが置いてあっただけだったんです。で、そこから一気に世界最大の5万5000本になったっていうのは、ニューヨークのその場所はセントマークプレイスというところで。若者が集まるところだったんですね。特にニューヨーク大学の学生が……ニューヨーク大学っていうのは映画学科の名門で。スパイク・リーとかマーティン・スコセッシとか、みんなそこを出てるんですよ。
で、世界中の映画監督になりたい人が集まってくるんで、やっぱり「だったらこれを置こうよ、これを置こうよ」ってことになってくるんですよ。だからその芸術映画とか実験映画とか、本来は商業的にソフトが出てないものが置かれるようになるんです。だんだんと。だから売ってない、あるはずのないものが置いてあって。そこで僕が見つけたのは、たとえば三島由紀夫監督の『憂国』っていう映画があったんですよ。『憂国』っていう映画は1966年に三島由紀夫が自主制作した映画で。三島由紀夫が切腹をどうしてもしたかったんで、自分で切腹の予行演習をするのをフィルムに撮ったっていう映画なんですね。


で、その後、本当に切腹されたので奥さんが封印しちゃったんですよ。封印というか、そのフィルムは三島由紀夫許自身が所有してたんでそれを全部焼却しちゃったんです。だから存在しなくなったんです。ところが、そこにあったんですよ。なぜかはわからないんですよ。それで、ネガフィルム自体は1995年に発見されていて、僕が見たのは1997年なんで。でも、ネガフィルムからは当時はビデオを作れないんで。今は作れますけど。だから誰かポジに焼いた人がいたんですよ。
あと、海外の映画祭に出展してるんで、そこから流出したのかもしれないですね。今は普通に商業発売されていますけど。DVDになって。ただ、その当時は存在しないものだったんですけど、そこにあったんです。だからすごいビデオ屋さんで。だからお客さんもみんな、映画監督とかそういうプロばっかり。で、この番組で僕が紹介した『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』という映画があって。その監督のショーン・プライス・ウィリアムズにインタビューしたら「俺、キムズビデオで働いてたよ」っつってましたよ。

『ロボット・ドリームズ』の監督もたしか、ちょっと働いていたんですよ。バイトしてて。というのは、そこで働けば好きな映画でいくらでも見れるから。だから『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』みたいな……あれもね、映画が見たいからレンタルビデオ屋で働く映画オタク男の子の話で。あの子が行きたがってたのはニューヨーク大学なんですよ。全部つながってくるんですけど。でね、いろんなバンドのミュージシャンとかも働いていてね。ノイズミュージックでね、ブラック・ダイスっていうバンドがあるんですけど。彼らも働いてたりね。あとストロークスっていうパンクバンドがあるんですけど、そこのギターの人も働いていたり。パンクミュージシャンとかもいっぱい出入りしてたんですよ。どうしてかっていうと、いろんなバンドのライブビデオが置いてあったんですよ。
ライブビデオも豊富に置いてある
(町山智浩)そのライブビデオはみんなね、ジャケとかがコピーで作ってあるやつ。あってはならないものなんですよ。すごいっぱい……だから日本のパンクバンドともいっぱいありましたよ。まあ、そういうところでね。僕にとっては天国みたいなところだったんですけど。で、それに憧れた人がこのドキュメンタリーを作りました。彼は若くて、田舎の出身だったんでそのニューヨークにキムズビデオっていうすごいところがあるらしいと憧れてニューヨークに来てみたら、とっくの昔にもうなくなっていたんですよ。どうしてかっていうと、まあ著作権侵害をしているわけですよね。この店はね。で、FBIの手入れを食らいまして、逮捕者まで出て。で、やっぱり店を潰さなきゃならないということになって。
これ、もともとビデオ屋さんを始めたのはキムさんという韓国系の人が始めていて。彼自身がランドリーかなんか、やってたのかな? そこにビデオを置き始めたことから始まったんですよ。彼自身も映画作家だったんですよ。アマチュアの。キムさんも。だからどうしても、これだけの5万5000本ものコレクションを残したいっていうことで「誰か、保存してくれないか? 非常に貴重なものもあるぞ」ってやったら、それがなんとはるか遠く、イタリアのシチリア島の人口1万人しかいないサレーミというちっちゃな町が「引き取る」って言ったんですよ。
「町おこしをしたい」っていうことで引き取るというニュースだけが流れて。それでその後、どうなったかはわからないんですね。で、このキムズビデオに憧れた監督がね、「一体どうなったんだ?」ってことを探すというドキュメンタリーなんですよ。これ。で、どこに行ったのか?っていうことでまずキムさんに会いに韓国に行ったりね。彼、韓国に住んでたんで。あと、そのシチリアのサレーミという町にも行くんですよ。で、どこにそのキムズビデオがあるの?って探すんですけど……まあそういうね、「この映画、どこに行くの?」っていうのが全然わからなくて。行く方向がわからない。
最初は普通に、さっき言ったみたいにキムズビデオがいかにニューヨークとかアメリカのカルチャーにとって大事だったかということを前、そこで働いていた店員さんとかにインタビューしたり、映画評論家にインタビューしたりして検証していくっていう内容が前半なんですけれども。後半はキムズビデオの5万本はどこに行った?っていう探偵物みたいになっていって。これが面白いんですけど。で、その真相はあっと驚く、イタリアの国政とも絡む政治的陰謀で。背景にそういったものがあったんですね。ビデオなんですけど。
で、これね、この監督はドキュメンタリー作家ではあるんですけど、映画オタクだから。なんかいろんなことがあると「ああ、あの映画みたいだな。これ、なんかあの映画みたいだ!」とかずっと言ってるんですけど。最初、シチリアって聞いて「おお、すげえ。『ゴッドファーザー』じゃん! マフィアの本場だよね!」とかって言ってるんですけど……本当にマフィアが絡んでたんですね。
キムズビデオにシチリアのマフィアが絡む
(町山智浩)これ、ドキュメンタリーなんですよ。本当にあった話ですからね。これ、面白いですよ。どこに話が行くのか、全然わかんないんですよ。作っている方もわかってないからね。どうなっていくのか。でもこれ、映画としてちゃんと見事に収まります。素晴らしいです。
やっぱり物が大量にあるいうのは……もうテープとかDVDとか物質があることは何にも代えがたいことなんですけども。ただ、もう今はどんどんそれがなくなっていって。今、作ってるのってソニーぐらいじゃないですか。世界で。で、すべて電子的データになってしまっていて。映画本体ももうデジタルで作っているものが多いんで、物質としての映画は存在しなくなってるんですよ。今。フィルムで撮っているもの以外。電気的な信号でしかないんですよ。
で、ハードディスクとかに入ってない場合は……まあハードディスクに入っていてもそうですけども。まあ、消滅しますよ。何かがあったら。天変地異とかね、わからないんですけどね要するにもう物質としての映画は存在しないんで。だからこれはすごく、その物質としての映画っていうものを持てた時代っていうのがあって。それが1980年代から2020年ぐらいまでの非常に非常に短い、40年間だけ映画好きな人が物質としての映画を所有できた時代だったんですよ。
これはね、音楽もそうなりつつありありますね。本もそうです。本も本という物質はおそらくなくなっていきますよ。本は粘っている方ですけど……本なんて古代ギリシャからずっとあるんですよ。それが今、なくなりつつあるんです。
![洋画[キムズビデオ] : KATSUのblog](https://msp.c.yimg.jp/images/v2/FUTi93tXq405grZVGgDqG_k-iHZC_JyVxntw6Yk-H_tw2-PWM091JgSJX0ByW_z1WVLk76EQhF2zaHkBWN7HZFJXJsZKevbSzgXPHcVJuuxwPdGBO40UbaLzx5qKU9PssDfxGtoYyHo2w_QbhIsXj22Lp9OA0WM79ztRv9RzyzHXjWPjmI28SAEQ47eCr6VCsLiqPVOL2uVowbvzlaq9wTTYCIG2St46SDPpBLRZETqEIwwBFPXRcHYaVPvfo0OQ/7ad6906b.jpg?errorImage=false)
すごい時代ですよ。昔はそれがあったから……たとえばCDとかを出すと、人々がそれを買ったお金がちゃんとミューシャンとかに入ったけど。今はそれ、ないから。もうコンサート以外でお金を集める方法がミュージシャンもなくなっちゃってね。もう本当に大変で。もともと俺、音楽雑誌で働き始めて映画評論家になったんですけど。雑誌も音楽も映画も消えつつあるってどうしたらいいの?って思いますよ(笑)。俺の生きてるうちにその3つとも文化が滅びつつあるって、どうしようかと思いますけど。本当にね。まあ、そういう意味でいろいろバカバカしい映画なんですけど。ちょっとホロッとね、泣いちゃいましたね。
映画『キムズビデオ』予告編
映画「キムズビデオ」予告編
映画「キムズビデオ」
2025年8月8日 ヒューマントラストシネマ有楽町、ホワイト シネクイントほか全国順次公開
公式サイト https://kims-video.com/
公式X、https://x.com/usaginoie_film
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サンダンス映画祭ワールドプレミア、テルライド映画祭、トライベッカ映画祭をはじめ
61の映画祭で上映、7つの賞を受賞
世界最高のレアビデオ・コレクションの数奇な運命を追うドキュメンタリー 『キムズビデオ』
ビデオテープ2025年問題の今年、ついに日本上陸!
1980年代からアメリカ・ニューヨークのイーストビレッジ(ニューヨークのボヘミアと呼ばれ、カウンターカルチャー運動の中心地)に実在したレンタルビデオショップ「キムズビデオ」の55,000本にも上る唯⼀無⼆なレアビデオ・コレクションの⾏⽅を追ったドキュメンタリー映画『キムズビデオ』。
ワールドプレミアとなったサンダンス映画祭では「遊び⼼がハンパない」「常軌を逸したドキュメンタリー」と映画ファンたちから熱狂的な⽀持を受けて⼤きな話題になり、その後トライベッカ映画祭など計61の映画祭で上映され、シッチェス映画祭・ドキュメンタリー部⾨の最優秀作品賞をはじめ、計7つの賞を受賞するなど、⼀昨年から世界中の映画祭を席巻してきた『キムズビデオ』が、ついに⽇本で公開される。
1987年、韓国系移⺠のキム・ヨンマンがニューヨークに開業したキムズビデオは、世界中から収集された映像作品が取り揃えられていた。⼊⼿ルートも、世界各地の映画祭や各国⼤使館経由など、⼤⼿レンタルビデオショップには真似のできない独⾃のものだった。その世界最⾼のビデオ・コレクションを⽬当てに、シネフィルたちが連⽇通い詰め、会員数は25万⼈に膨れ上がった。その会員の中には、若かりし頃のコーエン兄弟もおり、延滞⾦を600ドル滞納している逸話が本作に登場する。また、トッド・フィリップス(『ジョーカー』シリーズ、『ハングオーバー』シリーズ)や、アレックス・ロス・ペリー(『ハースメル』)、ショーン・プライス・ウィリアムズ(『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』)ら、今や名を馳せる監督たちがキムズビデオの店員として働いていた。さらに、大ヒットした『ロボット・ドリームズ』でもドッグとロボットがキムズビデオでレンタルした『オズの魔法使い』を鑑賞するシーンがあり、この映画の監督であるパブロ・ベルヘルもニューヨークに住んでいた頃、毎日のように通っていたというエピソードも存在し、後の映画業界の発展に貢献したと⾔っても過⾔ではない、まさに “映画の理想郷” だった。(※1)
※ソニーピクチャーズUSが発表したダーレン・アロノフスキー(「ブラック・スワン」「ザ・ホエール」)の新作「CAUGHT STEALING」(8月29日全米公開/NYが舞台のダークコメディ)の予告編にも キムズビデオの看板が確認できます。(日本公開予定は、今のところ確認できず。)
⼀⽅、このコレクションの中には、本来この国では⾒られない海賊版も多く、それがまた会員たちを興奮させていたのだが、その中には当時ほとんどソフト化されていなかったジャン=リュック・ゴダールの『映画史』をレンタルしていたことで、ゴダールからレンタル差し⽌めの通告が届き、映画の権利元の訴えを受けたFBIに押収されるなど、多くの伝説が語り継がれる“シネフィルの聖地”でもあった。
だが、ビデオレンタル時代の終焉とともに、2008年に惜しまれつつ閉店。経営者のキム・ヨンマンは、価値ある膨大なコレクションをイタリアのシチリア島にあるサレーミ市に展示を条件に譲渡することを決意、コレクションは長旅を終えシチリア島へ到着した。
キムズビデオの元会員だったデイヴィッド・レッドモン(本作監督)は、展示されている様子もないのでコレクション見たさに現地を訪れると、活用されずホコリだらけの湿った倉庫でひっそりと息を潜める映画たちを発見。彼は倉庫から助けを求める映画たちの“声”にかき立てられ、彼らを救うべく、警察署長や当時の市長への取材、その陰で暗躍するマフィアへと追跡を続ける。
そしてついにデイヴィッドは、映画たちを救うために荒唐無稽な奪還作戦を決意した。
その作戦とはカーニバルの夜に映画の撮影だと偽り、アルフレッド・ヒッチコックやチャールズ・チャップリン、ジャン=リュック・ゴダール、イングマール・ベルイマン、ジャッキー・チェンといった映画の“精霊”たちを召喚し、倉庫から映画たちを解放するという前代未聞の計画だった。 (※2)
前半はドキュメンタリーだが、途中からはふたりの監督と映画の“精霊”たちによって、ある種の意図的な創作物語へと発展していく。
映画は「ゴッドファーザー」「ブルーベルベット」など56作品の世界のあらゆる映画の映像をコラージュし、未だかつて見たことのないタイプの映画愛に満ち溢れた傑作となった。
⽇本でもSHIBUYA TSUTAYAが昨年4⽉にリニューアルし、今となってはあの膨⼤な映像コレクションを⾒ることはできない。また、今年「ビデオテープ2025年問題」が起きると囁かれており、映像メディアの価値を再考させる本作の公開は、まさに絶好のタイミングと⾔える。(※3)
※1『ロボット・ドリームズ』のエピソードは、日本版公式パンフレットより引用
※2 “精霊”出演の巨匠たち
アルフレッド・ヒッチコック、アニエス・ヴァルダ、ジャン=リュック・ゴダール、チャーリー・チャップリン、マヤ・デレン、クレール・ドニ、ジム・ジャームッシュ、ヴェルナー・ヘルツォーク、ジャッキー・チェン、コーエン兄弟、デイヴィッド・リンチ ほか
※3 ビデオテープ2025年問題とは、VHSテープなどの磁気テープの劣化や再生機器の市場消失・生産終了により、2025年以降に貴重な映像が見られなくなる可能性がある問題。ユネスコ(国連教育科学文化機関)も「マグネティック・テープ・アラート」と題し、
2025年までにデジタル化をしないと、映像が失われる可能性があると警告を発しており、大切な映像資産を失わないためにも、映像のデジタル化などの対策が急務となっている。
出演 :
キム・ヨンマン (主人公)
ショーン・プライス・ウィリアムズ (キムズビデオ元従業員)
アレックス・ロス・ペリー (キムズビデオ元従業員)
ディエゴ・ムラーカ (この地区の自治体の警察署長)
エンリコ・ティロッタ (キムズビデオの管理人/ミュージシャン)
ヴィットリオ・ズカルビ (かつてのサレーミ市長 2008~2012)
ジュゼッペ・ジャンマリナーロ (マフィアとの繋がりが疑われる謎の人物)
レオパルド・ファルコ (マフィア撲滅委員会 会長)
ドミニコ・ヴェヌーティ (サレーミ市長)
監督・編集 : アシュレイ・セイビン、デイヴィッド・レッドモン
撮影:デイヴィッド・レッドモン
音楽:エンリコ・ティロッタ
録音:デイヴィッド・レッドモン、マチュー・デボルド
アメリカ/2023年/英語、韓国語、イタリア語/88分/カラー/16:9
提供:ミュート、ラビットハウス 配給:ラビットハウス、ミュート
© Carnivalesque Films 2023