町山智浩『ベイビーガール』『BETTER MAN/ベター・マン』を語る | 七梟のブログ

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町山智浩さんが2025年3月25日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『ベイビーガール』『BETTER MAN/ベター・マン』について話していました。

 

町山智浩 映画『ベイビーガール』『BETTER MAN/ベター・マン』2025.03.25

 

 

『ベイビーガール』(原題:Babygirl)
劇場公開日:2025年3月28日
◆ニコール・キッドマンが主演を務め、すべてを手に入れたはずの女性CEOが満たされない欲望をインターンの青年に暴かれていく姿をスリリングに描いたエロティックスリラー。
【監督】ハリナ・ライン(BODIES BODIES BODIES)
【主演】ニコール・キッドマン、ハリス・ディキンソン、アントニオ・バンデラス

『BETTER MAN/ベター・マン』(原題:Better Man)
劇場公開日:2025年3月28日
◆「グレイテスト・ショーマン」のマイケル・グレイシー監督が、イギリスの世界的ポップ歌手ロビー・ウィリアムズの波乱に満ちた人生を、斬新な映像表現でミュージカル映画化。
主人公ロビー・ウィリアムズを猿の姿で表現するという奇想天外なアイデアと幻想的な世界観、そして圧巻のミュージカルシーンでダイナミックに描きだす。
【監督】マイケル・グレイシー(グレイテスト・ショーマン、ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー)
【主演】ロビー・ウィリアムズ、ジョンノ・デイヴィス、スティーヴ・ペンバートン

 

 

2:15 「教皇選挙」の感想

 

5:45 「ベイビーガール」の解説

 

14:07 アメリカでの旧統一教会

 

14:55 「BETTER MAN/ベター・マン」の解説

 

映画『ベイビーガール』公式|2025年3月28日(金)公開

(町山智浩)今日はですね、今週公開になる2本の映画を紹介するんですが。1本の映画は犬についての映画で、もう1本の映画は猿についての映画なんですす。犬猿の仲の映画を紹介します。まず1本目、『ベイビーガール』という映画です。これね、音楽がすごいいい映画なんですけど。『ベイビーガール』というのはね、あのワンちゃんをね、「いい子、いい子」ってする時の言葉です。『ベイビーガール』って赤ちゃんの女の子のことですけど。英語ではその女の子のワンちゃんに対しては「ベイビーガール、ベイビーガール」って言うんですよ。「いい子、いい子」って。で、男の子に対し「グッドボーイ」っていうんですよ。
ベイビーガール : 作品情報・キャスト・あらすじ・動画 - 映画.com
ところがこの『ベイビーガール』っていう映画はニコールキットマン扮する……彼女は今、57歳ですけれども。もうベテランの大企業のCEOの話なんですよ。ところがその彼女がですね、要するに何もかも手に入れて、大金持ちで企業のトップにいる彼女が、新入社員というか、新入社員ですらない研修生の若いお兄ちゃんに犬として調教されるっていう話なんですよ。

ベイビーガール : 作品情報・キャスト・あらすじ・動画 - 映画.com

 

研修生に調教されるCEO

 

 

(町山智浩)昼から大丈夫か?っていう話なんで、あんまり深く話せません。お昼なんで。ただね、これすごい映画で内容はびっくりしました。で、そのニコール・キッドマンさんは57歳で、非常に美しくて、頑張ってるんですが。その頑張りをモロに見せちゃうんですよ。いきなりボトックスとか、注射してるの。ニコール・キッドマンってほら、世間的には「いっぱい顔、いじってるんだろう?」って散々、言われてるじゃないですか。これ、「はい、いじってますよ。悪かったですね?」っていう映画なんですよ。
彫刻のようなコルセットでヴェネツィア映画祭に登場! ニコール ...
「世間が私に若さを求めてるから、仕方なくやってんのよ」みたいなところもあると思うんですけど。そうすると、このCEOがエレベーターに乗ってるとその若いサミュエルという研修生が乗ってくるんですね。で、「あれ? 社長、顔に青黒い何か、ついてますね?」って言うんですよ。ボトックスって針で打つんで、内部で内出血をして青黒い痣が残っちゃうんですよね。まあ、それをファンデで消してるんですけど、それを見抜いて「社長、ボトックス、打ちましたね?」って言うんですよ。研修生が(笑)。
不適切ですが、それが何か?「ベイビーガール」第97回アカデミー ...
これ、ハリス・ディキンソンっていうイケメンの俳優さんが演じているサミュエルっていう研修生がもう、社長にタメ口を聞きまくるんですよ。最初。で、そのうちに彼女が逆にその研修生に……最初は怒ってるんですよ? 「なんて失礼な!」って。それが、コントロールされていっちゃうんですよ。精神的に。で、女社長は旦那が結構有名なニューヨークの劇作家で。

 

ただ、夫婦間の間にどうも性的な満足がないんですね。ちょっと大人の話をしますよ。はい。お互い還暦前後、アラ還なんですけれども。やっぱりそれがないと……子供も大きいですけど、夫婦仲はやっぱりうまくいかなくなってるんですよ。そこにこのサミュエルというね、セクシーの塊のような男が入ってくるという話で。エロい映画かな?って思うじゃないですか。これ、官能的な映画なんですけど後半、ちょっと驚くような展開を見せてくるんですよ。

 

これは言えないですが。さっき、『教皇選挙』の話をしてましたけど。ちょっと宗教的な感じです。これ以上は言えません。『教皇選挙』のラストと絡んでくるから、もう言えないんだ。これ、いい話になってるんですよ。このドロドロな感じで……だってこれ、彼女がね、「じゃあ、私を抱きなさい!」ってその研修生に言うんですよ。そうするとその研修生は「わかりました。じゃあ、そこにあなた、四つん這いになってください」「えっ!?」「社長、あんた犬になるんですよ」って言うんですよ。すごい展開でしょう?

もう話にくくてもめちゃくちゃ困ってますが。これね、女性を調教するって話だからちょっと差別的なのかなと思っちゃうんですけども。監督で脚本はハリナ・ラインという女性なんですよ。で、制作もニコール・キッドマンで。彼女は今、若手の女性監督に次々と映画を作らせてるんです。プロデューサーとして。で、ニコール・キッドマンは「女性が監督すると会社の上の方のトップはみんな、男ばっかりだからなかなか企画は通らない。だから私が企画を通してるんだ」って言ってるんですよ。

映画『ベイビーガール』公式 (@babygirlmoviejp) / X

 

ニコール・キッドマンがプロデューサーとして企画を通す

 

映画『ベイビーガール』公式|2025年3月28日(金)公開

 

(町山智浩)そういう点でもね、映画の内容と非常にだぶってくるんですよ。つまりニコール・キッドマンはCEOだけども、その裏には出資者がいるんですよ。じじいどもが。もう嫌らしいじじいどもがいっぱいいるんですけど、その中で頑張ってるのがニコール・キッドマンなんで。その彼女が……っていう話なんですけど。でね、62歳の僕としてはね、このアントニオ・バンデラスが奥さんを満足させることができないダメ夫役っていうのが、きつかった! バンデラスってね、80年代はね、世界一のセクシースターだったんです。世界一セクシーな男に選ばれていたし。男性用化粧品とか、モデルしまくっていた人なんですよ。アントニオ・バンデラス。セクシーの塊だったんですよ。そんな彼がね、もうダメおっさんをやってるっていうのは僕の世代にとっては大ショックですよ!
アントニオ・バンデラス(64歳)は、ヴェネツィア映画祭の ...
それまでほとんど映画出ると必ず上半身、裸になってましたからね(笑)。でも今はねもう渋いおっさんになってるんですが。これね、こんな話ですけども、いい話に落ちるんですよ?(笑)。これね、ぜひね、ご夫婦でも見に行っていただきたいと思います。ご夫婦で行ったり、カップルで行くといろいろな学びがあると思います。はい。

 

 

『ベイビーガール』予告

 

3.28公開│映画『ベイビーガール』第二弾予告【製作A24×主演ニコール・キッドマン 第81回 ヴェネチア国際映画祭 最優秀女優賞受賞作】

 

 

A24史上、“最高に挑発的!”★★★TIME

🥛第81回ヴェネチア国際映画祭 女優賞受賞
🥛第96回ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 最優秀主演女優賞受賞
🥛第82回ゴールデングローブ賞 最優秀女優賞ノミネート
🥛TIME誌が選ぶ2024年ベスト映画 第1位
 

美しきCEOの欲望が、年下のインターンとの出会いで暴かれてゆく
その“手綱”は彼女が握っているはずだった―
燃え上がる危険なパワーゲームの行方はー

映画界の最前線を駆け抜けるスタジオA24とオスカー俳優が、まさかの企画で手を組んだ。完璧なCEOが若きインターンに秘めた欲望を嗅ぎ分けられ、力関係が逆転、次第に深みにはまっていく様を、行先不明のスリリングな展開と大胆不敵な官能で描いた、“最高に挑発的!”(TIME)な1本が、日本を熱く高ぶらせる。
 物語の舞台は、ファッションとカルチャーの最先端をいく街、ニューヨーク。ロミーはCEOとして事業を興し、大成功を収めていた。私生活でも舞台演出家の優しい夫ジェイコブと2人の娘と、誰もが憧れる暮らしを送っている。ある時、ロミーは一人のインターンから目が離せなくなる。彼の名はサミュエル、ロミーの中に眠る欲望を見抜き、きわどい挑発を仕掛けてくるのだ。行き過ぎた駆け引きをやめさせるためにサミュエルに会いに行ったはずが、逆に主導権を握られしまい…
燃え上がる危険なパワーゲームの行方はー


監督/脚本:ハリナ・ライン
キャスト:ニコール・キッドマン、ハリス・ディキンソン
     アントニオ・バンデラス、ソフィー・ワイルド
COPYRIGHT: © 2024 MISS GABLER RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

公式HP:https://happinet-phantom.com/babygirl/

 

映画『BETTER MAN/ベター・マン』公式サイト

 

(町山智浩)ではもう1本の猿の映画、『BETTER MAN/ベター・マン』ちょっと一気に紹介します。

(曲が流れる)

(町山智浩)これ、ミュージカル映画ですね。このあいだもボブ・ディランの『名もなき者』が公開されたんですけど。今、世界的なミュージシャンの伝記映画が次々と作られてるんですが、これもそうで。イギリスの2000年代の最高のミュージシャンのロビー・ウィリアムズの伝記映画なんですよ。ただ、ロビー・ウィリアムズって日本ではそれほど知られてないかな?
ロビー・ウィリアムズ - Wikipedia
でも、この映画『BETTER MAN/ベター・マン』は知らなくても、めちゃくちゃ楽しめる。まずね、曲がいいんですよ。これは全部、ロビー・ウィリアムズが書いてる曲なんですけど。本当にバラードからロックから、何から何まで全ジャンルやっていてですね、最高に曲がいいんですけど。もうひとつは監督がこれ、マイケル・グレイシーっていう人なんですが。これ、日本でもね、カルト的なヒットをした『グレイテスト・ショーマン』というミュージカル映画の監督です。

グレイテスト・ショーマン|映画/ブルーレイ・DVD・デジタル配信 ...

あれはね、ヒュー・ジャックマンが19世紀の見世物小屋の見世物師の役をやったんですよ。P・T・バーナムという。で、見世物師ですからいろんな体をされた人たちがいっぱい出てくるんですが。その人たちが「これが私」っていう歌うところが非常に感動的なんですね。『グレイテスト・ショーマン』は。で、こっちの主役のロビー・ウィリアムズはいろんな体っていうか、チンパンジーです。主人公がチンパンジーなんですよ。
BETTER MAN ベター・マン 特集: 解説・見どころ/感動を超えて ...
これね、映画を見ていて1回もロビー・ウィリアムズの顔は出てきません。伝記映画なのに、出てきません。ずっとチンパンジーです。なぜか?っていうと、そこに写真があると思うんですが。5人集まっているテイク・ザットっていう彼がいたアイドルグループの一番左側の彼ですね。猿顔ですよね?
推しメンは誰? ボーイズ・グループのパイオニア=テイク ...
まあ、イケメンではあるんですけど本人は自分のことを猿だと思っていたらしいんですよ。「俺は所詮、猿だぜ」みたいなことをやたらと言っていて。「だったら猿でやろう」っていうことで、チンパンジーを彼に置き換えて。CGIで作ってるんですが。モーションキャプチャーで撮って、人が演じてるのを猿に置き換えてるんですが。で、猿で彼の人生を映画化したという非常に奇妙な伝記映画なんですね。

BETTER MAN/ベター・マン|CINEMORE(シネモア)

でね、これはなぜそういう風に彼は猿でやらなければならなかったのか?っていうと、彼にはすごいコンプレックスがあって。もう世界的なミュージシャンとして、それこそ今の歌が流れてるとこはお客さんが15万人いるところでやってるんですよ。地平線の彼方まで人がいるようなところでやっているのに「所詮、俺は見世物の猿だよ」みたいなコンプレックスから彼は離れられなかったんですよ。

 

 

なぜ自分を猿だと思うようになったのか?

 

 

(町山智浩)で、それはどうしてかっていうとお父さんが……この人、ミュージシャンを目指そうとした理由っていうのはお父さんが元々、ミュージシャンというか、歌手志望だったんですけど。で、酒場を経営しながらマイクを掴んでお客さんにカラオケを歌わせて。自分は司会をして、時々自分も歌うっていうような商売をしていた人なんですね。田舎の町で。大歌手になる夢が破れてね。

ただ、それをちっちゃいから主人公のロビー・ウィリアムズはね、わからなかったわけですよ。だからお父さんの真似をして、歌う真似とかしてたんですよ。ロビー・ウィリアムズは。まだ3歳とか、そのぐらいの時にね。そしたらお父さんからいきなりね、「お前な、歌手になるっていうのはそんなに簡単なことじゃねえんだよ。才能がなきゃ、お前はただの人だ」って言われるんですよ。で、それはお父さんが自分が成功しなかったから、なんというかその言い訳みたいな感じで。「大変だったんだよ」っていう意味で言ったんだと思うんですよ。

ただ、子供はちっちゃいから、わかんないから。「お前はダメだ」って言われたと思っちゃったんですよ。で、しかもこのお父ちゃんは家で出ちゃいます。家族を捨てて家を出ちゃうんで。「俺がダメだから、お父ちゃんが出ていっちゃった」って思っちゃうんですよ。このロビー・ウィリアムズは。で、「何が何でも芸能人になる」っていうことで。今、かかっている曲なんすけどテイク・ザットっていうアイドルグループで、そこでも世界的なスターになるんですよ。

 

でも、それでもね、「自分は所詮、猿なんだ」っていう気持ちから逃れられないんですよ。トラウマなんですね。子供の頃に父親から「ダメだ」って言われたということで。で、酒とドラッグに溺れてって、どんどん大変なことになって。コンサートに行けないとかっていうレベルじゃなくて、もうそこら中で問題を起こして、大問題歌手になっていっちゃうんですけども。で、好きな女性もできるんですが、それも非常に荒れ狂ってくうちにその関係も壊れちゃって。それでどん底に落ちてくんですね。このロビー・ウィリアムズが。

で、バンドをクビになっちゃったから、目の前が真っ暗になって。それでソロ歌手になろうとして曲をちゃんと、歌詞を書き始めて。で、その時に作曲を一緒にする相棒から「いや、そんなチャラい歌はいいんだよ。心の底から思ってることを歌わなければ絶対に人は動いてくれないよ」って言われて。それで今、流れてるような歌を作り始めるんですよ。で、この歌が『Better Man』という主題歌なんですけども。「もっといい人になりたいんだ!」っていう歌なんですよ。

 

Better Man

 

 

(町山智浩)『ベターマン』っていうのを猿が言ってるわけだから、すごく意味があるでしょう? 「進化して立派な人間になりたいんだ」っていう。あのね、世界中の人に認められてもやっぱり父親に幼いころ、否定されちゃうとずっとそこの部分が空洞になっちゃって。それが埋められないんですね。大金持ちで、大邸宅に住んで、ありとあらゆるものが手に入って、みんなから天才とか言われても、やっぱりダメなんですよ。子供の頃、親に否定されちゃうと。これね、ロビー・ウィリアムズって人に全然興味なくて知らない人でも、学びがあります。

 

 

親は子供を全肯定するべき

 

 

(町山智浩)やっぱり親はね、子供をもう全肯定でいくしかないよ、これ。子供は覚えているんですよ。親は言ったことを覚えてないと思うけど。子供は忘れないから。ちょっとでも自分の人生とかを反映させて「世の中ってのは厳しいんだよ」みたいなことを言って否定すると、それがその後、ずっと尾を引くんですよ。子供には。そういうことでも非常に、お子さんを持とうという人とか、お子さんを持ってる方とかはぜひこの『BETTER MAN/ベター・マン』を見てください。子供を意味なく叱っちゃダメだっていうのを学んでいただきたいと思います。その子が他の人にも迷惑をかけるしね。本当に気をつけてほしいと思いました。はい。僕も気をつけてました。はい(笑)。

 

①BETTER MAN ベター・マン | 映画チラシ・フライヤー ...

映画『BETTER MAN/ベター・マン』本予告
 

映画『BETTER MAN/ベター・マン』本予告

 

 


『グレイテスト・ショーマン』マイケル・グレイシー監督 最新作
“世界的ポップスター=サル”
奇想天外な映像表現で観る者の人生を変える
感動のミュージカル・エンターテインメントの幕開け!

映画『BETTER MAN/ベター・マン』
2025年3月28日(金) 全国ロードショー
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<監督>
マイケル・グレイシー(『グレイテスト・ショーマン』)

<出演>
ロビー・ウィリアムス

<原題>
『BETTER MAN』

 

BETTER MAN/ベター・マン』(感想)|内本順一