(町山智浩)今日はですね、今週に公開される映画を紹介します。『東京カウボーイ』という映画です。
映画『東京カウボーイ』主題歌MV
(町山智浩)はい。もう本当に西部劇風のね、ウエスタン調の主題歌ですけど。これは東京で働いているサラリーマンの井浦新さんが、ひょんなことから大西部のモンタナ州の牧場でカウボーイをしなきゃなんなくなるという話です。
(石山蓮華)すごい話ですね!
(でか美ちゃん)ひょんなこと……ひょんすぎる!
(町山智浩)ひょんすぎるんですけども。これ、主演が井浦新さんなんですけど、完全なアメリカ映画です。普通、こういう映画って日本がお金を出してたり、日本のスタッフが作るじゃないですか。全然違うんですよ。アメリカのスタッフで、監督もそうなんですけれども。アメリカのプロデューサーが作った日本人主演のアメリカ映画というか、西部劇です。で、これね、井浦新さんは日本で物産会社みたいなところのサラリーマンなんですけれども。世界各地のいろんなビジネスにお金を出して、まあM&Aですね。それに出資するっていう形で全部、取り込んじゃう仕事をしてるんですよ。これ、前半の方でですね、日本で老舗の会社を買い取るところから始まるんですけど。日本だけに限らず、今、世界中の老舗の昔からやっている、いろんなブランド……それこそ和菓子だったり、パンだったりから、高級なバッグとかね。そういったブランドまでみんな今、実はコングロマリットとか、大企業の傘下に入っちゃっているんですよ。
『ハウス・オブ・グッチ』という映画がありましたけどね。あれなんか、典型的ですよね。ずっと老舗の職人が作ってた革細工のファッションメーカーだったグッチが結局、コングロマリットに乗っ取られて。銀行とか投資家によってコントロールされて、完全にブランドとして崩壊していくっていう映画だったんですけど。あれ、見ました?
(石山蓮華)私は見てないですね。
(町山智浩)あれ、すごいですよ。グッチが結局、大企業によって乗っ取られて、ブランドとしての魅力を失っていくっていうか映画なんですけど。それに出ている俳優のサルマ・ハエックさんはそのグッチを乗っ取った会社の社長の奥さんです。
(石山蓮華)そんな、映画の外でもいろいろ起こってるんですね?
(町山智浩)そう。どうしてこの人が出たのか、わからないっていうね(笑)。
(でか美ちゃん)思うところがあって出たとしか、思えないですよね。
(町山智浩)「なんでなん?」って思いましたけども。
(石山蓮華)よくキャスティングできましたね。
(町山智浩)謎ですね。で、奥さんが出てるから、グッチのブランドをそのまま作品中に出していいんですよ。でも決して、よくは使ってないっていうすごい映画だったんすけど。そういう形で、いろんな老舗とか、いろんな昔からやってる商売とか。日本だと牧場とかが実は大企業がお金を出してたりするんですよね。レストランがいつの間にか、知らない間に裏に大企業がついていたりするじゃないですか。
(でか美ちゃん)ああ、なんか変にコンサルを感じるなと思ったら、そうなってる時、ありますね。
(町山智浩)そうそう。そういうことをやってるのが井浦さんなんですけど。その婚約者を演じるのが藤谷文子さんですね。藤谷文子さん、僕は友達なんですよ。一緒にずっとね、テレビをやってるんですけど。『町山智浩のアメリカの今を知るTV』っていうテレビ番組に一緒に出てくれている共演者なんですけど。彼女、昔は子役として日本だと三井のリハウスのPRで三井のリハウスガールだった人ですけど。その後、平成ガメラ三部作でヒロインを演じて。その後、20歳で脚本家になって。庵野秀明監督の映画『式日』の主演・脚本をやっいましたね。あれ、藤谷さん自身の個人の物語なんですよ。
(石山蓮華)ああ、そうなんだ!
町山智浩さんが2024年6月4日放送のTBSラジオ『こねくと』で映画『東京カウボーイ』について話していました。
町山智浩 映画『東京カウボーイ』2024.06.04
『東京カウボーイ』(原題:Tokyo Cowboy)
劇場公開日:2024年6月7日
◆井浦新がアメリカ映画で初主演を務めたヒューマンドラマ。恋人ケイコを藤谷文子、アドバイザーのワダを國村隼が演じた。
テレビ番組のディレクターやプロデューサーを長年務めてきたマーク・マリオットの長編映画初監督作で、キャリア初期に山田洋次監督作の海外現場に参加した際の経験をもとに本作を撮りあげた。
監督:マーク・マリオット
主演:井浦新、ゴヤ・ロブレス、文子、國村隼
藤谷文子が脚本・出演
(でか美ちゃん)すごい! 才能あふれる……。
(町山智浩)すごい人ですよ。で、その2人は一応、婚約してるんですけど。井浦さんは何か、トラウマがあって。どうもその結婚にも踏み出せないし、自分のやってる仕事にも非常に疑問があるんですけれども。で、その会社がアメリカのモンタナの昔からある牧場を買って、その経営を立て直すということになって。で、そこで和牛を作るということになるんですね。今、アメリカ和牛がすごく売られていて。アメリカで作ってるんですよ。「Wagyu」っていうんですけども。
(でか美ちゃん)ああ、ローマ字で。海外で流行ってるらしいですね。アメリカも。タイでもちょっと聞いたことあります。
(町山智浩)最高でしたね。ふんどし姿。で、國村隼さんが一緒にモンタナの牧場に行くんですよ。で、國村隼さんは英語がペラペラだから。実際に彼、英語ペラペラですけど。で、井村さんは何も考えないでついてくるんですけど。行ったら國村さん、何にも役に立たないんですよ。あることが起こって。
(石山蓮華)いい役ですね!
(石山蓮華)コメディなんですね。
(町山智浩)はい。これはコメディです。『東京カウボーイ』は。ただ、すごくアメリカっぽいなんていうのかな? チャカチャカしたコメディって、あるじゃないですか。アメリカ、ハリウッドだな、みたいな。アメリカンジョークみたいな。「アハハハハハハハハッ!」みたいな。これはそういうのじゃないんです。ほんのり静かで、癒されるコメディなんですよ。これ、どうしてか?って言うと監督はアメリカ人だけども、彼が目指したものは山田洋次監督の映画なんです。マーク・マリオットという監督なんですが。山田洋次さんって寅さんシリーズって知られていますけども。山田洋次さんは2本、ジャパニーズウエスタンを撮っているんですね。ひとつは『幸福の黄色いハンカチ』で、もうひとつが『遙かなる山の呼び声』なんですけども。これ、山田洋次さんがものすごく西部劇が大好きで。日本で西部劇を作ろうとして撮った2本なんですよ。寅さんも流れ者だから、基本的には西部劇ですよ。ちなみに僕、ちっちゃい頃に大きくなったらなりたかったのは、寅さんでしたけど。
山田洋次のジャパニーズウエススタンの目指した作品
(石山蓮華)どういう経緯でこの人たちが集まったんですかね?
(でか美ちゃん)このチームの不思議さが……。
(町山智浩)すごいヘンテコな世界なんけど。そのへんもね、ちょっと今度トークショーで藤谷さんと僕、話しますけど。まあトークショー、ちょっとチケットは売り切れちゃったみたいなんですが。
(石山蓮華)明日、この『東京カウボーイ』のイベントがアップリンク吉祥寺にて開催ということですが。チケットは完売という。
(町山智浩)完売しちゃったんですけど。藤谷さん、今ね、日本にいるみたいで。引き続きこの映画のプロモーションに参加するみたいで。公開日とかの挨拶にも出るみたいで。いろいろと不思議な経緯を解説してくれると思います(笑)。ということでね、『東京カウボーイ』ですが井浦さんは本当に映画選びがすごいなと。作品選びが。こういう大人しくて知的で。でもね、選ぶ映画は結構ね、攻めてるんですよ。で、いきなりアメリカで主演ですからね。
(町山智浩)『福田村事件』とかね。『止められるか、俺たちを』をとかね。作品選びがいいんですよ。井浦さんは。今、『アンメット』っていうドラマもやってますが、あれもいいですね。あれ、『市子』の2人が出てるんですよね(笑)。
(でか美ちゃん)そう。なんか全然関係ないのに「こっちでは幸せになってほしい」みたいな目でちょっと見てしまう(笑)。
(町山智浩)そうそう(笑)。もっと大変なことになっていますけども。そう。見ちゃいますね。あれでエリートのお医者さんを井浦さんがやってますけど。まあね、ちょっと『東京カウボーイ』は結構すごいメンバーが集まって。ほんのり、ほんわかした、でも雄大な景色の中でね、撮っていますんでぜひご覧ください。
(石山蓮華)はい。今日は今週7日(金)公開『東京カウボーイ』という映画をご紹介いただきました。そしてこの7日には以前、紹介いただいた『チャレンジャーズ』も公開になります。
(町山智浩)『チャレンジャーズ』はほんのり、ほんわかじゃなくてガガガガガッ!っていうドラマですけども、最高に面白いんでこれもぜひ見てみてください(笑)。
映画『東京カウボーイ』6.7公開 予告編