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外郎通信が発した記事が話題になっていますね。

海水からトリチウム検出 原発処理水放出口付近

共同通信     5/7(火) 17:29配信
 東京電力は7日、福島第1原発周辺で6日に採取した海水から、1リットル当たり13ベクレルの放射性物質トリチウムを検出したと発表した。世界保健機関(WHO)の飲料水基準(1万ベクレル)は大きく下回っている。
 検出したのは処理水の放出口に最も近い場所で採取した海水。他の場所では検出下限値未満だった。
 東電は7日、4月19日に開始した5回目の処理水放出を完了した。


問題になっているのは、記事の内容ではなく見出しの書き方。
「トリチウム検出」という当たり前の話を何か事件かのように書いています。
「海水から基準を大きく下回るトリチウム検出」としておけば問題はなかった。
外郎はもはや通信社と言うよりはカルト団体ですから、こんな見出しの記事になるのでしょうね。

海水だろうが淡水だろうが水の中には1ℓあたり1ベクレルのトリチウムが崩壊しています。
「海水からトリチウム検出」なんて当たり前の話なのに、何を言っているのだ、そんなことも知らんのか?
という話。

太陽からの宇宙線(陽子線)が大気中の窒素に衝突すると窒素が欠ける事が起こります。
荷電粒子である陽子と窒素は反発し合いますから、簡単には衝突しないのですが、極く稀に衝突し、極々まれにカケラが生じる。
窒素はホウ素11とトリチウムに分裂します。
正面衝突した時には50%の確率で酸素14が作られて、こちはすぐにベータ(+)崩壊をして窒素14に戻ります。

トリチウムは軽い物質ですから大気圏の外側を漂っているのですが、上層で雷が生じると酸素と結び付いてトリチウム水(HTO)が作られます。
これが雨となって落ちて来るのです。
落ちてくるのは作られたトリチウムの極々一部ですが、宇宙線の量は莫大ですから、そこそこの量になります。
トリチウムの半減期は12.3年です。
12.3年で半分になる筈なのに、減らないのは同量のトリチウムが空から補充されているからです。
「海水からトリチウム検出」なんて当たり前の話。
5月12日の磁気嵐・オーロラの話がありました、こんな年は普段より多めのトリチウムが作られるという話になります。

原発では2つの異なる過程でトリチウムが作られます。
一つは「三体核分裂」によるもの、核分裂は普通は大小二つのカケラが作られるのですが。ときどき三つのカケラが出来る事があり、カケラの1つがトリチウム。
こちらのトリチウムは「気体」としてペレットの中や燃料棒の中に存在します。
取り出しても空に向って行きます。

二つ目は水を構成する水素が熱中性子を捕獲して、水素→重水→トリチウムへと変化するケースです。
こちらはHTOが作られて液体として冷却水の中に存在します。
水素の中性子反応断面積は30.67バーン、重水は4.247バーン
ウラン235の中性子反応断面積は698.2バーン、毒物質と呼ばれるものにはこの1000倍以上の面積を持つものもありますから、面積の小さい重水が熱中性子を捕獲する確率は非常に低いものです。
それでも13ヶ月も運転すると、僅かですがトリチウムが作られます。

東電はどのようにして「13ベクレル」を測定したのでしょうか?
液体中のベータ線(電子の流れ)については知識が無いのですが正しく計れているのか?
空気中のベータ線は電子が(-)に荷電しているので、ガイガーカウンターで数が数えられます。
電子が二つくっついて飛んでくると一つにカウントする事があるので正確に測れるというものではないそうですが、数が少なければほぼカウントできます。
ガガガという音がするような状況では、音の大きさで概算することになるのでしょうね?

水中ではどうなんでしょう?
ベータ線は水中を1cmも進めません、エネルギーを失ってそれが伝播して行くのでしょうが、電子の流れの計測なんてノイズだらけで簡単に測れそうもないのですが?
トリチウムが崩壊した時のベータ線のエネルギーは0.0186Mev。
セシウム137が崩壊した時のベータ線のエネルギーは0.514Mev。
測定試料でセシウム137が崩壊していたりしたらトリチウムの発するベータ線は見えなくなるのではないか?
東電の「ベクレル」測定は信頼おけないんですよね。

体重60kgの人がいて、その人の体の60%が水で出来ているとすると、水の量は36リットル。
毎秒36回(ベクレル)のトリチウムが崩壊しています。
感電です、1兆分の1Wほどでしょうか?
13ベクレルは1kgでの話でしょうから60kgの人とは比較できませんが、全く問題がない話なのは確かです。

人体ではカリウム40(1.31Mev)が4000Bq、炭素14(0.156Mev)が3000Bq、合わせて7000Bq崩壊しています。
1kg当たりの崩壊量は福島の海水と似たような値になりますが、発するエネルギーの差は380倍近いものになります。

カルト団体に科学的な説明をしても聞く耳を持ちません。
オーム真理教を説得するのと変わりません。
必要なのは「洗脳」なのですが、自らを「悪に立ち向かう正義の使徒と誤解していますから簡単な話でありません。