福島事故 2024 その19: スクラップ (2) | 夢破窓在のブログ

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福島事故 2024 その19: スクラップ (2)

毎年恒例の事故の話、同じ内容になりますが、視点を変えてみる努力をしながら、問題点を挙げてみようと思います。

スクラップ 4) 発電コスト

発電コストの話ですが、改めて見直して見ると何かがおかしい。
原子力と火力(石炭・LNG・石油)を比較しています。
問題なのは項目の取り上げ方、こんな項目が並んでしました。
内訳
資本費・運転維持費・核燃料リサイクル費用・追加的安全対策・     
政策経費・事故リスクへの対応費
これを発電方式別に比較して原子力は合計8.8円/kwh。
石炭10.5円、LNG11円、石油40円。
これ10年近く前の数字で、資源価格や為替相場が変動しています。

今では原子力は廃炉の費用などが加算されて約10円/kwhほどになっているようです。
一方で火力もCO2対策費が加算されて、原子力よりは割高になる。
同じような図が資源エネルギー庁のHPにありました。

何が問題なのか?

 

1)「燃料費」という項目がないのです。


発電コストなのですから、筆頭に燃料費が掲げられているべきなのです。
なぜ燃料費を見えないようにしているのか?

2)計算式

発電コストはこんな式から求めているようです。
{資本費+運転維持費+燃料費+社会的費用(環境対策費用+事故リスク対応費用+政策費)}/発電電力量(kwh)

これ電力会社の原価計算の式だと思われます。
下辺に発電電力量(実績)が来ています。
上辺は燃料費と運転維持費の一部を除くと「固定経費」と呼ばれるものばかりです。
この式で計算すると燃料費比率が小さい原発は発電電力量の変動で大きくコストが変動します。
発電量を増やしてコストを下げようにも発電量に上限が設定されていますから増やせません。
火力発電は燃料費比率が大きい為変動幅は小さくなります。
社会的費用や政策費はずっと少なくなっています。
火力発電所で大きな事故があったら社会的費用が追加されるのでしょうか?
政策的に仕組まれた支出でコストが比較されるのは不公平だと思います。
こんな式で火力と原子力の比較を行うべきではありません。

下辺は発電電力量(実績)ではなく、原子力も火力も同じ値、たとえば総発電量を2分割した0.5兆kwhとするべきでしょう。
上辺は0.5兆kwの発電に必用な各項目の金額が並びます。
120万kwhの発電所50基分になりますか?

3)国富の流出

電力会社が馬鹿高い電気代を取って、福島や新潟、原子力ムラの人々に配る政策費は、電力会社や我々庶民にとっては「コスト」ですが、受け取る人々にとっては「所得」です。
国にとっては右のポケットのカネが左に移るだけ、コストでも何でもありません。
「コスト」として注目するのは、国外に出て行って戻って来る事のない「燃料費」だけにするべきです。
国富の流出量でコストを比較するべきなのです。

資源エネルギー庁のHPにこんな図がありました。

燃料費だけを書き出してみると、
       原子力   LNG   石炭 
燃料費    1.5  10.8   5.5

これが実態、これが全てです。
以前私が計算した時、今とは状況(価格・為替)が変わっていますが、3.5%の濃縮ウランの入手費用は1円/kwh以下でした。
これを焼結してペレットにして、ジルコニウム合金の鞘に入れて、燃料棒集合体にする費用を考えると1.5円/kwhという数字は以前と大きな差はないようです。
発電のコストは余計な事は考えずに「燃料費」を比較すれば良いのです。
1)に掲げた疑問ですが、電力会社は燃料費を見づらくして意図的に原発コストを高く見せようとしています。

私が経営者だったら、燃料費以外の経費をどうするか?

1)運転維持費

現在の原子炉の運転期間を13ヶ月から外国並みの20か月に変更する。
定期保守が17ヶ月毎から24か月毎になる。
4年間で3回行っていた補修作業が2回になる。
補修に際して、何でもかんでも新品に置き換える事はしない。
重要部品とそうでないものメリハリを付けて、使えるものは再使用する。
一方、重要部品は使える物でも交換する。
細かい話ですが手袋を毎日変えるような事はしない。
(3-2)÷4=0.25
図の一番左、3.3円/kwhと書かれている原発の維持費の内の半分が補修費用だとして、25%削減できれば0.4円/kwhの節約になります。

手袋代他についてメリハリをつければ、0.5円差し引いて2.8円/kwh程に出来そうです。

2)廃炉費用

全ての廃炉作業を中断し60年間延期する
セシウム137の放射線量が今の4分の1になり、より安全な作業が可能になる。

3)核燃料リサイクル費用

使用済み燃料から、ウラン+プルトニウムを分離する。
この中には燃料として利用可能な、ウラン235、プルトニウム239、241が1.7%存在します。
0.7%のイエローケーキの倍以上の濃い原料となります。
高速増殖炉やMOX燃料の利用は国家の動向次第ですが、どうなるのかわからない費用をコスト比較する際の「発電コスト」に含める事はしません。

新たに原発を建設する場合に、六ケ所村のような施設をもう一つ建設する必要があるのなら、その費用はコストとして考慮するべきですが、そうでないのなら建設済みの施設の費用を増設する原発の発電コストとするべきではありません。
電力会社の原価計算ではないのです。
今後新たな発電施設を建設する場合に、国民が1kwhあたりどれだけ負担するのか?が比較するべき発電コストなのです。

4)事故リスクへの対応費用

今回の「事故?」で放射線で具合が悪くなった人はいません。
原発が安全なものであることが判明しましたから、こんな費用は考慮しません。
避難している方々は早々に帰宅していただきます。
3か月で帰宅させれば済むものを、当時の国の判断のミスで費用が生じています。
国が対応すべき話で、電気代のコストとして考えるなんて馬鹿げています。
この項目をコストに含めるのなら、「女川原発」のような発電所を作る前提で対応費用を計算します。
福島第一1号機のような、担当者の錯和(チョンボ)を前提とした、事故を想定したコスト計算なんて馬鹿げています。
新しい原発を作るとして、次のM9の地震は何時頃発生するのか、どれくらいの高さの津波を想定してリスクを計算しているのか?
全国一律同じ基準で津波のリスクを計上するのか?

5)政策費

取り敢えず無条件ですべての項目を半額にします。
その後も無駄な費用はカットして行きます。
「将来発電技術開発」こんな項目が発電のコストになっているのがおかしい。
国の研究所や装置開発メーカーが負担するべきものです。
電力会社は資本費として負担はしても、政策費で支出する話ではない。

6)原発の稼働比率の見直し、再稼働

原発の全面再稼働。
総発電に占める原子力発電の比率を50%まで高める。

電気代を大幅に値下げする。

参考)

10年前のスクラップ

⁅ 発電コスト ]
資本費          2.5円/kwh        
運転維持費        3.1円/kwh    
核燃料リサイクル費用   1.4円/kwh
追加的安全対策      0.2円/kwh     
政策経費         1.1円/kwh   
事故リスクへの対応費   0.5円/kwh以上    
              合 計     8.8円/kwh     

⁅ 政策費の実績(平成23年度予算)]   単位:億円
          原子力       LNG    石炭
立地費         1278          60.5  51.7
防災          91.3    0     0
広報(周辺地域)   10.9     0     0
広報(全国)     30.9       0.7   0.6
人材育成       10         0     0
評価・調査     327      0.7    1.2
発電技術開発     36.1    17.2   31.6
将来発電技術開発 1401.8     0       0
資源開発        9.5   374.8   43.9
その他         1.0    29.8   44.3
   合計    3193.4   483.7  173.2


(一言)

次回が最終回になります。
17日に更新する予定です。