福島事故 2024 その17: 環境省 | 夢破窓在のブログ

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福島事故 2024 その17: 環境省

毎年恒例の事故の話、同じ内容になりますが、視点を変えてみる努力をしながら、問題点を挙げてみようと思います。



この図は環境省のサイトにあるものです。
よくもまあこんな出鱈目を?!

順に説明してみましょう。

1)沃素131

燃料棒の中に作られる沃素の中で半減期が1日以上のものには沃素129、131、132、などがあります。(下記参考)
沃素132の半減期は2.3時間ですが親各種のテルル132の半減期が3.2日なので加えてあります。
半減期の短い核種は時間が経つと崩壊が進み、沃素131は炉が停止した時に残存しているのは11日分になります。
運転時の燃料棒の鞘の温度は285℃、沃素は気体となって鞘の底の方に澱みます。
ここに沃素より生成量の大きなセシウムが降下してくると、ハロゲン元素の沃素はアルカリ金属のセシウムと化合して「沃化セシウム」になります。
沃化セシウムの融点は621℃、沸点は1277℃です。
作られた沃化セシウムは燃料棒の底に沈殿しています。

この「沃化セシウム」が原発由来などど言って、圧力容器の外に出て、格納容器の外にまで出て。原発構外に届く事は考えられないのです。
由来」のしようがないのです。
前回も書きましたが、沃素が飛んで来る事も考えられないし、ポピドンが付いてくる事もありません。


2) セシウム134

セシウム134の親核種はキセノン134で、これは安定物質です。
これ以上崩壊が進む事はないので、セシウム134が核崩壊で作られることはありません。
作られるとすればセシウム133が中性子捕獲をした時が有り得ますが、セシウム134の中性子反応断面積は162.5バーン、セシウム133の反応断面積は33.3バーンです。
反応断面積が5分の1のセシウム133が中性子を捕獲できる、それほど熱中性子が豊かな環境では、セシウム134は作られてもすぐに中性子を捕獲してセシウム135になってしまいます。
原発停止直前に作られたものなら僅かに存在するかも知れませんが、無視できる量です。
そんなセシウム134がこれ程大きく取り上げられているのはなぜでしょう?
セシウム134は半減期2年、複雑な崩壊をして強いガンマ線を放出します。
私には、庶民が放射性物質に詳しくないことをいい事に、無視できる量しか存在しないセシウム134を「危険物質」に仕立てて「脅し」をしているとしか思えません。

3)セシウム137

燃料棒の中で気化したセシウムは、燃料棒破損と共に圧力容器に吹き出し、水蒸気と爆発的に反応して「水酸化セシウム」が作られました。
水酸化セシウムはその性質から水の分子と絡み合い「水酸化セシウム親和水蒸気」が作られて水蒸気と行動を共にしました。
どこぞで「xxベクレル!」とやっていたのはこの物質で、これは「原発由来」と表現しても問題ありません。

4)ストロンチウム90

ストロンチウムの融点は777℃、沸点は1382℃で燃料ペレットから出たストロンチウムは燃料棒の底に沈殿しています。
ストロンチウムは燃料棒が破損し水蒸気と出会うと水酸化ストロンチウムになります。融点が375℃、沸点は710℃。
激しく水素が生成されます。
290℃の水と700℃のストロンチウムが反応しても沸点の710℃にはならず液体として圧力容器の底に留まるか、一部が格納容器に移っても外部にでて行く事はないでしょう。
ストロンチウム90はベータ線しか出しませんから、ガンマ線のように被曝被害が出るものでもありません。
ベータ線は飛程も短く、電子の流れですから被害は感電と同じです。
余程の量を浴びない限り被害に遭う事はありません。
半減期が28.8年のストロンチウムで大きな被害に遭う事は考えられませんが、外国で低温火傷の事例はあるようです。

「冷温停止」とやらで圧力容器を洗っていましたから、海側に排出されたものがあるとは思いますが、原発構外の人が「原発由来」のストロンチウムに出会う事はありません。

5)プルトニウム239

燃料棒の中のウラン238が中性子を捕獲するとウラン239が作られて、これが崩壊してプルトニウム239が作られます。
燃料に占めるウラン238の比率は96.5%、この内の一部がプルトニウムになります。
軽水炉の使用済み燃料に残る1%のプルトニウムの内訳は以下の通りです。
             含有率    半減期  
 1) Pu238     2%    87.7y   
 2) Pu239    58%   24110y   
 3) Pu240     24%      6561y   
 4) Pu241     12%      373500y   

作られたプルトニウムの残存比率は約1%ですが、プルトニウム239やプルトニウム241は核分裂を起こして燃えてしまったものもありますから、使用済み燃料に占めるものは燃えずに済んだものです。
燃え残りのプルトニウム239の比率は0.58%
セラミック化している155個の2酸化ウラン238分子の内の1つが2酸化プルトニウム239に変化している状態です。
ウラン238もプルトニウム239もほぼ同じようなアルファ崩壊をして、アルファ粒子とガンマ線を放出しますが、どれがプルトニウムかなんて見当もつきません。
ウランもプルトニウムも大変重たい物質です。
こんなものが格納容器の外に出て行く事は考えられません。
例え2800℃を超える世界でこれらの物質が気体になったとしても、熱源を離れればたちまち固化してしまいます。
格納容器の外に出て、どこぞで「福島由来」などとなる事は絶対にないのです。
あたかもプルトニウムが単独で行動するかのようなこんな図がどうして描けるのか?

これは夏の話題になりますが、日本は使用済み燃料として約40トンのプルトニウム239を保有するので「原爆を簡単に作ることが出来る」という人がいたりします。
ウラン238の中にごく僅かに入っているプルトニウムを抽出するのは、フッ化水素酸を利用すれば難しい話ではありませんが、原爆には核爆弾級濃度(93%以上)の純度のプルトニウム239が必要となります。
プルトニウムの中の239の比率は58%ですから、これを93%以上まで高める必要があります。
この為には原子量が「1」しか違わない、24%存在するプルトニウム240を分離する必要があります。
原子量が「3」違うウラン235の濃縮(0.7%→3.5%)に大変な手間と電力を費やしている事を考えればプルトニウム240の分離は不可能とも言える作業です。
加えて、抽出したプルトニウムは自発核分裂比率の高いプルトニウム240が24%も含まれていますから、取り扱いを間違えると容易に臨界に達する危険物質です。
と言うか、抽出すら危険な行為になるのではないか?

使用済み燃料のプルトニウム・ウラン混合体は、ウラン235、プルトニウム
239,241合わせて1.7%濃度の原料になります。
海外からイエローケーキ(0.7%)を買って来て六ヶ所村でウラン235が6%濃度の燃料を作って、二つを同量混ぜ合わせて2分すれば3.8%濃度の燃料を作る事ができます。
保管しているプルトニウム・ウラン混合体は、何もしなくてもそのまま原料として使えるのです。
この混合体の存在に対して、「盗まれて海外に持って行かれたら原爆の原料になる」「トイレの無いマンション」などとやるのは「放射脳症」の「無知の世界」の話です。

なぜこんな出鱈目な表が作られたのか?
環境省なんて役所を作ってはみたものの、「レジ袋の廃止」くらいしかやることがない。
仕事の無い環境省の役人が、仕事をしている振りをする為に、紹介された業者に丸投げ、大金をかけてこんなサイトを作りあげました。
作品の中身の検証なんてやる気も知識も無し。
これ「公金チューチュー」のスキームの一つだと思います。

この役所、メガソーラーとやらで、全国の緑が大規模に剥がされているのに、今になってやっと「規制を強化する」などと暢気な事を言っています。
この役所の存在そのものが丸々「公金チューチュー」のスキームなのでしょう。

https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h28kisoshiryo/h28kiso-01-01-01.html


(参考)

炉内で生成される沃素の半減期。
         半減期      生成比率
I127    stable
I129    1.57E7
I130    12.4h
I131    8D          3.1
I132    2.3h         4.5
I133    20.8h         6.6
I134    52.5m   
I135    6.6h          6.5
I136    83.4S   
I137    24.5S          6.2

(一言)

記事の更新は一日置きに行う予定です。