トリウムの話 その8 水素爆発
Wik(トリウム燃料サイクル)より。
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運転しながら溶融塩核燃料から固体/溶融核分裂生成物をも除去して超長期にわたって反応度(核燃料の燃えやすさ)を維持することが原理的に可能である。
溶融塩の中のトリウム232の量を適宜補充していくという話のようです。
トリウムが一定量以上存在すれば、U233への変換が進行しますから、相当長い期間運転が可能の筈なので、超長期というのがどの位の期間になるのか知りませんが、あまり意味のある話だとは思えません。
問題なのは、除去した固体/溶融核分裂生成物を何処に保管するのか?
発生する気体の生成物をどのように保管・処理するのか?です。
Wik(トリウム燃料サイクル)より。
溶融塩原子炉の場合、水を原子炉に入れないで、水素爆発/水蒸気爆発を回避する設計が可能である。
水素爆発の水素は、核反応で生成されたセシウムが水と反応して出来るものです。
ボコボコ激しく反応して水素が発生します。
溶融塩トリウム炉では、水素発生源のセシウムがまだ沃素であるうちに気体収容タンクに抜き取られてしまいます。原子炉にはセシウムが存在しないのですから、原子炉に水があっても、水素との反応は起きないと思われます。上記の水素爆発を回避できるという説明は疑問です。保管タンクに水気があったり、穴が開いたりしたら、即水素が発生します。
水蒸気爆発というのは、水蒸気が固形物に閉じ込められて高圧になって、爆発的に噴出する現象です。
鋳物工場などで、湯(熔けた鉄)がコンクリート上に漏れて流れたとします。コンクリートは水和物ですから内部に水が存在します。水は高温に曝されて沸騰し、水蒸気は出口を求めます。重い湯が蒸気の出口を作らずに、冷えて固まると、蒸気はドンドン高圧になって、ついには爆発的に固まった鉄を吹き飛ばします。
火山のマグマと水蒸気の関係でも同じような事が起きます。
原子炉には重たい、高温の溶融物が存在し、水も存在しますが、水蒸気爆発に到るような密閉した状態が作られるかどうかは何とも言えません。
上記の説明では、炉内に水がないから水蒸気爆発が回避出来るとしていますが、構造物にコンクリートがあれば、水蒸気爆発起きる可能性もあります。
700℃の多量の溶融塩がコンクリートの上に落ちて固まれば、爆発状態にならないとも限りません。
軽水炉では高温・高圧の蒸気が循環していますが、これが噴出しただけでは水蒸気爆発とは言えません。
タンクの中のセシウムをどう扱うのか?
トリウム炉だから水素/水蒸気爆発が回避できるという話しは疑問です。
福島事故の水素破裂はベント失敗によるものです。本来であれば煙突から水素は排出される筈でした。それが建屋の天上でポンと破裂したのですが、あれは爆発・爆発と騒ぐような話ではないのです。天井や上部の石膏ボードが飛ばされましたが、けが人も出ていないようです。近くに人がいたとしても死ぬような事にはならなかったと思います。