トリウムの話 その7 超長期半減期核種 | 夢破窓在のブログ

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トリウムの話 その7 超長期半減期核種

 

Wik(トリウム燃料サイクル)より。

トリウム溶融塩炉は熱中性子・低発熱で増殖可能なために、初期装荷燃料の濃縮度 富化度が低くても、比較的低発熱量で燃焼しながら、40年近く燃焼する事が可能であるそのため安全を重視して火力を低く抑えることと、燃料交換周期を40年に1回とすることの両立が可能で、また使用済み核燃料の発生量が非常に少なく、そのうち超長半減期核種占める比率が軽水炉の1/3で済む。

 

U235を燃料とする軽水炉ではU235の83%が核分裂を起して大小のカケラになります。残る17%はU236になります。

一方で、発生した中性子がウランの大半を占めるU238に捕獲されてプルトニウムが生成されます。

燃料棒の中の3.5%のU235の内で、3年間で2.5%が燃えて1%のプルトニウムが増殖されます。

トリウム232のケースではU233の核分裂比率をU235と同じく83%とすると17%がU234となります。

           半減期      反応断面積(熱中性子)

 U233     68.9年       162.3b

 U234     24.6万年     119.2b

 U235      7百万年      698.2b

 U236     23.4百万年     13.7b

 U238     44.7億年       12.1b

 

U234はU236に比べて反応断面積が大きいので長時間運転していれば、U235へと変化します。

U235はおなじみの核燃料で、87%が核分裂を起します。

U235を燃やす軽水炉では反応断面積の小さなU238が中性子を捕獲してプルトニウムが生成されますが、トリウム炉ではU234の反応断面積がU238に比べて大きく、炉内の毒物質も少ないので、軽水炉に比べて効率よくU235が生成されます。

これは炉として、より大きなエネルギーが得られる事を示すと共に、生成されるCs137やSr90の量が増える事を意味します。

上記の文書を読むと、トリウム炉が残存放射性物質は少なく、キレイな原子炉であるかのように感じますが、そんなことはありません。

 

超長半減期核種とは何をさすのでしょうか?

軽水炉のU236(半減期23.4百万年)の残存量はトリウム炉に比べて多くなります。

アルファ線を出すだけのこの物質の残存量が多いからと言って何が問題になるのでしょうか?U236の多い分だけCs137の生成量が少なくなっているのです。

Xe136という物質があります。たいへん長い半減期を持ち、殆どエネルギーは出しませんが、これも超長半減期核種に入るのでしょうか?

軽水炉では毒物質であるXe135が熱中性子を吸収してXe136になります。崩壊してCs135になる物は少ない。トリウム炉では沃素135(半減期6.6時間)が出来た時点で、気体としてタンクに向かいますから、タンク内でXe135を経てCs135となります。Cs135の半減期は2.3百万年ですから、これも超長半減期核種に入ります。生成された時に僅かなガンマー線を出すものの、崩壊時には殆どエネルギーを出しません。しかし、それでもセシウムですから振る舞いはラジカルで危険なことには変わりありません。Cs135の生成量は軽水炉よりトリウム炉の方が多くばります。いずれも長い半減期の物質ですが、セシウムの発生量はトリウム炉の方が多いのですから、安全なイメージはありません。

 

アルファ線は紙一枚で防げます。目の前にあったとしても人体に影響が及ぶ事はありません。アルファ崩壊する核種を吸引して具合が悪くなった人の話しを聞いた事はありません。

ベータ崩壊する核種で半減期の長い物質は崩壊時に殆どエネルギーは放出しません。(生成時に核異性体が弱いガンマー線を出します)

超長半減期核種がどうのこうのと問題にするのはおかしいのです。崩壊するのにたいへんな時間を要するのですから、時間当りの放射線の量はごく僅かな物です。ほぼ安定物質として考えるべきなのです。