Q005: | 夢破窓在のブログ

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Q005:

100万ベクレルの放射線を放つ次の核種が存在した時に、人体に与える影響の大きいものの順に並べてください。

 1)セシウム137
 2)セシウム134
 3)ストロンチウム90
 4)沃素131

[解説]

それぞれの半減期と崩壊エネルギーを上げてみます。
                 半減期   ベータ線  ガンマー線
 1)セシウム137       30y    1.176   0.662(85%)
 2)セシウム134       2.1y   2.059   0.605(98%)
                                 0.796(85%)
 3)ストロンチウム90    28.9y   0.546     -
  (イットリウム90      64h     2.279     -  ) 
 4)沃素131          8d     0.97 0.364(82%)

崩壊量が100万ベクレルで同じということは、半減期の短いものほど存在量(g)は少なく、長いものほど量が多いと言うことです。
I131は崩壊エネルギーが少ない上に32日で16分の1に減ってしまいます。

上の問題には核種と接触している時間も、接触状態(距離、存在場所)も示されていません。

10mの距離を隔てて一年間対峙するという条件で考えて見ます。

年間蓄積被曝量を比較すると、沃素が元気なのは最初の2週間ほどで、エネルギーも少ないのですから他の核種とは全く比較になりません。
Cs134も1年の終わり頃には半分近くに減ってしまっていますが、こちらは2本のガンマー線を出しますしベータ線も強いので、放出エネルギーは最大ということになります。

Sr90は娘のY90が半減期64時間で2.279MeVのベータ線をだしますから合わせて2.825MeVのベータ線が放出されます。これは最大値を足したものです。平均はこの3分の1ですから10mの距離を隔てているとSr90が発するベータ線はこちらまで届きません。Y90の最大値に近いものだけが減速されて、へとへとになってたどり着く事になります。

10mの距離を隔てて一年間対峙する、年間被曝量という観点で比較すれば、
 Cs134>Cs137>>>>>>>Sr90>>>>I131
という感じになります。

恐ろしい筈の沃素が断トツの最下位。この問題の答えに違和感を感じるのは、話が「崩壊量(ベクレル)が同じ」と言う前提で進められているからです。
同じ質量、1gで比較したとしたどうなるのか?
半減期の短い、比放射能が大きいI131がずば抜けて崩壊量は大きくなります。
しかし、上記のように1年間で比較しろという話になると浴びている時間が短いので総蓄積量は短時間で浴びる話とは大きく違ってきます。
人体への影響は時間当たりどれだけ被曝するのかを示す「線量率」で見ますから、1gずつ存在した場合は、被曝開始当初のI131の影響が抜けて最大という話になります。

マスコミはカサが大きく見えるベクレルという単位を使いますが、ベクレルという単位は崩壊量ですから、そこからは時間当たりの被曝量も、年間当たりの被曝量も見えてきません。
この数字で事を扱うには、崩壊エネルギー量や半減期の情報を添えて解説しないと誤解を招く事になります。

テルル132という物質と沃素132という物質がxxベクレル発見されました。
1ヶ月後にこんな報告されても半減期3.2日のTe132は崩壊が終わって存在していません。娘核種のI132をTe132と別の物かのように言うのもインチキです。
I132が存在したという事は、その分Te132が減ったということです。
事故後は危険な存在だったのだとしても、10日もすれば無視できるものです。
この辺の事情を知らない人はセシウムと同じようにテルルがその辺にうろついているものと誤解をしてしまいます。

何時から何時まで、何処にいたら、どれ程危険だったのか?
それは世田谷のお婆ちゃんの何倍の被曝量に当るのか?
ゴイアニアで亡くなった人の何分の1に相当するのか?
危険だと言うのならデータを示すべきなのです。

人体への影響と言った場合、夫々の物質の化学的な性質を考慮する必要があります。セシウムといっても金属のセシウムに出会う事はありません。水酸化物か酸化物と出会うことになります。水酸化セシウムと出会うのか、炭酸セシウムと出会うのか、塩化セシウムと出会うのかでも人に対する影響は異なります。

水酸化セシウムと水酸化ストロンチウムでは水に溶ける量が大きく異なります。当然我々の身の回りに、身体の中に溶け込んでくる量も違います。
福島の原発構内で何ベクレル崩壊していようが、東京にまでやってくる手段を持たなかったり、時間がかかると崩壊が終わってしまう物質もあります。
これらをごちゃ混ぜにしてxxベクレルなどと発表しても殆ど意味がないのです。

汚水タンクにどれだけのストロンチウムやトリチウムがあろうとも、東京に住んでいる我々には、或いは福島市に住んでいる人々には関係ないのです。
ストロンチウムには羽がついていません。身近にやってくることが考えられません。身近にやって来ても水酸化ストロンチウムという形では人体はなかなかこれを吸収できません。
上空で爆発させてジェット気流に乗せた原爆実験とは話が違うのです。

一方のトリチウムはTHO又はT2Oという形で水に混ざってやって来ます。水のある処に何処へでも拡散して行きます。
海水には1リットルあたり1ベクレルのトリチウムが入っています。我々の体内に存在する水分にも同量が混ざっています。

トリチウムという物質は1崩壊あたり0.0186MeVのベータ線を放出します。
これは1.176MeVを放出するCs137の63.2分の1でしかありません。これでも1ベクレルなのです。加えてガンマー線は放出されません。
1ベクレルあたりの崩壊エネルギーはベータ線は最大値の3分の1が平均値として、
 Cs137  0.6617+1.176÷3=1.0537MeV
 トリチウム 0.0186÷3=0.0062
 1.0537÷0.0062=170

「xxの水から100万ベクレルのCs137と50万ベクレルのトリチウムが計測された。」
というニュースが流れたとして、トリチウムの崩壊エネルギーはCs137の340分の1です。
ニュースを聞いている人は「半分か」と受け取ってしまいます。「340分の1か」とは受け取りません。
というか、ニュースを発するマスコミが訳も判らず半分なのだろう、量が多いのに越した事はないからトリチウムも加えておけ、という感覚で報道しているのです。

トリチウム汚染水を海に流すと言う話で大事件のような報道をしています。
トリチウムが発する微弱なベータ線は人体に届きません。届いても皮膚の表面の2~3日で入れ替わる細胞に僅かなエネルギーを伝えるだけです。
こんなもの放水したとしても環境に何の変化もありません。

「ベクレル」という単位は誇大に煽るには好都合です。
騙される奴が馬鹿。

(一言)
次回の書き込みは9月1日からの予定です。