嘘の弐拾 「原子の火」  | 夢破窓在のブログ

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嘘の弐拾 「原子の火」 


 「原子の火は消す事はできない。」

 「暴走したら止められない。」


原子の火はウラニウム235という物質が低速中性子=熱中性子を受けて核分裂する事により灯ります。

熱中性子は高速の中性子を減速して作ります。

減速は中性子同士を衝突させたり、中性子と変わらない質量の陽子にぶつけて行ないます。

陽子は水素の原子核です。水素を含む物質である「水」が減速材として使用されます。

核反応が始まると1回の核分裂で2個の中性子が放出されます。

熱中性子が多くなれば、分裂する量も増えるので、核反応はどんどん進むみます。

核爆発が起きるわけではありませんが、ブレーキがなければ暴走して炉が解けてしまうことにもなります。


U235が核分裂をすると沃素135という放射性物質が出来ます。

I135は6時間ほどでキセノン135という物質になります。

Xe135という物質は異常なまでの熱中性子吸収能力があります。

吸収能力は「反応断面積」という面積、ぶつかり易さで表します。

単位は「バーン」です。


Xe135の反応断面積は2.964M(百万)バーンです。

U235の反応断面積は698.2バーンです。

Xe135はU235の4245倍の反応断面積を持ちます。

反応断面積の大きい物質を核反応の進行を妨げることから「毒物質」と呼んでます。


運転中の原子炉は熱中性子と毒物質のバランスを取って核反応が進行します。

もし圧力容器から水が無くなってしまうような事が起きたらどうなるのでしょう。

減速材が減って熱中性子の量が減ります。

熱中性子は圧倒的に面積の広いXe135に優先的に回りますから、U235に回る分が減ります。

核反応の数が減って中性子の量が減る、さらに分裂する量が減る。

最後には反応を維持するのに必要な熱中性子が確保できずに、核反応は停止します。

普段、炉を停止する時には水を抜くのではなく、毒物質(ホウ素)を塗った制御棒を差し込んでバランスを崩して止めます。


「原子の火は止めることが出来ない」は嘘です。

毒物質というブレーキが存在する為に核反応は止まってしまいます。

原子の火は減速材(軽水炉では水)が無くなれば鎮火します。

原子炉では毒物質が生成される前にたくさんの熱中性子を作っておいて、毒物資に吸い取られても反応が進行するようにバランスをとっています。


「暴走したら止められない」

これはチェルノブイリの事例を言っているのでしょうか?

チェルノブイリでは制御棒を部分的に差し込んで出力を低下させて発電する実験をしていたようです。

出力を低下させる→中性子の量が減る→U235に回ってくる熱中性子が減る。

Xe135の方にバランスが傾く事をキセノンオーバーライドと呼ぶそうです。

鎮火の方向に進んでいたのです。


出力の低下が予定以上だったので係員が制御棒の一部を抜いたのだそうです。

それでも出力が低下していたので、さらに抜いたのだそうです。

ここでバランスがU235側に傾いて暴走をしてあの結果です。


このバランスが傾くと暴走する特性はあの型の原子炉特有のもので、それに対する対処も考えすに操作した、操作ミスが事故の原因です。

日本で使われている原子炉はベース電源用ですから、出力を下げて運用することはありませんし、あの炉のような特性はないそうです。

チェルノブイリの原子炉は減速材に黒鉛を使用している事が関係しています。


チェルノブイリでも水蒸気爆発事故は起こしたものの、中性子減速機構が破壊されてしまっては熱中性子は作れませんから毒物質が有利になって核反応は鎮火に向かいました。


「暴走したら止まらない」→「暴走させても自然鎮火する」


チャイナシンドロームとか福島の原子炉の下では核反応が続いて核燃料がマグマのようになっている、などということは起こり得ません。

熱中性子が確保出来ないからです。


唯一の例外として太古の昔、アフリカで天然原子炉が形成されて、その痕跡が見つかっているそうです。

豊富な水があって出来る話しです。

普通なら熱で水が蒸気になって飛び去り、中性子の減速を継続することは出来なくなります。


「原子の火は放っておいても鎮火する。」

「暴走したとしても、そのあと直ぐに鎮火する。」


核連鎖反応が停止したら危険はないのか?

極めて僅かな確率ですが臨界状態の発生は考えられます。

一瞬火がつく状態です。

熱中性子が確保できないと生じた毒物質により鎮火しますが、Xe135の半減期は9時間ほどですから、Xe135が減ってくると臨界の可能性はゼロではありません。近くに人がいるとJCOの事故のような中性子線被曝事故が起きます。


JCOの事故は普段原発で使う3.5%濃度の燃料ではなくて、高速増殖炉での実験用の18%濃度の燃料を扱っていた為に臨界に遭遇しました。

規則どおりの取り扱いをしていれば、ステンレスのバケツで誤魔化すような事をしていなければ事故は起きませんでした。


使用済みの燃料はU235,Pu239合わせて2%程の濃度しかありませんから簡単には臨界に達しません。どなたかの名言「ゼロではない」は理屈上の話であって実際はゼロだったと思います。

プールに保管する時は、燃料棒集合体を毒物質であるホウ素を塗った円筒に入れて保管しています。こんなものに入れなくても臨界の可能性は殆どゼロですが念には念を入れてという事です。


臨界事故はJCOを含めて世界で何回か起きているようですが、それが核連鎖反応に結びつくことはありません。毒物質がブレーキをかけるからです。

至近に人がいたときは死者が出ています。

それらしい環境の数十mの範囲に立ち入る時は注意しましょうという話です。


アメリカではデーモンコアと呼ばれるプルトニウムの塊が臨界事故を起こしました。

プルトニウムは極僅かですが自然核分裂をします。すると中性子が発生します。

熱中性子が発生するわけではありませんが、16kg以上を球形の塊にすると、ぶつかり合いで減速される事により熱中性子が発生し、臨界に達するそうです。

直ぐに鎮火しますが2~3日するとXe135が無くなって臨界のリスクがでてきます。

毒物質にサマリウムという物質があります。生成量はXe135に比べて少なく、反応断面積も小さいのですが半減期が2000年以上あります。

こちらが一定以上生成されてしまいますと、もう臨界は1万年後にでもならないと起きません。


毒物質というブレーキがうまいこと暴走を止めてくれているのです。

「益物質」とでも呼び変えるべきではないでしょうか?