メ〜テレシネマ 
映画
『彼女が好きなものは』


あらすじ

安藤純(神尾楓珠)はゲイであることを隠している高校2年生。
同じクラスの幼なじみ・高岡亮平(前田旺志郎)は、毎朝明るく股間を握ってきます。
リーダー格の小野雄介(三浦獠太)たちは女子のことばかり話しており、純はなるべく関わらないようにしています。

ある日の放課後、純は立ち寄った本屋でクラスの女子・三浦紗枝(山田杏奈)がBL本を買っているのを目撃してしまいます。
口止め料としてその本を借りた純は、そのあとホテルで密会した恋人の佐々木誠(今井翼)にいきさつを話して本を見せます。

翌日の放課後、カフェで待ち合わせた純に紗枝は、誰にも口外しないことを約束させ、次の日曜日に一緒にきてほしいところがあると誘います。

日曜日、紗枝に連れて行かれたのはアニメグッズの限定販売会でした。
BL仲間の女性・佐倉奈緒(三浦透子)とその彼氏・近藤隼人(渡辺大知)も合流し、2時間以上並んでようやく購入したあとは水族館でWデートです。
空を飛ぶようなペンギンを眺めながら、紗枝はまたお願いしてもいいかとたずね、純は
「たまになら」と答えます。

自宅に戻り、ひとりで夕食を済ませた純は、ネットで知り合ったゲイの先輩・Mr.ファーレンハイト(磯村勇斗)とチャットで会話をします。
彼とは、純が誠と初めて結ばれた夜に知り合いました。
誠とのことを誰かに話したくなった純が、ネットで検索してたどり着いたのが彼のSNSで、大学生だという彼の影響でQUEENの曲も聞くようになりました。
悩める純にとっては兄のような存在なのです。


ある日、純は亮平から遊園地に誘われます。
メンバーは小野とその彼女、亮平と純、そして紗枝と友だちの今宮くるみ(池田朱那)だと言います。
純は乗り気ではありませんでしたが、保身のためしぶしぶ承諾します。

遊園地でふたりきりになったとき、小野は純に、今回のグループデートは紗枝のために企画されたと暴露します。
純を好きになってしまった紗枝に告白の場を設けるのが今日の目的だと…。
しかし純にその気がないと見抜いた小野は、亮平のために紗枝の告白を断ってほしいと言ってきました。
全く気づいていなかった純は驚きますが、小野は亮平と紗枝をくっつけようと提案します。

とうとう告白予定の観覧車へやってきた一行。
亮平は気を利かせて純と紗枝を一緒に乗せてしまいます。
案の定、その中で純は告白され、いろいろ思いを巡らせた結果、純はそれを受け入れたのでした。

手をつないで下校したり、一緒にテスト勉強したり、順調につき合う純と紗枝。
今度また奈緒たちとWデートしようという紗枝は、行く場所を純に決めてほしいと言います。
ただ、そんな状況でも純は誠と密会をしていました。
次の週末は家族サービスで温泉施設に行くので会えないと誠が言うと、純も都合が悪いので問題ないと答えます。

そして唐突に、
「奥さんと僕が溺れていたらどっちを助ける?」と質問し、答えをはぐらかされると
「彼女つくった」と報告します。
おめでとうと言いながらも誠は嫉妬しているようです。

紗枝の希望で、純の家でテスト勉強することになった日。
母子家庭の純の家は、夜までふたりきりです。
ふたりはキスをし、純のベッドで一線を越えようとします。
純はこの日のために、エロ動画を検索して勉強していましたが、なかなか思うように身体は反応してくれません。

どうにか自らを奮い立たせてゴムの封を切りますが、紗枝が「純」と名前を呼んだことで誠との逢瀬を思い出してしまい萎えてしまいます。
気まずい空気で服を着るふたり。

後日、純は亮平と小野につかまり一緒に下校します。
紗枝とどこまで進んだか興味津々の亮平と、憮然とした表情の小野。
純は最後までできなかったと白状し、それを聞いた小野は去っていきます。
亮平は、小野が紗枝のことを心配している、純が好きでもないのにつき合って紗枝を傷つけるなら許さないと言っていたと話します。
当の亮平は、「今宮狙ってるから」と明るく笑います。


Wデートで温泉施設にやってきた純たち。
風呂の中で鉢合わせした誠は、驚きながらも思いがけず会えた喜びに身体をすり寄せてきますが、隼人がやってきたため出ていってしまいます。
入浴後、浴衣に着替えた紗枝と純はふたりでデートを楽しみます。
そんな幸せな時間を壊したのは、Mr.ファーレンハイトからの自殺をほのめかすメッセージでした。純は自分の言葉が彼を追いつめてしまったとうろたえ、紗枝の前から立ち去ってしまいます。

混乱している純を先に見つけたのは誠でした。
なだめて外に連れ出すと、人目もはばからず誠は純にキスをします。
そのふたりの口許に、紗枝はさっき取った水ヨーヨーを投げつけました。
「そのひとは誰!?」怒りをぶつける紗枝に純は冷たく言います。
「別にいいじゃん。好きなんでしょ?ホモ」

その後、誠は家族と帰り、紗枝は奈緒たちになぐさめられています。
純は街なかのベンチに何時間もひとりで座っていました。

翌日の放課後。純と紗枝は美術室の奥の部屋に入りふたりきりで話をします。
純は自分がホモであると告白し、あのひとは彼氏だと説明します。
紗枝は不倫だということを確認し、現実のゲイは世間体のために女とつき合うのかと問いただします。

純は、自分はホモだが、結婚して子どもがほしい、孫に囲まれて死ぬ幸せな人生を送りたい、三浦さんとならつき合えるんじゃないかと思った、と話し、でもばくはやっぱりホモだった、と謝ります。
紗枝は、安藤くんを好きになってしまった私はどうしたらいいの?と取り乱します。

その会話を、部屋の外で小野が聞いていました。ふたりの様子がおかしいと後をつけてきていたのです。
その足でまっすぐ体育館に向かった小野は、大きな声で亮平に
「おまえ、知ってたのかよ!安藤がホモだって」と叫ぶのでした。

翌日。
純が登校すると、ウワサは学校中に広まっていました。
よそよそしいクラスメイト、ひどい言葉を投げかける小野。
亮平だけは変わらず接してきましたが、なぜか今朝は股間を触りません。
いたたまれなくなって教室を飛び出した純は、階段ですれ違った紗枝に「最低だ!どけよ!」と吐き捨て出ていきます。

公園のベンチに純が座っていると、亮平がやってきます。
ここは幼い彼らが初めて出会った公園でした。
泣いていた当時の純に最初に声をかけたのが亮平です。
明るくなぐさめた亮平は言いました。
「じゃあ、一生ともだちな!」

亮平の説得で学校に戻った純でしたが、折悪しく次は体育でした。
着替え中の教室に入るとすかさず小野が
「出てけよ!」と言い放ちます。
そんな変態と一緒じゃみんな着替えられない、と。
亮平は純をかばって小野に言い返しますが、純は「もういい」と言い、窓に近寄るとそのままそこから飛び降りてしまいました。


一命を取りとめた純の病室に母(山口紗弥加)が入ってきます。
自分も高校のころ、同性の先輩が好きで…という話を始めた母に、純は怒りをあらわにします。
「気の迷いだと?」それと同じだというのか?
今までどれだけ悩んできたと思っているんだ!
と初めて本心を吐露し震える我が子を、母はオロオロしながら泣いて抱きしめるのでした。

次の日、亮平と紗枝が見舞いにやってきました。あのあと、全クラスで話し合いが行われたと紗枝は報告します。
みんなゲイに好意的で、安藤くんを悪く言う人なんていなかったよ、と言いながらも、
「どこか他人事なんだよね、みんな」と紗枝。
もうひとり、小野もそう感じていたようで、きれいごとを話すクラスメイトに一石を投じていたと言います。

病院の外にはその小野が亮平を待っていて、純の様子を心配していました。
そして、
「あいつがゲイだからむかついたんじゃねーよ」と言うと、わかってると亮平は答えます。
病室では紗枝が純に謝っていました。
「死にたい位悩んでたのに、知らずにきずつけてた」と。

その日から紗枝は、自分をもっと知ってほしいと大量のBL本を病室に持ってきました。
純は何冊もそれを読み、「ホモ多すぎ」と感想を伝えるのでした。

以前描いていた絵が入選し、終業式に表彰されることになった紗枝。
その日だけは学校に来てほしいと純に頼みます。純は大阪に転校するかもしれないと話し、どうせ引っ越すなら(ホモしかいないと紗枝が言っていた)BL星がいいなと言うと「私も!」と紗枝が笑います。

終業式当日。
遅れてやってきた純は、最後列で紗枝の姿を見ています。
すると突然紗枝は校長先生のマイクを奪い、自らの過去を語りだしました。
やめさせようとする先生たちを制止するため飛び出したのは亮平です。
「大事な話をしようとしてるんだ!」生徒たちの応援を受け、紗枝はBL遍歴から純とのことを話し始めます。


純の苦しみ、自分の思い、いろいろなことがあって今こうなっていること。
そして、彼はわたしたちを守るために壁を作っている、と。
「でも、私は彼という人が好きなんです」
すると小野が
「いつまでここにいるんだよ!」と純に言ってきました。
「うるせーよ」と立ち上がると、純はステージへ上がり、台の下に座り込んでしまった紗枝を抱きしめます。
「ありがとう」と。

紗枝や亮平が職員室に呼ばれ、ひとり廊下で待っていた純に3年生の男子が話しかけてきました。
以前純のことをからかった彼は純にあやまり、自分も同じなのだとカムアウトしました。
すぐ亮平と小野がやってきたので、純は男3人で学校をあとにします。
亮平は、純の無事を知って小野が泣いている動画を見せ、小野を茶化して怒らせるのでした。

引越し前のある日、純は昼間の公園で誠と待ち合わせをしました。
久しぶりに会えてうれしそうな誠に「別れよう」と純は言います。
温泉でキスしたとき、家族に知られても構わないと思った、と誠は寂しそうに話し、でも
「溺れていたら、妻を助けるよ」と別れ際に答えました。

純はMr.ファーレンハイトとの約束を果たすべく、彼の実家に向かっていました。
墓にCDを供えてほしい。それが彼の願いでした。紗枝とともに電車に乗って海の近くの駅に下り立つ純。
紗枝はここで待つと言って純を送り出します。

実家に到着すると、母親らしき女性が2階に案内してくれました。
部屋に入ると、壁には学生服がかかり、遺影の中の彼はあどけない顔をした少年でした。
(中学生?)困惑した純は、SNSのアイコンを母親に見せました。
それは彼のいとこで、彼が思いを寄せていた人物でした。
その人に告白した彼は、両親に病院に連れていかれたそうです。
「バカヤロウ…」と嘆く純。

帰りの駅のホームで、紗枝は純に別れを切り出します。
遠距離なんて無理、と笑い、これで自分から振ったことになると安堵しているようでした。
そしてふたりはMr.ファーレンハイトに思いを馳せます。
どうしてぼくらみたいな存在が生まれるんだろう?
という彼の宿題をずっと考えていた純に、紗枝がひとつの答えを提示します。

「神様は腐女子なんじゃない?」と。
バランスが悪いと純が言うと、
「じゃあ、腐女子の女の神様と、百合好きな男の神様のペアなんだ」と紗枝。
BL星に行くときは自分も行くから言ってね、と笑う紗枝に純はこう答えます。
「もうしばらく地球にいるよ」



キャスト

安藤純:神尾楓珠

三浦紗枝:山田杏奈

高岡亮平:前田旺志郎

小野雄介:三浦獠太

今宮くるみ:池田朱那

近藤隼人:渡辺大知

佐倉奈緒:三浦透子

Mr. ファーレンハイト:磯村勇斗

安藤みづき:山口紗弥加

佐々木誠:今井翼


スタッフ
【原作】
浅原ナオト  
『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』(角川文庫)

【監督・脚本】
草野翔吾