「遺骨からダイヤモンドができるなんて、にわかに信じられない!」

そう仰る方は少なくありません。百聞は一見にしかず、まずは合成ダイヤモンドの動画をご覧いただくのが一番でしょう。

今回は、そんな疑問にお答えしながら、遺骨ダイヤモンドの真実に迫ります。

  • 安物の天然ダイヤモンドを高く売っているだけじゃないの?

  • 遺骨から炭素を抽出するって、なんだか怪しい!

  • 他人の遺骨と混ざったりしないの?

  • 余った遺骨はどうなるの?


 

遺骨ダイヤモンドとは?その正体は「合成ダイヤモンド」!

 

夫が「遺骨ダイヤモンドにするなら、ブルー以外はイヤだ!」と、半分譲歩してきたのは、きっと動画を見て「本当にできるんだ!」と納得してくれたからでしょう。


 

天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンド

 

まずは、ダイヤモンドの種類について簡単に整理しましょう。

  • 天然ダイヤモンド: 地球内部で数百万年かけて高温・高圧にさらされた炭素がダイヤモンドとなり、地殻変動により一気に地表に押し上げられ、採掘されたダイヤモンドです。

  • 合成ダイヤモンド(人工ダイヤモンド): 圧力発生装置などを用いて人工的に地下150kmの環境を再現し、原料である黒鉛を強制的にダイヤモンドに合成させたものです。

  • 遺骨ダイヤモンド: 合成ダイヤモンドの材料となる炭素を故人の遺骨から採取して作られたダイヤモンドです。


 

「合成ダイヤモンド」が正しい呼び名

 

「合成ダイヤモンド」と「人工ダイヤモンド」、どちらが正しい呼び名なのでしょうか?

  • 合成ダイヤモンド(synthetic diamond)

  • 人工ダイヤモンド(man-made diamond)

  • ラボグロウダイヤモンド(lab-grown diamond)

これらはすべて同じものを指しています。しかし、一番正しい呼び方は「合成ダイヤモンド」です。なぜなら、人工的に作られた宝石の中で「天然にも存在する石」を人工的に作ったものである場合、「合成石」と呼ぶ決まりがあるからです。


 

合成ダイヤモンドの驚くべき特性

 

合成ダイヤモンドは、天然のダイヤモンドと結晶構造物理的特性が全く同じです。それどころか、

  • 硬度

  • 熱伝導性

  • 電気伝導性

  • 電子移動度

の点で、天然製品よりも優れた特性を持つものもあります。

このため、品質が安定した特性を活かし、合成ダイヤモンドは、

  • 研磨材

  • 切削工具

  • ヒートシンク(放熱板)

などの工業用途として利用が進んでいます。

その上、アフリカで問題となっている紛争ダイヤモンド(戦争の資金源)や児童就労といった倫理的な観点からも、合成ダイヤモンド(人工ダイヤモンド)は見直されています。技術革新により、これまで難しいとされていた大粒の製造も可能となってきたことから、今では宝飾マーケットでも普通に見かけるようになっています。


 

合成ダイヤモンドの作り方

 

主流となっている合成ダイヤモンドの作り方は以下のとおりです。

 

高温高圧(HPHT)法

 

**高温高圧法(High Pressure and High Temperature, HPHT)**は、天然ダイヤモンドが地球内部で生成される環境を、高圧プレスを使って再現して合成する方法です。材料(炭素)が納められた反応セルを装置にセットし、5GPa(ギガパスカル)以上の圧力と高い温度をかけて合成されます。

高圧プレスにはその装置の機構から、

  • ベルトプレス型

  • トロイダル型

  • キュービックプレス型

というタイプがあります。近年では、キュービックプレス(四方+上下の6方向油圧プレス)を用いて合成されることが多くなっています。**遺骨ダイヤモンドも、このHPHT法が採用されています。**超硬材料を使った消耗部品点数が少ないことや、1回あたりの生産時間・生産量・精度が最も効果的であるためです。

 

化学気相蒸着(CVD)法

 

**化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition, CVD)**は、天然のダイヤモンドが生成する過程とは全く違う合成法です。炭素はメタンガスから供給され、蒸気となった炭素が結晶に吸着されます。

  • 熱フィラメントCVD法: メタンガスなどの炭素を主成分とするガスを2000~2500℃に加熱したフィラメントで励起し、種結晶となるダイヤモンドの結晶板に蒸着させる合成方法です。

  • プラズマCVD法: マイクロ波や直流放電などにより、メタンガスなどの炭素を主成分とするガス中にプラズマ領域を生成し、基盤に炭素原子を堆積させる方法です。

 

爆発衝撃圧縮法

 

これは、個人的には製造している現場を知りません。爆薬の爆発によって、瞬間的に高圧・高温を発生させて合成する方法で、一次粒子を持つ多結晶構造になります。


 

遺骨ダイヤモンドの製造工程

 

遺骨ダイヤモンドで採用されている高温高圧法によるダイヤモンドの製造イメージを記します。

  1. 原料(黒鉛、HBN、溶媒金属)を詰めてカプセルを作る

  2. 高温、高圧プレスでカプセルを焼き、ダイヤ・CBNを合成する

  3. 合成物からダイヤ・CBNを抽出するために合成物を破砕する

  4. 酸を用い触媒、非合成物を溶かしダイヤ・CBNのみを抽出する

  5. 中和剤、水を使用し砥粒の酸を除去する

  6. 砥粒をふるいによりサイズ分けする

  7. 砥粒を形状選別機で分ける

  8. 圧壊機、破砕機(フライアビリティーテスター)で強度測定し、品質検査する

 

遺骨ダイヤモンドの製造工程の追加点

 

遺骨ダイヤモンドの場合は、上記の工程に、炭素の収集・濃縮作業が追加されます。また、工業用のような砥粒ではなく、さらに大きなダイヤモンド(0.1ct〜2.0ct)にするため、ふるいにかける作業はありません。単結晶の大きな粒を作成するために、ダイヤモンド結晶の種結晶を用い、通常の数倍の時間をかけてダイヤモンド結晶を成長させていきます


 

遺骨ダイヤモンド関連動画でイメージをつかもう

 

百聞は一見にしかず!こちらが、遺骨ダイヤモンドの関連動画です。

この他にも、特におすすめしたいのは以下の2本です。

  • 遺骨ダイヤモンドの作り方動画

    つくりかた動画

  • 遺骨ダイヤのイメージビデオ

    このイメージビデオも素敵です

(※動画リンクはイメージです。実際にご紹介される際は適切な動画リンクを掲載してください。)


 

まとめ|夫が「ブルー以外はイヤだ」と半分譲歩してきた理由

 

今回の解説と動画で、以下の点がご理解いただけたのではないでしょうか。

  • 遺骨ダイヤモンドは、基本的に合成ダイヤモンドの製造方法でつくられています。ですので、「安物の天然ダイヤモンドを高く売っているだけ」ということはありませんでした。

  • 遺骨から炭素を抽出することも可能です。

  • 他人の遺骨と混ざらないように、保管・移動の際には丁寧にトラッキング(追跡管理)されています

  • 動画からも、余った遺骨はないこともわかりました。

夫が「遺骨ダイヤモンドにするならブルー以外はイヤだ」と半分譲歩してきたのは、きっとこれらの情報を目にし、疑念が晴れたからでしょう。ブルーのダイヤモンドは、ご遺骨に含まれるホウ素の量によって自然に発色することがあり、非常に神秘的で美しいものです。

愛する故人を、美しく輝くダイヤモンドとして永遠に手元に。それは、決して非現実的なことではありません。